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趣味を聞かれたらありませんと答える

趣味を聞かれたらありませんと答えることにしている。

と、それだけ聞くと愛想のないやつだなと思われるかもしれないが実際の僕を知ってる人はご存知の通りかなりお喋りでかつ楽しく話せる話題の守備範囲は広い。単純に浅く広く知識を仕入れておくのが好きで、パネルクイズとかにチャレンジしても結構やれる方だと思う。漫画も読むしアニメも見るしテレビドラマも見るし映画はなかなか映画館に足を運ぶことなくなったが配信に来たら見ようかなという映画は常に頭の中に置いてある。スポーツはやる方はからっきしだが一通りのスポーツに関しては基本的なルールや各ポジションの役割と求められる能略、どのような戦術の選択肢があるか、どのようなプレイヤーが優れた選手であると定義されているか評価されやすいかなどは頭に入ってるので相手が好きで話題にしてきた時も楽しく対応できる(ただ選手の名前を覚えるのとかは苦手だな、普通に普段追いかけてないので)。10代の頃ボーイスカウトに所属していたので今は全くやりたくないがキャンプや登山などの話にもついていけるし、クイズに備えるかのように知識を蓄えるのが好きなので旅行には自分は行かないが旅行帰りの人の土産話にも国内国外問わず楽しく付き合える。他にもあげればキリがないので切り上げるが、まあ身体を動かすのは大嫌いなので極めてインドア派ではあるが、簡単に言うと割とオールジャンルなのである。そしてオールジャンルをなぜ目指すかのモチベーションの軸は「誰とでも楽しく話せるようにしておきたいから」である気はする。もちろん知らんことを知るのはシンプルに楽しいというのもあるが。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というけれど、おしゃべりの文脈に置き換えれば(敵じゃないんだけど)自分の聞き上手で相手の話に合わせるのが得意で好きという強みを強みと認識したうえで、相手が何が好きで何に興味関心を持っているかを引き出してその話についていけるようにしておけば誰とでも初対面で楽しく話せるという寸法である。また「将を射んと欲すればまず馬を射よ」という言葉があるように、特にビジネスシーンなどでも本題の交渉を始める前にアイスブレイクで相手の趣味の理解者であることをアピールできればなんだかんだ人間はその相手のことを好きになるので私が極めて利己的な理念に基づくお喋り好きである可能性はある。昔のタクシー運転手や営業が接客スキルの一環として、プロ野球ペナントレースの順位を教養として常に把握してるやつの拡張版なのかもしれない。そう考えた時に拡張版の楽しいところとしては、全くの未知の話題に出くわした時でも自分が既に持っている既知の教養との類似点を探して組み合わせることで割とだいたいなんとかなることである。相手の話題に常についていくために必要なのは物知りであることではない、物分かりが良く理解が早いことである。何より自分の詳しいことを知らん奴にひけらかすのが好きなタイプの人間は飲み込みが早く「なるほどなるほど!」と言ってくれる人間を好む傾向がある。人間は自分の好きなものを理解されると嬉しい。

 

さて、話は掲題の「趣味を聞かれたらありませんと答える」に戻るがそれは何故か。ここまで書いてきた内容からわかるように基本的に僕は対話においてめちゃめちゃレシーバータイプのようだ。あなたがどんな話題を振ってこようと解像度の高い相槌を打つことに全力を出せるし、あなたがそのテーマで悩みがあって何かコメントを求めるのであれば別角度からのアプローチで見解を示すための準備はある程度してるはずなのでどうぞご遠慮なく。逆にいうと、あなたがついてこれるかもわからないのにわざわざあなたに今どうしても話したいことはないのでそちらからどうぞ、と思う。なぜ趣味がないと答えるかの一つの理由として、テーマ選択を相手に委ねる「手渡し」をした方が単純に私は組みしやすいというプレイスタイルの問題に過ぎないとは言えるだろう。

