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電車で覗き見えた他人のスマホがなんかホラーだった

今朝電車に乗って立ってたらすぐ前に明るい茶髪ロングで小綺麗な服装の女性がちょうど斜め45度くらいの角度で僕に背中を向けている恰好で立っていてこちらには背を向けているので年齢は窺い知れない身長は155cmそこそこくらいだったと思うんですけど何故身長についての描写をここに書き重ねたのかというとこの女性のスマホが覗き見えた話を今からするからなんですけどもちろんそんな日頃から人のスマホをこぞって覗き見ようなんて趣味があるわけじゃあないンですが身長差で見たくなくてもキレイに視界に入るマッチングというのがあってそれがちょうど155cmくらいなんだなァという認識が今日強まったので身長のことも書いたまでのことよ逆にこの情報はそこから逆算して読者が俺の身長に目星をつける手がかりにもなるわけなので俺が身長をサバ読みたかったのならこの女性の身長は170cmだったと言っておけバ俺がかなりの長身のスラッとした良い男と人は勘違いしてくれるかもしれないが俺は特に身長にコンプレックスがないのでそんな小賢しいことはしなかったどうせそんな嘘をつくなら最初から通勤中立ってると頭に吊革の持ち手が乗って天使の輪になってるみたいなことがよくあるとかそういうことを言うしかし他人のスマホなんて覗いて面白いものでもなしこっちはこっちで電車立ってる時はツイッターやってるか本読んでるかだから視界に入ることはあってもその内容ダなんてまぁ気にも留めないよっポど面白くない限りは気にも留めないつまりよっポど面白かったのでなんだなんだと覗いてしまったということなのだけれどそれまでLINEっぽい画面を開いていた彼女のスマホが画像一覧っぽいものをパッと開けたのが先ず視界の端で見えて横5縦7くらいの割りとサムネイルサイズ極小のギュッと詰まった感じの画像一覧が開けたのだけどその一覧が一目見るからに異様で俺はなンじゃこらと目を剥いた全部文字列なのだ極小のサムネだのから内容まではさすがに判別できないが10枚20枚といった量には留まらない彼女のフリックに次ぐフリックで画像一覧は下へ下へとスクロールしていくのだけどもスクロールしてもスクロールしても文字列がギュッと詰まったサムネイル画像が延々続いている延々と続いているテキストをスクショに撮って画像として保存管理する文化圏の存在は知れているが甚ダ尋常な量ではないこんなものなのだろうかそんなものなのだろうか俺にはわからないがわからない俺にはそれは異様な光景に見えたのだ漸く彼女はフリックする手を止めてサムネイルの一つをタップしたそこで画面いっぱいに表示された画像はやはり文字列であったやはり文字列ではあったもののやはり文字列であった以上にそこには私が予想だにしなかった情報が多数含まれていたどうやらその文字列はメールの内容を保存したもののようであったがスクリーンショットではなくガラケーのメールを接写して保存しているものだった一行目にはそんなに落ち込まないでと書いてあったその後にも文字列は続いていたが彼女がフリックして次の画像を展開したので読めなかった次も同様にガラケーのメールを接写して保存したものであった一行目はだいじょうぶだいじょうぶであった彼女がフリックして次の画像を展開した一行目はがんばってるよだった彼女がフリックして次の画像を展開した一行目は気にしすぎじゃないかなだった彼女がフリック一行目は元気出たみたいでよかったねだったフリック一行目がんばれーフリック一行目落ち込みすぎはよくないよフリックフリックフリックフリックすべて一行目は励ましの言葉で始まっている俺が一番最初に想像したのはハハアこの人はもしや出合い系のサクラが派生でやっているメール占いサイトにハマっている人ではあるまいかメールの向こうには占い師でもなんでもないバイトの兄ちゃん姉ちゃんおっさんおばさんが待ち構えていて一通何十円だか何百円だかのメールに対してのらりくらりと返信し励まし宥めすかしながら継続的に課金をさせる調子がいい時はよくわからない待受画像をご利益だなんだと数万円で売りつけるそういう商売が世の中にどうもあるらしい彼女はそれに引っかかってよろしくやっている人ではなかろうかフリックフリックフリックフリック一行目励まし勿論たとえば恋人であるとか親しい大事に思っている人のメールを保存しているという可能性も全くありえなくはないのだがそれにしても量が尋常ではないしフリック一行目励ましフリック一行目励ましもし相手が生身の人間であればこれだけメールがあればおはようから始まるメールの一つくらい出てきていいはずだフリック一行目励ましフリックフリックフリック一行目励まし時間帯を感じさせないそのメールの始まり方は私に恋人同士の仲睦まじいメールのやりとりよりもより事務的な何かを感じさせたどちらにせよ私が初め面食らった大量の文字列の正体は漸う明らかとなった依然私には些か奇妙には見えるもののナアンダなんてことはない私とは少し違うものを心の拠り所にする普通の人の普通のスマホだったではないか世の中色ンな人がいるものだ俚俗な好奇心を示した自分を少し恥ずかしく思わなくてはならん電車は終点へと近づいていたフリックフリックフリック彼女の指がピタと止まる一行目今日はいいことあるはず彼女の指はピタと止まっている続きが読めてしまう一度恥じて取り下げたはずの好奇心がまた頭を擡げ私の視線を彼女のスマホに滑りこませる何だか色の話が続いている矢張り占いサイトだったのか全容は見えたこれでオシマイだ私が思った次の瞬間彼女の指が再び動いた画面は誰かとのLINEの画面へと舞い戻るフリックフリックフリック彼女は素早い手つきで誰かへ送る文字列をしたためていく一行目今日はいいことあるはず一行目今日はいいことあるはずその後には色の話が続いている彼女は文字列をしたためていく誰かへの文字列をしたためていく先ほど確認していたメールと一言一句違わぬ文字列をどこかの誰かへ向けてしたためていくフリックフリックフリック果たして見る間に誰かへの文字列はできあがった先ほど確認していたメールと寸分違わぬ文字列は果たして出来上がった電車が止まった扉が開いたフリックフリックそしてタップ果たしてそれは誰かのもとへと送信された誰の言葉かも判然とせぬその言葉は果たして誰かのもとへと送信されたそして女は私に背を向けたまま電車を降りるとホーム下の階段へと消えていった呆然とする私だけを残して消えていった