←ズイショ→

ズイショさんのブログはズイショさんの人生のズイショで更新されます!

悪い芝居vol.30めもりある 『逃避奇行クラブ』感想文

あのー、僕が中学3年生の冬の話なんですけど。

僕は生まれも育ちも北海道で、みなさんご存知ですかね、雪ってあるじゃないですか、四季折々のやつがある日本に住んでる人が読んでる前提でブログを書くのはご時世的にコンプラ的にアレなんで一応聞くんですけど、ご存知ですか?なんか結晶の冷たいやつです、雪。アレがめっちゃ降るんですね、僕の地元の北海道って。一夜のうちに高さ1mくらい積もったりするんです。その日、雪が降っているエリア、そのすべての面に、道路にも庭にも屋根の上にも、一律に1mの雪が積もるんです、一夜にして。災害じゃん、そうなんです、災害なんです。

で、そうなると、雪がそのままだと翌朝には交通が完全に麻痺しちゃうので、夜通し除雪車が走ります。翌日も道路を車が走れるように、車道の雪を歩道の脇に蹴散らして騒音を轟かせて近隣住民の安眠を妨げながら除雪車が朝まで闊歩する。うるさいけど災害なんだから仕方がない、むしろ夜中に頑張ってくれて運転してくれてる人ありがとう。

これは僕の中学3年生の冬の話なんですけど、20年以上も前の話なのでちょっとアレな部分があっても大目に見てやってください。僕が当時住んでいた一軒家の向かいには大きな空き地が、土管こそないもののそれこそドラえもんのび太としずかちゃんとジャイアンスネ夫と時々出来杉くんが集まるような広々とした空き地があって、空き地は読んで字の如く空き地で何の役割もない空き地なので使い道さえあったらどうとでも使われます。冬になって雪が降るようになると、要らない雪を、こう、ブルドーザーとかがガガッと空き地に積み上げていって、もう山としか言いようがありません。冬になると家の横の空き地に、そり遊びができるくらいの雪山が出来上がるんですね。実際に小学生の頃は毎年、そこでそり遊びをしていた。ここまで読んでる人がどれくらい「どういうこと?」となってるのかは置いておきます。雪国にはとにかくたくさん雪が降るんです、わかって!

で、中学3年生の時に、その時に仲良かった友達たちと話してて思いついたんです。あのでかい雪山を掘って、イカついカマクラを作れるんじゃないかって。なんでそんなこと言い出したのかはわかりません。中学生最後の思い出みたいなことは当時誰ひとり言ってなかったけど、そういうところはあったのかもしれません。僕が仲良くしてたグループはみんなバラバラな奴らで、でもなんかいつも一緒にいて、趣味趣向がバラバラなら学力もバラバラなもんで、みんな違う高校に行くことになるのはわかりきってたので、やっぱり最後にみんなでなんか一緒にやりたいってのはあったかもしれない。めっちゃすげえカマクラを作ろうと決めて、なんの役割もない空き地にどかどかと積み上げられた、誰にも降ってくれてありがとうと思われてないただ迷惑がられて要らん土地に集積された雪山を、受験勉強の合間を縫って掘って縫って掘って掘りまくった。途中で受験勉強とかあるからって抜けたやつもいたけれど、みんなで夜とか集合して掘りまくった。僕は地元で一番の進学校の受験を予定していて、その後無事に合格したあと360人中常に300番以下くらいの成績に落ちこぼれることになるんだけど、でも高校受験時点では一番頑張ってたんじゃない?って感じだったので、受験勉強を理由に雪掘りから抜けるやつにはちょっとむかついてたけど、とりあえず掘りたいやつらで掘りまくった。掘っと掘ったー掘ってすと。

