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どうせ、うまくいくので安心して観れる『きっと、うまくいく』感想文

この前なんかインド料理屋行って、嫁さんがなんや知らんけどナン食いたいって言うから、俺はもうそれを聞いた時点で南原清隆が帯番組持ってることが気に食わねえみたいな全然関係ないことを考えていたんだけど、まぁいいやと思ってインド料理屋に入って、カレー頼んで、店内にはでかい1畳くらいのテレビが壁に掛けられてて、インドの最近の流行りの音楽のPVが流れてるんですよ。で、最近じゃネットでは度々触れられるところだけどやっぱ見てたらインドのノリっておもしれーのな。なんかこう、バラードっぽい曲のPVとかでもどっか陽気というかふざけてるのな、国民性なのかな。いつもどうにも馬鹿馬鹿しくって、楽しいねぇとか言いながら観てたんだけど、まぁ言うて、男が肌も露わな女性をこれでもかと侍らせてキレッキレに踊ってね、ジェンダー観の固定ヤバイなと思って、PV自体は面白いけどもレイプ大国としての片鱗すごいなと思いながらカレー食ってたんすけど、あんまり観たことなかったけどもしかしてインド映画なんか観たら楽しいかもね、みたいな話になったので観ましたよ、インド映画の最高傑作とか言っても別に怒られないだろう名作、『きっと、うまくいく』。

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いざ軽い気持ちで観始めたら3時間とかあると発覚して、だいじょぶかよって一瞬なったけど、まぁまぁサクッと楽しめたね、テンポ良すぎ。褒めてるけど褒めてないけど褒めてる。全編アニメ版『斉木楠雄のΨ難』くらいのテンポで進んでいるので、間違えて微妙な早送りで進んじゃいないか最新の注意を払った。その結果、大変良い映画を観た気になった。良かった良かった。

いや、でも実際よくわかんねえんだわこれ。油断するとなんか最近は邦画とハリウッドしか見てねえやってなるじゃないですか、そんななかで他の国の映画をたまに見るとわけわからんくなるね。映画としての文法?みたいなものも結構違ったりするんだろうなぁって思うし、それがインドとかなってくるともうリアリティラインからしてもうまず全然わかんないものね。この映画は、たぶん2000年前後あたりのインドの一流大学が舞台になってるっぽいんだけども、そこで主人公チームがまぁ馬鹿でオマヌケな無茶をする、それで痛快に嫌な奴に一泡吹かせたり、たまにイタズラがバレてピンチに陥ったりするんだけど、まぁこっちの価値観でいうとド犯罪みたいなことをするのよ、先生の家に忍び込んだり。これが映画だよ、こんなことあるわけねえだろって思って観ればいいのかインドではまだ普通にこれくらいサクッと不法侵入とか出来ちゃうのかなっていうのが全然わっかんねえの、でもなんかこの映画を観てる瞬間瞬間の面白さってそこのわっかんなさ込み込みだったような気がするんだよなぁ。例えば『蒲田行進曲』を舞台を現代に移してリメイクって言われても全然うまくいく気がしないじゃないですか、あの時代ならそんな話もあったかもしれないっていう感覚、それは当時の今その瞬間をあの映画と同じ時間に生きてた人が観て感じるリアリティ含め、その当時の人たちが感じてたリアリティを向こうから見て未来人のこっち側我々も感じられるみたいなそういうリアリティの種類があると思うんですけど、この映画の安心して観られるスカッとする感じってそういうリアリティに支えられてたと思うんです。

