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「死んで詫びます」は、雨乞い

 上記のエントリではタイトルの通りに「本人は絶対に認めないし、自覚もしてないんだろうけど、『私もう死にます』なんて言うのは、結局は脅迫なんだよ脅迫」という話をしている。そうだと思う。傍から見てそういうものは脅迫として機能している。ただ、それはこっちからはそう見える話であって向こうからは違うように見えてるはずだ。

 それはたぶん雨乞いなのだろうなと思った。ので、そのことを書く。

 けど、別にこれは「あれは脅迫のつもりじゃないんだよ」と擁護したいわけでも「向こうにも向こうなりの事情があるので勘弁してやって」と言いたいわけでもない。ただ、たぶんこんな感じなんじゃねえかなという想像の話である。そして、これを当の本人が読んでも脅迫説と同じく「そんなつもりじゃない」と言われそうだなという気もする。

 自分の感情に責任を持てない人がいる。それは自分の感情を上手にコントロールできない人である。

 自分の感情を上手にコントロールできない人はきっと無力感を抱えているだろう。第三者の立場の人間からするとそれを能力不足とか自業自得とか言って切り捨てるのは簡単なことだし、あるいは自分の人生を自分の足で歩いて生きるためには必要なことですらあるかもしれない。それが良いことかどうかは分からない。ともあれ、自分の感情に対して無力感を抱えている人間というのが世の中に少なからずいる。

 無力感。

 それはつまり、自分の力ではどうしようもないってことである。

 それは理不尽に、自分の意思や振る舞いとは無関係にやってくる。実際はそんなことなくって、理屈もあれば、自分の挙動と因果関係があるとしても、当人にとってそれは必ず、理不尽にやってくる。それはほとんど天災だ。望む望まないに関わらず竜巻がすべてを飲み込むように、外部からやってきた何者かが私の心の平穏をかき乱す。私は一生懸命生きてるのに、せいいっぱいやっているのに、それは理不尽に、無慈悲に、私を蔑ろにして、私から奪い私を荒らしていく。

 対人関係のトラブルをそういう風に解釈してる人ってのが世の中には少なからずいるんじゃねえかなと思う。

 さて、で、その天災をどうするかだ。言うまでもなくそれは実のところ天災ではなく、心を持った人間相手の話なので、本当はやりようがあるはずなんだ*1。でも、当人からするとこれは天災みたいなもんですから、まともに話し合おうなんて気はさらさら起きない。自然はそんなに甘くない。話の通じる相手じゃない。それでも何もしないわけにもいかないものの、祈りを捧げるのがせいぜいだ。怒りよ静まれ怒りよ静まれとただただ頭を垂れることでしょう。そして人はそれを「形だけの謝罪」とか「何が悪いのか全然わかってない」とか評するのでしょう。

 こんなもん、ほとんど、雨乞いじゃねえかと思うわけです。

 カンカン照りで村が干からびてどんどん人が死んでいく中、どうすることもできなくって、とにかくお願いだから許してくれ。もう勘弁してくれ。恵みの雨を。恵みの雨を。

 今までわけのわからん謝り方ってのはさんざん見かけたことがありますが(謝るに限らず、駄々を捏ねるようなコミュニケーションエラーは数多に散見されるわけですが)、アレ全部雨乞いなんだなと思えばしっくりくるし、雨乞いが行くところまで行けば「よっしゃ血を捧げます命捧げちゃいます」ってところに行き着くしかないわけで、そう考えると「死んで詫びます」って話になるのもなんだか納得がいったわけですね。

 勿論、「貴方は天変地異を操る神であるはずだ」と迫る人がいたとするなら、それは見紛うことなき脅迫だろう。勝手にこちらばかり偉くされて慈悲を求められては堪ったものではない。

 それでも僕は、もうちょっとなんとかならんかな、と僕だって僕なりに思うんですが、ここまでの話を踏まえて「そういうわけなのでこうしましょう」というソリューションの提案は残念ながら現状手元にありません。「こういう事情なので大目に見てやってください」なんて言う気も全くありません(そんなもん大目に見てやる理由にはひとつもならないと思ってます)。それでもまぁ、「じゃあどうするか」って時に参考にする切り口ってのはいくつあっても困りはしないと思うので、忘れないうちに書いておきました。

「憧れは理解から最も遠い感情だよ」とは漫画『BLEACH』に出てくる言葉である。

 憧れにかぎらずとも、理解を遠ざける感情というものが世の中にはどうやらいくつかあるようです。そのうちのどれが原因で今こんなんなってるんだ、みたいなのは細分化できればできるほど、雨乞いされる側にとっても雨乞いする側にとっても、もう少しマシになるんじゃねえかなと思うんですけど、なんかまぁそんな感じです。以上です。

*1:これがよくまとまってて面白かったです。http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2016/03/31/183352