年を超す頃には中学生が這って進めるくらいの3mくらいの通路の先に4畳半くらいの住居スペースがあるくらいに掘って、そこに誰かの家に余ってるコタツをわざわざ持ち込んでるんだから、相当掘ってんな!コタツが入るって、相当雪山掘ってるな!そこは僕たちの秘密基地になって、みんな色々持ち込んで、だべったり各々受験勉強したり漫画読んだりミカン食ったり、秘密基地としか言い様がないスペースになったのであった。もちろん何もないと暗いので、照明器具とかも色々頑張って持ち込んでた。今だったらスマホの懐中電灯みたいな機能とかめちゃくちゃ便利だけど、20年前って考えると本当にどういう執念でやってたんだろう、もう思い出せない。

だけど、秘密基地って言っても、住宅街のど真ん中の雪山にひっそり作ったカマクラの入り口に鍵をかけることなんかできなくて、というかそれは秘密基地ではなくて住宅街のど真ん中の雪山になんか怪しい穴があるだけの状態なので、なんか誰もいない時にモノがなくなるんだよな。家から持ってきて家に持って帰らないのが悪いって言われりゃそりゃそうなんだが、なんか無くなるんだよ。特に誰かが持ち込んだエロ本がよく無くなる。

間もなくして、俺たちは町内会のおじさんおばさん及び親に怒られることになって、俺らがいないあいだに小学生とかがカマクラに忍び込んでいる、なんの安全安心設計もない馬鹿な中学生が作ったカマクラに小学生が入って、もしカマクラが崩れて子どもたちが生き埋めになったらどうする!?とバチクソに怒られて、今でも確かにその怒られは真っ当で、たしかに小学生とかがそんな死に方をしてしまったら後味が悪いどころか一生引きずるだろうし、俺たちが怒られるのは仕方がない!俺たちは悪いことをしたのかもしれない!けど、じゃあ俺たちも危ないこともしたけど、「お前たちも危なかったんだよ」とかないの?小学生のためにだけ怒ってて、俺たちが悪いの?大人なら俺たちのことも「そんな危ないことしてお前たちに死なれたら私は悲しいよ」みたいなそういうのないの?あと、エロ本盗まれたし。俺たちはエロ本盗まれた被害者なんだよ、エロ本買っちゃダメな年齢だけど、売ったのも大人じゃん!あ、こういうの今だとよくないのかな、拾ったんだよ!当時、橋の下に捨てられてたのを大事に集めてた俺たちのエロ本を、俺たちは盗まれた被害者なのに!いや被害者じゃなくていいけど、子供のつもりでいたよ。

自分が大人なのか子供なのかあやふやなまま、俺たちは自分らで山のふもとの横からせこせこ掘って作り上げたカマクラを潰すために、今度はカマクラにたどり着くために雪山の上から掘るという重労働を強いられ、山のてっぺんから下に掘り続けてやがて辿り着いた秘密基地を破壊して、そして中学校を卒業した。なんの意味もない空き地にできた、誰にも必要とされていない雪が集まってできた雪山、そこにまだ何者でもない中学生が秘密基地を作って、大人たちに怒られて自分たちの手で壊した。そしてそれぞれの高校に進学してバラバラになって、自分が大人なのか子供なのかあやふやなまま、大人になって、その成れの果てが今の俺!未だに大人になれてないし、今一番の悩み事は確定申告めんどくさい。

そしてびっくりするんだけど、これ掲題のとおり、悪い芝居vol.30めもりある 『逃避奇行クラブ』感想文で、ここまで2700字書いてきたの、全部その序文なんですよね。なんで!?なんでお前はいつもそうなっちゃうんだよ!?まともな感想文も書けないまま大人になってしまいました。

 

waruishibai.jp

 

ひとつ初めに言っておきたいのは、この『逃避奇行クラブ』という素晴らしい演劇を実際に見た人は、たぶんこの序文を読んで、なんで突然この馬鹿はこんな話をしているのかはわかってくれると思っています。だから、何言ってるんだこいつと思った人は、『逃避奇行クラブ』を見よう。配信やってます。2023年3月5日がタイムリミットらしいです。序文を読んで、何か懐かしくなった人も、何かムカついた人も、ここまで全部読んじゃった人は、『逃避奇行クラブ』観ちゃった方が絶対いいと思います。絶対に面白いし、絶対にあなたの思い出になります。

おいちょっと待て、こいつ2700字くらい喋ってから「初めに言っておきたいのは」言うたぞなんやこいつ死ね!こいつ殺す?どうする、犬?

