小学1年生の息子がいるんだが、たまに二人で将棋を遊んでいる。息子が将棋を大好きで大好きで仕方ないという程ではないんだけど、電柱にしがみついて歯医者に行くのを拒むほど将棋が嫌いではないらしいので、大阪将棋会館に連れて行ったりとか、それに備えて家で父親の俺と毎日一局指したりとかの趣味の範疇だ。
俺自身も将棋をそんなちゃんと指せるほど何もしてないのだが藤森哲也の将棋放浪記のYouTubeをここ数年見るようになったり藤井聡太ブームでタイトル戦の中継を仕事中掛け流しにしたりとかで、昔よりはなんとなく分かるようになって少しは指せるようになったかな程度。将棋ウォーズに手を出したい気もするが、始めたら時間溶けるだろうから足踏みしている。ともあれ、将棋の面白さや奥深さに触れられる機会が増える一方の現状には感謝するばかりだ。
息子に将棋を指して欲しいなーと思って付き合わせてるのは、ひとえに負けるとクソムカつくことを覚えて欲しいからだ。俺は、基本的に世の中全部ゲームと思ってて勝った負けたを意識する人間寄りの自覚はあるのだが、別に息子にそうなって欲しいとも思わない。そして息子は俺とは違う軸で人生をやっている。俺の金玉から出撃したひとつだねの結果とは到底思えないほど人に優しく思いやり深い人間だ。だからこそ、わざと負けるのがむしろ失礼な勝ち負けの世界も知っておいて欲しいなみたいなことを考えている。誰かの顔色をうかがってわざと負けたりみたいなことを覚えるのはサラリーマンになって上司と一緒にゴルフに行くようになってからでも全然間に合う。
今はそんなこと考えずに、負けたら歯を食いしばって嗚咽したり、嗚咽したいのを我慢して涼しい顔で負けましたと頭を下げたり、来週は絶対負けねえぞと鍛錬に励んだり、そういうことを今のうちにやっておいてほしいなーと思って、息子と将棋を指している。
優しい人間であることは素晴らしいけど、優しいだけで強くないと何の意味もないぞと思うし、強いだけで優しくないこともまた何の意味もないぞと思う。俺は、強くなるために優しさを手放した時期が人生にあったので、人に憎まれながらでも成果を出すことに専念した時期があったので、息子にはそうなって欲しくないなと思う。だから、将棋を指しておきたいなーと思う。憎まれながらのし上がるとかじゃなくて、対局が終わればノーサイドの世界で、勝ち負けだけにこだわる感覚を養ってほしいなーと思ってるんだろうな。
以上に書いた通りの俺の「そういうことを学んで成長してほしいなー」に対して将棋はめちゃめちゃ最適だなと思っていて、だからまあなんとなく息子と将棋を指すのも継続してやっているんだけど、いかんせん俺も素人なので手の抜き方も導き方もあんまりよくわかってなくて困ってる。
俺がそもそもあんまわかってないけど「とりあえず一つ型を覚えて極めろ」と言って、息子には四間飛車美濃囲いを授けた。そこから俺が棒銀とかパックマンとか鬼殺しとかを仕掛けて負かして泣かして対処法を伝授して勝てるようにして、みたいな感じでやってるんだけど、今日は俺が雁木に組んで8二に玉を置いた息子に対して5五角からこびん？を空けるのを狙って歩を進めてみたら対応できなくてまた息子が泣いていた。でも俺、これに対して5五地点を早めに制圧するのが正しいのか、美濃囲い崩して金銀を分厚くするのか、どっちが正解かあんまわかんねーんだよなー！初心者ハメられる手はなんとなく知ってるけど俺が受けられるかっていうとあんま自身ねーなー！みたいな。
よく、子供に勉強させるためには親が勉強してる背中を見せることだよみたいなん言われるけど、それはそうなのかもなー。俺にも足りないことは多すぎるけど、それは認めるけどじゃあ今から俺将棋やるの？マジで！？感もありつつ。
別にガキをいじめて気持ちよくなりたいみたいな感じはなくて、ただ、勝ち負けの世界を知って欲しい。勝ち負けをコントロールできる側にさえなれば優しい心を根っから持ってる奴は自分より弱いやつを頼もしい仲間にできるし必死にやってなんとか勝てるライバルとも友達になれるかもしれないし、とにかくうまいこといくはずだから将棋はそれにぴったり面白いと思うんだけど、いかんせん俺が将棋のことをよくわかってない。
時代は巡るし世界は変わる。俺は、頭の使い方を喋りに全振りして、人の悪口を相手に言い返されないように上手に言うことで自分の価値を高めてきたところは過去にあった。今はそんな時代じゃないから、もしそこに頭の良さがあるなら人に優しく使う方が大したもんで、俺の過去の成功体験なんて未来に伝達する必要がないのだ。俺の息子に限らない話で、俺より若けぇ次の世代にはもっと人に優しく、そいつの才能を他人のために使える人間になってほしいなと思ってる。そいつらに俺が教えられることってなんだろうね。将棋？将棋〜！？
いや将棋じゃなくてもいいんだけど、ただ全力で戦って勝ち負けついたらノーサイドの遊びは、みんなたくさんやってほしいし俺もやりたいなーと思う。
以上です。
