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「恥ずかしさ共鳴」という言葉で言い間違いが指摘しやすい

ここで名前を挙げられている『花火』もとい『火花』とは説明するまでもなく先日芥川賞を受賞したピース・又吉さんの小説で、主人公の売れない芸人である徳永がひょんな出会いから師として慕うようになった先輩芸人・神谷と共に豪雪地帯であるため冬は閉鎖されてしまうホテルの期間限定管理人となってネタ作りに励むもののホテルの持つ禍々しいオーラに当てられた神谷が発狂してしまい斧で割ったドアの隙間から面白い顔で「俺の伝記を書け」って言ってくる話なんですけど、ネタバレを避けた結果途中から『シャイニング』が混ざりましたけども、そもそもここは本題じゃないんであらすじ特に書く必要ないんですけど神谷がタイプライターで紙一面にびっしりと「笑われたらあかん、笑わさなあかん。」と書き綴っていたシーンは特に圧巻で僕も読んでて鳥肌が立ちました。

それで本題なんですけど、人の些細な言い間違いをわざわざ改まって指摘するのは億劫で「まぁこっちは意味伝わってるからいいか」とか思いますし、指摘してみて「なんだこいつ細かいところをいちいち突いてきてうるせえな」と思われるのも癪ですしその場の空気が変な感じになってギクシャクするのもアレなんで僕なんか全力でスルーするタイプなんですけど、以前会社にいた先輩がそういう業務上で出てくる用語の言い間違いとか誤用とかがやたら多い人で最初の頃は「何言ってんねんコイツ」って思ってたんですけど、結局間もなくしてその人が本当に言いたかった意味するところは把握できるようになったので「まぁいいか」と全力で放置してましたけど、その人が転職するってんで会社を離れることになった時にもう毎日顔合わせることもなくなるから多少癪に思われようが空気ギクシャクしようがもう俺には関係ねえし放っておいたら転職先でも同じように言い間違いし続けるんだろうしそれなら折角だし伝えといた方がいいのかなと思い立って餞にその人の頻出言い間違い5つくらいを教えたら「いや、言えよ」ってすげえ変な空気になってましたけども、その空気すげえ面白かったです。

とまぁ、かくもして指摘するのめんどくさい言い間違いなんですが、どうしても野暮ったくなっちゃうそんな面倒事を、シン (id:meltylove) さんみたいなスマートな人がするんだなぁと珍しがっているとそこに返ってきた言葉が「恥ずかしさ共鳴」という便利発明ワードでびっくりした。なるほど、どうしても人の間違いを指摘するというのはつまり「教えてやってる」って形式になっちゃいますので関係性をねじれさせがちでめんどくせぇってのが本質だったわけですが、そこに「恥ずかしさ共鳴」という概念を導入することで優しさでもなく厳しさでもなく、親身に我が事のように考えた結果、貴方と私に同じように備わっている恥ずかしさを解消するために言ったのですよという寸法となりスマートに感じ悪くなく言い間違いを指摘することができるわけです。いやぁ工夫一つで補助線一本書き加えるだけでこんなにも見え方を変えることが出来るんだなとびっくり仰け反ったので慌てて書き記した次第です。俺も億劫がってばかりいないでこういう上手いやり方とか言い方をもっと考えていかなあかんな~と身が引き締まる思いなわけですが、そもそも一年越しとかで言い間違いを指摘した後の空気を「面白かった」と形容してた奴が「恥ずかしさ共鳴」なんか発動するわけがないのであった。あと、『火花』映画化するなら、あの水色のワンピース着た双子の少女はやっぱまえだまえだにやってもらうしかないなと思ったけどググったら既に信じられないくらい育ってた。以上です。