なので、なんか、この映画がハリウッドの大物も大絶賛!!みたいな感じで喧伝されて、2009年当時みんながおもしれえおもしれえって言ってたって事実、それをガッツリ時間を置いて熱狂も冷めきって、完全になんで今観たんやみたいなタイミングで冷静に観てみた時に、なんかそれって先進国がもはや先進国であるがゆえに現代を舞台にリアリティ込みで描くことができなくなってしまったノスタルジックな風景を後進国映画に見出して喜んでるみたいな構図なんじゃねえかみたいなことを思って。いや、それ自体が悪いことかっていうと全然そんなことないんだけどね。今年の頭かな? 二宮和也主演で夏目漱石の『坊っちゃん』を実写ドラマ化してやってたじゃないですか。時代設定はもちろん夏目漱石の書いたあの時代、昭和?明治?知らんけどなんかあそこらへんでやってましたけど、じゃあアレを2016年、現代に設定を移してやってうまくいくかっていうとうまくいかないじゃないですか、ただ2016年インドを舞台にしたインド版『坊っちゃん』はたぶん余裕で成立するんですよ、なんかインド映画とハリウッドってそういう関係じゃん、と思った。繰り返すにそれは悪いことじゃないんだけど。だからそれこそ冬ソナとかの韓流の先駆けがあったわけですけど、あれも結局80年代90年代の日本のトレンディドラマのノリがもう日本では「そんなんありえねーわ笑」って感じでリアリティ伴って書けなくなってそれでもあったトレンディドラマへの需要をペ・ヨンジュンが満たしてくれたみたいな側面があったと思うんですけど、異国にそういう過去の、喪失したリアリティを求めるって構図はなんか、単純にそのまんまの意味で、おもしれえな、不思議な現象だな、と思って。とりあえず俺はそういう感覚に自覚的でいたいし、これからも同で理屈で説明できる現象がしばしば起こるんだろうなぁと思ってる。

で、まぁ映画本編の内容については特に言うこと何もないんだけど、基本大学で青春とか笑いながら前向きに頑張るってだけの話なんだけど、ここまで述べた通り日本とかアメリカで今こんな筋書きの話を書いたら「そんなのありえっこねえわ」「ご都合主義じゃん」みたいな展開がバンバンあるの。もちろん、アメリカとか日本でやってやれないことはないんですよ、ただ成立させようとするとかなりギャグに寄っちゃうよねみたいな展開も一定のリアリティのもとでコントロールされてる感覚がするんですよ。だから、なんか、すげえ不思議。こんなにそのままの意味で「笑って、泣いて、元気になれる」みたいな映画ってどうなってんの?みたいな。いや、めちゃめちゃ良い映画ですよ、ほんと元気になれる映画って感じだから、万人にオススメしたい。俺は、またもう一回観る機会があるかちょっとわかんないけど、これが「人生で落ち込んだ時に、何度でも観たくなる映画」になる人ってたくさんいるんじゃねえかなってのは思う。もしかしたらそれはあなたかもしれない。もし、そうだとすると、そんな映画をまだあなたが観てないのは損だ、だから今すぐ観なさい。と、万人に言ってあげたいそんな映画です。3時間あるけど、笑えるくらいカッチリした2部構成になってるのでDVDで観てても途中休憩可です。あれ実際のインドでの上映の時ってやっぱ休憩取ってるのかな、1時間半がインド人の集中力の限界みたいなセオリーがあったりして。歌舞伎に似てるな。その、集中力ない人でも安心みたいな休憩ありき設計も、歌と踊りで飽きさせない感じとかも。そして何より掲題の通り安心して観れます。きっとうまくいくどころの話じゃありません、どうせうまくいく、最後どうせハッピーな感じにまとまる予感が終始半端ない。かと言ってそれが邪魔に感じられるかっていうと全然そんなことない。いや、ほんと不思議な映画です。観てない人は是非。あと、他にももうちょい観たいんでオススメのインド映画とかあったら教えてださい。

では最後に僕の考えたさいきょうの日本版『きっと、うまくいく』キャスト2016を発表してお別れです。

 

主役の天才役:劇団ひとり

親友のメガネのデブ:あえての神木隆之介

もう一人の親友の苦学生:そうくりゃもちろん佐藤健

嫌味なウガンダ出身のライバルキャラ:斎藤工

小雪のエキスを吸った高木美帆みたいな顔のヒロイン:小雪のエキスを吸った高木美帆

その姉の妊婦:青木さやか

ヒロインのフィアンセ:北島一樹

学長:『GTO』の時と寸分たがわぬ演技の中尾彬

ミリ坊主:ロバート秋山

テーマソング直後に自殺して笑いを取る人:DAIGO

 

7年前の映画のこんな大喜利やって笑うやつ俺以外この世におるんか。以上です。

 

 

2016年11月5日15時追記:ごめん、ちゃんと調べたら日本公開は2013年だったっぽい。