じゃあ今日も今からこわい話考えますね
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
これは僕の大学の後輩が体験した話なんですけど、そいつバンドマンでもともとは一人暮らししてたんですけどある時から当時付き合ってた彼女の家に転がり込んで自分のもともとのアパートも解約しちゃってヒモ同然みたいな感じで同棲してたんですよ。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
1年くらいそんな生活してたんですけど、ある時遂に彼女に愛想を尽かされて出てけって話になっちゃって。何せ家は既に引き払っちゃってるんですけどそれまでのツケが溜まってたのかすぐに出てけって調子でどうしようかなってそいつなっちゃってたらしいんですね。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
そしたら軽音の先輩の一人が「そんなに困ってるんならしばらく俺の家にいてもいいよ」って言ってくれて。その人も彼女とほとんど半同棲みたいな調子で自分の家にはもともとあんまり帰らなかったし、帰ったとしてもその先輩は夜勤バイトで家にいるとしても昼から夕方くらいだってことで都合もよかった。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
その後輩はバンドマンでヒモの癖に夜はしっかり寝て昼は外で活動してるタイプだったからベッドひとつのワンルームと言えどもちょうど家にいる時間が真逆になるから変な言い方ほんと都合がよかった。なのでその後輩はさっそく先輩の部屋を間借りする生活を始めた。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
先輩が借りてたのは8階建てで正面入り口にはオートロックもついてる意外と立派な建物で、部屋は2階の角部屋でベランダも南向きの結構いい感じだった。ただその先輩が大の漫画好きで壁一面馬鹿でかい本棚があってそれが少し圧迫感があるのが不満かなくらいだった。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
それで、そんだけ漫画がありゃ暇潰しに困ることもなくそいつの悠々自適の毎日が始まった。事前に言ってた通り先輩と家で鉢合わせになることも全くと言っていいほどなくて、まるで自分の家みたいにそいつは過ごしてたんですけどひとつだけ面倒なことがあって。その先輩はタバコ吸わない人だったんです。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
そいつは喫煙者だったんだけどもさすがに部屋で吸うのは勘弁してくれって言われてたから、タバコを吸う時は屋上までつながってる非常階段のところで吸わなくちゃならなかった。それだけが少し面倒だった。と言ってもそれくらいのことで文句を言える身分でもないからおとなしくそうしていた。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
と言っても高い建物でエレベーターもついてるから、非常階段を使う人なんていなかったのでそいつが喫煙スぺースに使ってた踊り場もそんなに居心地が悪いわけじゃなかった。ちょうど残暑が厳しいような時期だったから夜風が気持ちいいやってなもんだった。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
そいつがタバコを吸ってる時に2階のところを通っていく住人は全くいなかったけど3階か4階かわからないけど上の方で非常階段と廊下をつなぐドアがガチャっと開くことが時たまあった。その後、上へ上へと向かう足音が聴こえてまたガチャっと音がしてドアがバタンと閉まる音がする。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
そいつも自分と同じように屋上で夜風に当たってる人でもいるのかな~くらいに最初は考えてたんだけど、ある時その足音を妙に感じることがあった。そいつはその日、夜の11時頃から踊り場でタバコを吸っていたんだけど友達と始めた電話が盛り上がっちゃって気付いたら2時間くらい話し込んでた。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
その電話を始めてすぐくらいの頃にいつものように少し上の階でドアがガチャっと開く音が聞こえてカンカンカンと非常階段を上っていく音、そいつはそれをハッキリ聞いたんだって。その時はそれを気に留めるでもなかったんだけど、電話が終わってなんか妙に気になったんだって。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
「あれ、あの人屋上から降りてきたかな?」て。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
屋上から出るにはエレベーターを使うとしてもひとつ下の最上階までは非常階段で戻らなきゃいけないからガチャっとドアが開く音とカンカンカンと階段を下りる音、これが絶対聞こえるはずなんだけどそれを聞いた覚えがない。電話に夢中になって聞き逃したともどうにも思えない。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
