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『僕のヒーローアカデミア』とここ数年のジャンプの雑感

さっきちょっと思ったのでなんか書きます。

主に掲題の漫画の話になるんですけど作者は堀越耕平先生でジャンプでの連載は『逢魔ヶ刻動物園』『戦星のバルジ』に続き三作目。

僕のヒーローアカデミア 1 (ジャンプコミックス)

僕のヒーローアカデミア 1 (ジャンプコミックス)

 

先日コミックスの一巻が発売したばかりで爆売れしてるらしい。そして今のところ超面白い。しかし最初の入りが超面白いのはこの漫画家先生のいつものこと。こっからが正念場だろうなーと思ってる。

というのもこの人、たぶん自分のキャラクターにすごく愛着を持つタイプなんだと思う。なのでキャラクターみんなのことをバランス良く掘り下げて書こうとするあまり全体通して何の話をしているのかが散漫になっていってズルズルと掲載順落ちていくみたいなイメージがある。まぁ別にこの人に限らずそういう脱落の仕方をするジャンプ連載ってのは枚挙に暇がないんだけれども。

なので一通りの味方キャラが出揃って敵っぽいキャラも出揃ってからが正念場。こっから各キャラクターそれぞれに与える見せ場・ページ数をミスるとガンガン読者に置いてけぼり喰らわすことになっていく。と思う。

これ今すごい思いつきで書くのでたぶん過去の連載作品を本当にズラっと並べてみたらそこまでそんなことないかもしれないので勘弁して欲しいんですけど、ある時期からジャンプ漫画において「過去の因縁の清算」的な要素が安全牌として求められるようになってる気がする。

ONE PIECE』『NARUTO』『BLEACH』『銀魂』、現状の長期連載陣を見るとそこらへんすごくそのまんまだけどそれで最初に豪快に当たったジャンプ漫画は『るろうに剣心』かなぁ。もちろん「過去の因縁」なんてのはありきたりすぎる要素なのでそれ以前にそういう要素を含んだ漫画はなかったなんて頓珍漢なことは言えないけど、どうも作り手側の意識としてそこらへんの成分を過剰に盛り込まなきゃあかんのやみたいな空気って、あったような気がする。あと今思いついた余談だけど「過去の因縁の清算」って要素は最近よく揶揄される「血脈主義」ともやたら相性がいいよね。

ところが最近当たってる作品を見てみるとどうもこの「過去の因縁」的な要素を意識的に減らしてみませんか(まったく無くすわけではない。というかそれは流石に無理)みたいな方向にシフトしているようにも感じられる。もちろん楽の鍵穴は何で開くのかわからんし殺せんせーの過去は謎のベールに包まれてるし、ソーマの親父も同じ学校出身だし、烏野高校排球部は小さな巨人がいた全盛期を取り戻そうとしてるし、ワートリの世界観は複雑でまだまだ掘ったら出てきそうだけれども、それらはあくまで世界観を形作る【いつか】回収されるなり活用されるなりの伏線に過ぎず単眼的に各回を読んでみればメインは今その瞬間を生きる主人公たちの活躍や成長を描くことなわけで。逆に言えば未だにやっぱジャンプ連載と言えばこんな感じっしょと言わんばかりに「過去の因縁」にすげえ重点を置いて始めた漫画は面白いように倒れていっているような印象もある。

一周回ったのかなんなのか知らないけれども「過去の因縁を清算する」っていう過去から現在に伸びるベクトルはスパイス程度に留めて「今現在を謳歌するキャラクターが成長していく」みたいな現在から未来へ伸びていくベクトルをメインにした方が面白いんじゃねえかみたいな、そういう機運があるような気がする。

で、なんでこの話に脱線したかというと『僕のヒーローアカデミア』は是非ともこの機運に全乗っかりして過去がうんたらとかそんな要らないからこのまま突き進んで欲しいなーってことなんですよ。間違っても生徒一人一人がヒーローを目指す動機とかいちいち丹念にまるまる一話とか割いて詳しく回想しなくていいですから。しばらくは「かっこいいから」でいいですから。敵がヒーローを憎む理由もしばらくはそんなしっかり書かなくていいです、「悪いから」でいいです。間違っても敵を改心させたりなんかしなくていいです。過去のヒーロー協会の不祥事とか汚点とかも別にあってもいいけど個人的には10巻くらいまでは我慢しておくびにも出さないで欲しい。むしろ10巻くらいまではそこらへん触らなくてもいけるはず。「かっこいいヒーローに憧れてるから、平和を乱す悪と闘うヒーローになりたい」という身も蓋もない真っ直ぐな夢を原動力に少年少女の成長譚を進めてくれると俺は嬉しいし、それが一番堅いんじゃないかなぁと勝手に思っているのでこんな話を始めたのでした。因縁もそんな過去から引っ張り出さないで現在進行形で発生して現在進行形で解決していけばいいじゃない。みたいなみたいな。

そういえば去年末に書いた今年終わったジャンプ漫画全感想(普通にタイトル間違えて「打ち切り漫画」って書いたらスケットダンスめだかボックスのファンがおこになってるのが散見されたので今年は気をつけよう)でも触れてたような気がするけど、主人公(の持つ特殊能力)の出自と壮大な世界観を形作る要素がまんま結びついていて序盤でそれを説明されちゃうと壮大なのに逆にショボく見えちゃう現象ってのもここらへんと関係してるような気もする。うまいこと小出しに出来て徐々に全容が明らかになっていくんだったらいいんだけどね。そう考えると1話の段階で「主に敵キャラ5人な」ってほぼ言い切って本当にそうだった『黒子のバスケ』すげぇ。

まぁ、こういう角度から見てみたらこんなことも言えなくはないんじゃないのみたいなゆるい感じなので例外とか腐るほどあるとは思うんですけど、そんな感じです。なおこのエントリを書くにあたって確認してみたら『戦星のバルジ』のwikiを誰も作ってなかって笑った。以上です。