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三歳の息子がタオルでワンダホーパワーを溜められるようになった

あのー、なんだっけ、あの、子どもが見る番組。「おばあちゃんじゃないおばあちゃんといっしょ」?いるよね、実のおばあちゃんじゃないのにエレベーターとかですげえ話しかけてくるおばあちゃん。スーパーの袋下げてたら普通に「何買ったの?」って聞いてくるおばあちゃんいるじゃん。それもう実質俺の子どもへの質問じゃなくて俺への質問だから、みたいな質問投げ込んでくるおばあちゃんいるじゃん。あれってさ、「大麻です」とかって返事言ったらどうなるんだろ。スーパーの袋に水菜入ってる状態で「大麻です」って言ったらおばあちゃん「家で乾燥させるの!?」って突っ込んでくれるのかなアレ。いや、まぁいいんだけどさ、実のおばあちゃんくらいのノリで子どもに話しかけてくる知らないおばあちゃんアレなんなの?なんだっけ、そうだ、あの、Eテレの、子どもはみんな大好きな番組。全然タイトルが思い出せない、「解脱直前のおばあちゃんが一番やばいっしょ」だっけ?いや、子供連れに話しかけてくるおばあちゃんも悪気はないというか、世の中のいろんなことに、にこやかに接しようみたいなスタンスの結果の「何買ったの?」だとは思うんだよね、そこはわかるんだ。ただ、そこまで仏ほどのありがたみはまだおばあちゃんにはないからさ、おばあちゃんは仏くらいのノリで絡んできてるんだなって最近は思うんだけど、そうなると一番怖いんだよね、解脱の前の何も悟れてないのにもうちょっと仏に片足突っ込んでますけどみたいな気分のババアが一番気味が悪いよね、「あ、辞書で見たけど独善ってそういうこと・・・?」みたいなのをひしひしと感じるよね、あ、ババアって言っちゃった。ババアって言っちゃったらもうおしまいなので切り上げて本題いきますけどなんだっけ、そう。「おかあさんといっしょ」!!

ですらない!!

おかあさんといっしょはもうちょっと年齢層高めで、うちの息子みたいな三歳児くらいが好きなのは「いないいないばぁ!」の方ね。これからするのは「いないいないばぁ!」の話です。いや、すっと行けよ!原稿用紙2枚分くらいババアの話しかしてないよ。

いやね、息子が好きなんですよ、「いないいないばぁ!」が。いや、でもいきなりそんなん言われても「いないいないばぁ!」って何?って感じの人の方がきっと多いですよね。簡単に説明すると幼児向けのEテレの番組で、なんか「わんわん」っていう名前の白と緑で構成されたでかいもふもふの犬がいましてね、で、相方に7歳8歳くらいの女の子がいて。で、その子の衣装がすっごい赤いの。赤すぎるんで、もう片方の白と緑で構成された犬もたぶん君が代の「苔のむすまで」ってフレーズをモチーフにデザインされた犬なんじゃないかなと思えてくるんですけど。こんなのに受信料払いたくねーなー、つって。同性婚も選択的夫婦別姓もペイペイで民事の賠償金全部払えるようにするのも全部賛成の超リベラルの僕としては、こんな国粋主義みたいなEテレどうなの?と思わないではないんですけど、まぁそういう番組がありまして、うちの息子なんかも好きでよく見てるんですよ。

で、ここからが本題で、つまり、これより上の段落は読まなくて良かったやつなんで、みんなツイートとかでコメントする時は「最初無駄なんで四段落目から読めばいいんだけど」って一言付け加えてくれよな。

五段落目ー。全然関係ないんだけど、近所のケーキ屋が、新メニューをInstagramのストーリーで紹介するの、客を舐めすぎてて好き。なんで24時間で消える形で新メニュー紹介するねん。

でさ、息子が「いないいないばぁ!」すごい好きなんですけど、録画してるのを何回でも何回でも見るってのをここ半年くらいずーっとやってるんです。で、好きに楽しみゃいいんですけどね、割とうちの息子は黙って座ってじっくりと見てる、みたいなことがすごく多かったんですよ、「いないいないばぁ!」を。テレビの前のみんなも踊って騒ごうよみたいなコンセプトで作られてる番組のはずなんですけど、うちの息子はどうもあんまりそれをしたがらない。いや、歌にもよるんですけどね。

一番際立ってたのが掲題のワンダホーパワーのやつ。なんかテレビの前のみんなも一緒にタオルを振り回したらクソでかいバルーンの人形にどんどん空気が入って大きくなるからみんなも一緒にタオルを振り回してワンダホーパワーを一緒に集めて人形を大きくしよう!みたいなコンセプトのやつ。これ、知らない人に伝わるかな?dボタンで参加しよう的なノリの、実際にはただの録画の八百長のやつ。俺らが水曜日のダウンタウンでクロちゃんの次のミッション決めてたのと同じノリで「テレビの前のみんなもタオルを振り回してワンダホーパワーを集めてね!」ってテレビの前の子どもに言うの。いや、でもこの言い方だとさ、水曜日のダウンタウンも見てないしいないいないばぁ!も見てない人には伝わらないんじゃない?俺は一体どうすればいいの?はい、めっちゃ計算しまーす、水曜日のダウンタウンもいないいないばぁ!も見てない人は人類の何%でしょうか?ちっちっちっちっちっちっ65%でした!じゃあその残る65%にはどうすれば伝えられるのでしょうか?

えーと、徹子の部屋見てる時に徹子が突然カメラ目線になって「あなたはこれから未来を選ばなければなりません」って言ってくるみたいな感じです。

よっしゃ、OK!伝わった!100%に!伝わったよな、犬!!!!???