二つ目の理由としては何が趣味だと答えるにしても、シンプルに私はガチ勢ではないし俺より本当にその趣味が好きな人はいくらでもいるしおいそれとこれが私の趣味だと公言するのは烏滸がましいというのもある。さすがに旅行は行ってないので旅行が趣味ですとは言わないが、もしかすると「日本国内と海外を問わずの各地域の名産品や文化、観光名所などを調べるのが好きです」くらいは言ってもいいかもしれない。ただそうすると色んなやつが湧いてくることが想定される。もし「こんなことも知らないようでは好きなうちに入らないよ」と言われたら「じゃあ好きじゃないでいいです」と思うし、「それなら世界遺産検定とか取ってみれば」と言われたら「めんどくさいから嫌です」と思うし、「やっぱ現地に足を運んで実際の空気を感じないとわからないことがいっぱいあるよ」と言われたら「そこまでしたくないです」と思うし、いずれも漏れなく「大きなお世話だ」と頭を引っ叩いてやりたくなること間違いなしです。でもこっちが「趣味です」と言ってしまえばそう言いたくなるのも仕方なく、こちらにも非があると思うのでそれはやりたくないということです。なので、私に趣味はありません。

三つ目の理由、なんだかんだこれが理由として一番大きいんですが、世の中の多くの人はレシーバーとしての能力がそんなに高くない割に毛繕い的コミュニケーションを行う手段として趣味を聞きたがるタイプがたくさんいるということです。昭和のお見合いじゃねえんだからさあといつも辟易するが「趣味は何?」と聞いてくる人は現代でも思いのほか多い。自分が「趣味はないです」と答えるよう徹底するまでには当然それなりに紆余曲折あって、「漫画好きですね」とか「映画好きですね」とか「お笑い好きですね」とか色々相手も好きそうなものにを狙ってテキトーに答えるようにしてた時期もあるのだが、全員とは言わないがかなり多くの人が会話の糸口をそこにしか見出さなくなるってパターンがままある。毎回「最近面白い漫画ある?」「最近映画何観たの?」「今年のM-1の注目コンビは?」とかそれを聞いときゃ間が持つと思ってる人間は世の中には思ってた以上に驚くほど多く、それでも向こうに漫画なり映画なりお笑いなりに多少の興味なり最近のマイブームなりあればまだマシなんだが「へーそうなんだ」と「私は最近特にはないかな」しか準備してないパターンが最頻出だったりする。興味ないなら聞くな馬鹿。学校の教室で小説とか読んでたら話しかけてくるものの「何読んでるん?」「面白いの?」「へー」「俺本とか読まんからすごいな」しか喋らないクラスメイトや、とりあえず「学校はどうだ?」と聞いてきて「そうか頑張れ」だけ言って終わる帰省の時にだけ会う親戚のおっさんを思い出す。興味ないなら聞くな馬鹿。

そういう人たちに変に「この人は◯◯が趣味なんだ」と学習されても空虚なやりとりが増えるだけなので趣味はありませんと答えるのが正解だ、というのが今の自分の結論なのだが、これを踏まえて毛繕いコミニュケーションを目的とするなら公言するに有利な趣味というのがいくつか思い当たる。まずゴルフ。「最近どう?回ってる?スコア100見えてきてる?」だけでお互いゴルフやってたらまあまあ盛り上がるんだろう。そして同じ理屈で近年盛り上がってるのが筋トレ。これもどれくらい上げてるからとか今は体重増やしてる時期だとか絞ってる時期だとかでテキトーに盛り上がってるのをよく見かける。この二つに共通するのはシンプルに数字で話せることだ。一日で18回ボールを穴に入れるのに何打したとか、おっさんの体重とか体脂肪率とかを報告し合って何が面白いんだろうと俺は思うんだが、数字という一番わかりやすい形でお互いのプライベートで行っている努力を一部開陳し合うだけでお互い友好の意を示せるというのは、毛繕い的コミュニケーションとしてのコスパは非常に高いし健康にもいいので言うことなしなんだろう。プロ野球でどこファンだと公言し合うのも、まず順位という数字があるのが毛繕いコミュニケーションとしてコスパがいいんだと思う。そして野球の試合は勝手に毎日行われ順位や状況は変動するので会話のタネにどんだけ使ってもマンネリ感が生まれにくい。健康には関係ないが秀れた趣味である。

 

このように、私からすると「何が面白いんだろう」と思う他人の趣味についても考察するとコミュニケーションツールとしての強みがあり、翻ると私のやり方は非常にコスパが悪いとも言えるわけだが、自分はやはり毛繕い的コミュニケーションを否定はしないにせよそれだけでは物足りなくて知的好奇心も同時に刺激されるやり方で今後もやっていきたい。もっと言えば、このような長ったらしい思索を面白がってくれる人と出会えればその人は馬が合う友達になれると思うので、その人とすれ違わずちゃんと前髪を掴んで友達になれるように、ややめんどくさいスタイルで今後も生きていく所存である。

 

以上です。