そもそも今までも屋上から出てくる時の音なんて聞いたことがあっただろうか?そいつはなんか妙に気になって非常階段を屋上まで上がってみることにした。カンカンカン、カンカンカン。誰ともすれ違うことなく辿り着いた屋上には誰の姿もなかった。気味悪いなと思いつつそいつは部屋に戻った。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
それからなんだよね、部屋にいる時にどんっ!っていう妙な物音を聞くようになったのは。先輩はもうすっかり彼女の家に居着いてるのかほとんど家には寄り付かなくなってたから日中も気にせず家にいたりしたんだけど時間を選ばず、朝だろうと昼だろうと夜だろうと時たまどんっ!て鈍い音が聞こえる。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
最初の2、3回はなんだろうと思うだけだったけど一日に何度も、それも毎日毎日あんまり続くもんだからすぐに気持ち悪く思えてきた。そしてあの屋上に行った時のことが変に頭をよぎった。そんなことが一週間くらい続いてそいつもいい加減参ってきた頃だ。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
やはり夜の11時頃、踊り場でタバコを吸っていると上のほうからガチャっ、カンカンカンとあの音をするのが聞こえた。それを聞いたのは屋上まで行ったあの時以来だった。そいつはこの機会を逃してはいけないと思った。その音を聞くやいなやタバコの火を揉み消して階段を駆け上がり始めた。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
カンカンカンカン!向こうも追われてるのに気付いたのか走り出したのが音でわかった。そいつも「おい、止まれ!」とか声をあげながら後を追った。こちらも全速力のつもりだが音を聞く感じ差が詰まってる気配はない。そいつが8階まで上ったところでひとつ上の屋上のドアがガチャっと開く音がした。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
そいつが最後の一息を振り絞るように駆け上がると屋上のドアは開け放たれたままだった。「おい、誰だ!」と声をあらげながらそいつは屋上に出たがやはり誰の姿も見つけることはできなかった。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
さすがにその日は漫喫に泊まり、翌日朝一番にもともとの家主である先輩に電話をいれた。話を聞いた先輩はとりあえず大家さんに連絡してみるからと言ってすぐに電話を切った。10分とかからないうちに折り返しがあった。大家さんが今から話を聞きに行くから家に戻っていてくれとのことだった。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
気味悪がりながら仕方なく家に戻ると30分ほどで大家さんがやってきた。玄関口で事情を話すと、大家さんは神妙な面持ちで言った。「ついにこの部屋にも来たんだね、実はこの角部屋、2階以外空き部屋なんだよ」。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
話を聞けば、なんでも数年前にこの建物の屋上から飛び降り自殺をした若い女がいたそうだ。それ以降、そいつと同じような経験をしたやつが他にもたくさんいて大家さんも困っているらしい。それでもなぜこの角部屋だけ?とそいつが疑問に思っていた時だった。大家さんが何かに気付いた。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
玄関で立ち話をしていたんだけれども、部屋の奥の様子を覗き見て大家さんはなるほどって顔で言ったんだ。「なるほど、アレのおかげであなたは目が合わずに済んでいるんだね」。大家さんがそう言って指を指したのは漫画がぎっしり詰まった大きな本棚だった。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
角部屋には窓のある面が2つある。この部屋の場合は南側と西側。もともと夜型の生活で日の出ている時間に寝ることが多かった先輩は西日を嫌い、大きな本棚で西側の窓を塞いでいたのです。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
だから、その後輩は、彼女と目を合わせることなく、どんっ!という音に怯えるだけで済んだ。彼女が飛び降りたのは屋上の西側のフェンスを乗り越えたところ、ちょうどその角部屋の真上からだったそうです。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
以上です。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2016年6月3日
とうとう全然違う話になるギャグ要素すらなくなってる。