まずはこちらをご覧いただきたい。僕がフォローしてるTwitterの人がまとめてくれてたロシアでどんなアプリがたくさんダウンロードされているかをデイリーごとにまとめて可視化した動画だ。
ウクライナ侵攻前後のロシアAppStoreの無料DLランキングの推移を動画でまとめました
— すずき (@michsuzu) 2022年3月10日
侵攻した2月24日以降、傾向が大きく変化し、政府のアクセス規制を回避するためのVPNアプリが上位を占めています。ウクライナも調べたかったのですが、データを集めるのが困難だったのであきらめました pic.twitter.com/lAXxp4sumB
作成者の言うとおり本来の意図は、世界どこにいようが別の国の海外IPとしてインターネットにアクセスできるVPNというサービス?を使って(ここらへん俺もあんまわかってないけど)統制されたロシアからの情報ではなく海外の情報にアクセスしようと国民がVPNアプリをインストールしまくっている、という動画である。
なるほど、、と眉を顰めて見ていたわけだが、なんかひとつ浮いてるやつがいる。
なんか犬のアプリがある。なんだこれ?
リプライ欄でも「犬が強い」「犬が耐えてる」とあって、いやこれたしかにおかしい。
それで動画を見直してみると、実はこれ耐えてるのではなく最初から人気アプリだったわけではなくなぜだか急浮上している。
なんで?
気になったので早速インストールして遊んでみた。
なんの変哲もない、タップしたら色んなリアクションを取ってくれるワンちゃんと遊ぶだけの子供向けのアプリだった。
なぜこれがVPN勢と並んで上位に食い込んでいる?
と、思案していると俺はそのからまだ2歳か3歳かなので全く記憶にないし真偽不明なのだが、何度も聞いたこともある、ある逸話を思い出した。
かつて昭和天皇が崩御したとき、日本全体が喪に服すこととなり、テレビはまさにお通夜ムード、娯楽を求めた国民によって全国のレンタルビデオショップの在庫は空っぽになった。
つまり、このワンちゃんアプリは何か「そういうことか!」とわかりやすく驚けるような巧妙なカラクリでインストールされまくってるわけではなく、シンプルに子供向けの娯楽コンテンツとしてインストールされまくってるのではないか。
ここからは浅薄な想像でしゃべるので読んだ人が突っ込むだけ突っ込んでいただきたいのだが、調べてないので知らんがきっとロシアのテレビはウクライナ侵攻以降、プロパガンダである戦争報道一色であろう。そこからは娯楽コンテンツなんか一切に消え失せているのかもしれない。
しかし、ロシアにだって子供がたくさんいる。子供には戦争のことなんか深刻に向き合う義務なんてないし、もっと楽しいものを見て過ごす日常があるべきだ。もしそれがこの先無くなってしまうとすれば?いつまで無くなるんだ?いつ戦争は終わるんだ?ロシアの市井の子を持つ親にはそんなことわかるはずもない。
じゃあせめて、せめて何か子供が楽しめるコンテンツを今のうちに確保しなければ。
そういう風に多くの市井の子を持つロシア人が危惧したと考えるなら、このワンちゃんアプリがインストールランキングの上位に食い込み続けていることにも全く合点がいくわけである。
これが見えてくるとVPN以外のアプリ動向にも色々「なんでそうなってるのか」が見えてくる。
まず、telegramというのは名前からしてLINEのような通話アプリだと想像できるが、調べてみるとロシア産だった。
もともとのロシアの通話アプリのシェアはわからないが「何かあった時に連絡を取りたい相手と繋がるために一番信用できるのはやはり自国のアプリだ」ということなのだろう。
そして、辛い非日常の中においてもコンテンツに触れたいのはもちろん子供ばかりではない。
侵攻より前の日付のランキングがある動画の最初の部分ではInstagram、YouTube、tiktokなどのコンテンツアプリが上位に位置しているのだが、Instagramと YouTubeは早々に圏外に落ちていきtiktokが今日まで辛くも生き残っている。
これもシンプルにFacebookもGoogleも西欧側の企業であり、いつアクセス不可になるかもわからない。tiktokは中国なので、それなら一番最後まで残るコンテンツはtiktokなのではないかというロシア人の判断のように見えてくる。
ここまで考えてGoogleでニュースを調べてみると、ここ2日くらいの間で実際に、Netflixと Amazonprimeビデオは、ロシアへのサービスを停止するらしいことが簡単にわかった。情報があまりに多すぎるので恥ずかしながら自分から探さないと目に入ってこないニュースではあるが、探してみればすぐに出てきた。
ロシアの市井の人々はこうなることを予期して備えていたのかもなと思った。
VPNアプリだって、こうなってくるとなにも「国外の戦争に関するニュースに触れたい」という理由だけでインストールが増えたのではなく「早くクレカ使えるうちにとりあえずVPN経由でネトフリ一年契約し直して、とりあえず向こう一年はエンタメを享受できるようにしなくちゃ」みたいなそういう人もいるんじゃないかなと想像する(ここらへんは俺がVPNの仕組みあんまわかってないので申し訳ないんだが)。
ここまで考えて、やっぱ戦争はやめようよという話にしかならんのだけども。
第三者の我々は、情勢はどうなんだとか戦況はどうなんだとか、核が飛んできたら嫌だなぁとか、ウクライナの人たちに死なないで欲しいなぁとか、もちろんみんな心を痛めているんだけど、コロナの時と違って(コロナは継続中だけど)トイレットペーパー買い占めたりなんだったりってのは起こっていない。
ロシアの人はロシアの人でまた事情が違う。
攻め込まれたらどうしようと思うのはもちろんとして、今すぐに攻め込まれるかはわからないとしても「私たちはこれから今までの生活を送れるかわからない」ということに恐怖しながら、何とかこれからもできる限り今と同じような、大変なこともあるけれどコンテンツに触れて楽しい気分になれる一瞬がある毎日を送りたいと思ってるんだろうし、これは「明日から食べ物が買えなくなったらどうしよう」とまったく地続きな思考の集合体によって起こってる動きでそれが可視化されたものなのかなと感じて、このアプリランキングの動画を見て、本当に多くの市井の人はまったく望んでいない、日常を穏やかに過ごしたい人たちばかりなのに起こっている戦争なんだなと改めて思った。
以上です。