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漫画版『夫のちんぽが入らない』は、こだまさんの話ではない

たぶんこれから綴る文章がすごい簡素な文体になるのはスマホからちゃちゃっと書くからで、他意はないです。

こだまさんのベストセラー『夫のちんぽが入らない』のコミカライズがヤングマガジンにて先週から始まりました。

その二話までを読んだ感想などです。

思ったことは掲題の通りです。

それを思ったのは、漫画の主人公・鳥居さち子が新しく出来た恋人との初めてのセックスが「入らず」失敗に終わったあと、本屋で世の女性の性生活に関する赤裸々な情報が載っている雑誌を読んでいるシーンがきっかけです。

さち子は雑誌の中に自分と同じ悩みを抱えた女性が誰もいなかったことを受け「世の中の女性はちんぽが入っている」みたいなことを思いました。

ここに、違和感というか、この人は鳥居さち子であって、こだまさんではない。ということを僕は思ったのです。

『夫のちんぽが入らない』

こだまさんが、このタイトルで書籍を出版するに至るまでには、初めて入らなかったその時から書籍を出版するまでのこだまさんの人生のすべてがあって、そして初めて『夫のちんぽが入らない』という表現に至ったのではないかと僕は思っています(あるいはそれは「こだまさんの生まれてからのすべてがあって」と言い換えても良いでしょう)。

つまり僕がその時感じたのは、こだまさんはその問題に直面した大学に入ったばかりのその時、「ちんぽが入らない」という言葉を以って自身の状況を認識していたのだろうか、という疑問です。こだまさんがどうしてもどうにも願っても入らない「それ」を「ちんぽ」と呼ぶに至ったのは果たしていつだったのだろうか、という問題です。

小説『夫のちんぽが入らない』は色々あってめちゃめちゃ面白い境地に至ってしまった今その時のこだまさんが、半生を振り返る私小説でした。

対して漫画版『夫のちんぽが入らない』は、主人公である鳥居さち子が、その瞬間瞬間を生き、その瞬間瞬間に思ったことも読者に共有される現在進行形のドキュメンタリーとして展開されます。

大学に入ったばかりのうら若き乙女がある深刻な問題に直面し、その問題のど真ん中にあるそれを「ちんぽ」と呼ぶ鳥居さち子は、こだまさんとは全く別の人間なのだなと、僕はどうしようもなく思ったのでした。

かと言って、別にそれが悪いことなのかというと、まったくそんなことはなくって、小説の主人公と、漫画の主人公は、別の人なんだな、というただそれだけです。

いわば、鳥居さち子というキャラクターは、こだまさんがその半生を以って獲得したみずみずしくもドライで慈愛に満ちながらもシニカルな魅力に富んだ感性を生まれながらに持ちながら、実質人生二周目なのにやっぱりまた入らなくて、その中で悩んだり絶望したりそれでも立ち上がったりしながら、血まみれになってもそれでも自分の大事なものを大事にしたくて生きていくとてもチャーミングな女の子なんだなと思ったのです。

そんな鳥居さち子という女性の半生を、これからこだまさんと一緒に眺めていけるのは本当に嬉しいことで、これから毎週楽しみにして僕も僕の生を生きていきたいなと思いました。小説も漫画も本当にオススメなので皆様ぜひぜひ。

あとこの話、こだまさんに「いや、当時からちんぽ入らん思ってたよ」と言われたら無に帰します。以上です。