 

犬「わお~~~~~~ん!」

 

高く鳴いたな、高く鳴かれると解釈次第やな。うん、殺す方向かどうかは、ゆっくり考えよ。2700字わけわからん話をしてから作品紹介するやつ殺したいけど、そこは解釈次第やから、犬が「く~~~ん」って擁護しないなら殺す案も含めて検討するしかないから、みんな自分の目で『逃避奇行クラブ』を見て、ズイショさんの感想ブログが殺したいかどうか検討してね!!

 

カマクラを壊して高校に進学して、それからなんやんやあって、僕は大学進学をきっかけに関西に身を移すことになりました。ほんで、「演劇」というものに傾倒していくわけですが、大学を卒業して「傾倒」がきつい頃に出会ったのが『悪い芝居』でした。なんか、そこらへんを喋ってるやつは、僕が最初の観劇をしてから14年くらいごしで悪い芝居立ち上げた山崎彬さんと対談させていただいたやつを最後にリンク貼っておくんで、気が向いたら読んでください。

 

あ、これ感想文か、感想言わなあかんのけ、『逃避奇行クラブ』は、えーと、「逃げる」をテーマにした芝居で、どこに逃げるのかがテーマの芝居で、「逃げるのってダサいよね」じゃなくて、どこかに逃げ続けようぜって芝居で。だって、世の中って向き合うに値するものが少なすぎる、なんかみんなすぐ怒るし、あの時の町内会のおっさん、グーできてたし。逃げたくてカマクラを作った僕が、結局それも壊せよって言われて、だからじゃないけど雪国からも逃げて大学行って逃げて、そっからもどこからかどこからかへ逃げ続けて、対談を読んでもらえればと思いますが「悪い芝居」も僕のひとつの逃げ先なのかもしれないし、わけわからん文章書いてるこのブログも逃げ先なのかもしれないし、でもまだまだ逃げきれてないよ!逃げきれてないよ!って思うけど、もしかしたら俺にとっては逃げきれてない最中だったとしても、俺が『悪い芝居』を観て「逃げ先が見つかった」と思ったように、俺が書いてるブログも全然逃げきれてない逃げてる真っ最中にすぎないけどそれを読んで誰かから「逃げればいいんだ」って思ってもらえたらいいかもしれないし、僕にとっての『悪い芝居』は、本当に頼もしい一人じゃなさで、ずっとのいつもどおり大好きなんです。

 

あのカマクラ、なんで作ったんだっけな。理由は思い出せない。けど、何をしたって、何歳に、どこにいたって、頑張って居場所を作ろうとしたら、あのカマクラを思い返すしかないのかもしれない。そんな悲観的な話ではなくて、みんないつも考えていて、みんないっつも誰かを思い出して一段落して風呂に入るような、そんな感覚は間違ってないってことをすごくすごく頼もしくさせてくれる、そんなお芝居です。

 

心細い人も一人で頑張ってる人も、みんな観るのが良いです。過去のこととか未来のこととか、現実のこととか、いろんなことを考える人たちはみんなみんな絶対観たほうがいいと思う。僕のブログなんかよりよっぽど雄弁で、すごく頼もしくて、俺も頑張らなきゃなって思わせるラブリーなお芝居でした。

 

waruishibai.jp

3月5日までらしいです。

 

あと、悪い芝居・主宰の山崎彬さんとなぜか対談させてもらった記事へのリンク。

waruishibai.jp

以上です。