 

犬「わん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

よっしゃよっしゃ、よしよしよしよし、わひゃひゃひゃひゃ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、わー、犬かわい!あー、犬かわい。犬かわいいなお前は本当に生まれてきてくれてありがとう。痛い!噛むなよ!噛むのは違うぞ!そんな愛情表現は違うぞ、犬!俺はお前にそんな痛いことをするか!?しないだろ!?俺だって噛もうと思えば噛めるんだぞ!?ほら、がぶっ!!痛いだろ!?でも俺はしないだろ??それはそんな痛いほど噛むなんて愛情表現は間違ってると思ってるからなんだぞ!?わかったか、犬!!!!!!

そういうわけで話を進めますけども。

この、ワンダホーパワーのやつをね、息子が全然踊らないの。過去に何度も「一緒に踊ろうよ」って誘ったりしたんですけど、もうまじで全然踊らない。頑なに拒否する。なんだこのいけすかねえガキは、と思ってたんですけど、最近これがついに踊るようになりましてね。なんか、この、タオル振り回すと人形がどんどん大きくなるよという演出のこのコーナー、今まで見てきたパターンはずーっと「一回、みんなのワンダホーパワーが足りなくて人形が膨らみきらない」という演出がずっと挟まってたんですね。制作側の意図としては、あんまり乗り気じゃないテレビの前でぼーっとしてる子にも一緒に踊ってほしいみたいなことなんでしょうけど、人形を大きくするための踊りを踊ってたんだけど人形はなかなか大きくならならくて、それはたぶんテレビの前のみんなの頑張りが足りないからだ、もっとみんないっしょに頑張ってよ!って叫んで、その後みんなでもう一回踊ったら人形がちゃんと膨らんで大きくなって「みんな協力してくれてありがとう!」で終わるパターンをずーっとやってたんです。で、なんか息子はずーっとこのタオルの踊りを拒否し続けてたんですけど、なんか最近突然踊り始めたな、と思ったらね。最近録画した回がね、この演出をまるっとすっ飛ばしてたんですよ。いつもは、その、「苔のむすまで」モチーフの白と緑の犬が大きくなるバルーンだったんですけどね、これとは別に「うーたん」っていうキャラがいるんですけど、たぶん名前的には「ウーロンハイ(鍛高譚)」の略だと思うんですけど。いや、鍛高譚ならもう素直に水か、ソーダ水で割れば!?なんで、わざわざあのシソの風味に、烏龍茶なんて複雑な味ぶつけたの!?ってなる、変なキャラクターがいるんですけど、このキャラが膨らまされる回があってですね、この回は「一回、うまくいかない」の演出がまるまるカットされてるんですよ。

そしたら息子はもう大はしゃぎで、それまで一回もこのタオル振り回しダンスをテレビの前でやろうとしたことなんて一回もなかったのに、毎日毎日タオルを振り回したがるようになりまして。

なんでこんな変化が起きたんだろうっていうことを考えてみるにつけ辿り着いた結論としては、「あの失敗演出が嫌だったんだろうな」ってことでした。一回タオルをぶん回して回しても、テレビの中のバルーン人形は膨らまなくて、一回「あれ~?」という空気になって、で、もう一回頑張ったら膨らむ。その一度失敗を挟む過程にジョインするのが嫌だったんかなーと思ったんです。その過程をすっ飛ばして、一撃で成功する鍛高譚のウーロンハイのときは嬉々として踊るので。

で、これは正直なところ、大丈夫なんかなーと少しだけ心配にもなった。その、失敗を嫌って事に当たらない態度をまざまざと披露されたから。親のこっちとしては面白くなかったのが正直なところだった。

だってさー、世の中は世知辛いし、私という個人はいつだって脆弱だ。失敗は常につきもので、蹴躓いて転んだ回数と立ち上がった回数が同じならそれで情勢は上々で、蹴躓かず転ばない生き方なんてありえない。蹴躓かない歩き方なんて教えようもないし、俺の後ろを振り返れば俺が大の字に転がっていたところが足跡以上に目立って、それらの大の字に寝転んだ跡を結んだ今が俺の人生だと主張する。俺はシンプルに恥をかくことでしかもう少し立派になれないと思っていて、タオルを振り回す程度のことでも恥を気にする息子をものすごく心配に思ったんだよなぁ。

でさ、今回のエントリを書こうと思ったのは、一回タオルを振り回した息子は、いつのまにか他の録画してる一回失敗演出を含むタオルダンスも踊れるようになってたからなんだよね。この前までは、頑なに踊ろうとしなかった、途中に失敗を含むダンスを楽しく思ってたのに俺はちょっとびっくりしたんだ。できんのかい、て。

息子は、まぁ臆病で失敗嫌いなプライドの高い性格なんだろうけど、一回、失敗なしの成功体験を得たら、失敗演出アリの方にも飛び込めるんだ、と思って。

ま、そうだよな、順番順番、と思った。彼の先には道があり、その道のゆく先々には、傍から見て不安なところもあれば、俺の人生経験からして見て無駄に見えるところもある。しかし、まぁ俺がそうだったように、彼には彼の過程があり、彼には彼の順序があり、彼には彼なりの俺にもあるような誠実があるのだろう。その一端が見えて、タオルを振り回す彼の姿を見れたのはよかったなーと思った。

という話をエレベーターでたまたま一緒になったおばあさんに5秒で全部話したらなんかわからんけど喉笛を掻っ切られたので今から病院行きます。凶器は毛ガニの脚でした。止血用にカニカマ渡されたので傷口に当ててるけど、塩っ気がすっごいしみる。一緒に病院こい。

以上です。