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『テッド(TED)』観て考えた結婚先送りたい系男子の気分

 数字調べるのめんどくさいんすけど晩婚化って欧米諸国でも進んでるんすかね。

テッド [DVD]

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取り急ぎあらすじをあらすじます。

友達もろくにいない内気な八歳の少年ジョンが神様にお願いした結果くまのぬいぐるみテッドに命が宿り二人は一生の親友になりました。それから27年経ってジョン35歳になってもほんとにまだテッドと一生の親友やってた。テッドと仲良すぎ。四年付き合ってる彼女いるけど結婚願望なし。テッドと仲良すぎ。テッドと仲良すぎぃぃっっ!

あらすじをあらすじ頂き誠にありがとうございました。それでは本文です。

これ、僕には結婚先送りたい系男子の話に見えて、嫁と見てたんですけどなんかすげぇ無駄にハラハラしました。もう結婚したのに。「なんとなくめんどい」みたいな理由で結構たらたらしたお付き合い期間が長かった、ていう後ろめたさが意外と俺の中にあったのかなという気もします。シモネタとマイナーネタ盛りだくさんというよく言われる理由とは全く別のところでカップルで見ない方がいい映画だと思うし逆に言えばアベックで見ちゃいなよって映画にも思えた。

「子どもの頃友達になったぬいぐるみも俺もすっかりおっさんになった」っていうお約束ラインを逆手にとったありがちコメディ設定と思って油断してたんですけど、思った以上に痛いハラを突かれる映画でした。思い出したのは例えば最近話題になってたアラサー女がゴスロリファッションと決別するまでを描いたコンプレックス・エイジ、もしもドラえもんが帰らなかったら、2ちゃんコピペの鉄道模型全部捨てたら旦那がこのまま消えてしまうんじゃないかと思うくらい元気がなくなった女の話、たぶんこの映画の大テーマってそこらへんだよなと俺は俺の心により宇宙からその大テーマを受信したのです。

まず、同性友達の楽しさとラクさってヤバいですよね。ジョンとテッドが本当にめちゃめちゃ仲良いしその仲の良さの種類がすごいわかる「ああ、あれだ。あの仲の良さだ。」ってなる。ジョンとテッドは大のテレビっ子で八歳から27年間ずっと一緒にテレビとか映画とか見てるんでそんなん仲良くならないわけがない。笑い飯みたいに交互にバドワイザーの名称をもじって遊ぶ下りとか、テッドの新しい彼女の名前はキラキラネームって聞いてジョンがそれを当てにかかるシーンとか「うわ、その男友達のノリすっげわかる」と思って胃がキリキリしてくるわけですよ。会話の妙を楽しむのってジャズに似てて表面上の言葉の意味で理解しあうのはむしろ初心者向けのあんま面白くない遊び方で絶対に言語化できない過去の記憶全体の要所要所を勘で刺激しあって刺激されたらこっちも勘で言葉を投げて向こうが刺激されたら笑ってまた俺にとっておもろいこと言ってくる、みたいなそういう良い関係の人って皆様一人や二人いらっしゃいますでしょうか?俺はいます。小学校3年から大学出てくるまでの10年とかの間ぶっちぎりで一番多くの時間を過ごしてきた腐れ縁みたいなやつがいてるんですけど、今では一年に一回話すか話さないかなんですけど話し始めたら100%おもろい。ずっとボケ合ってずっと二人とも笑ってる。しかもそれが俺と彼の共通の面白いツボにのみ特化してるからたぶん他の人からするとそこまで面白いのかはよくわからない。ただ俺と彼は全力でげらげら笑ってるし喋れば喋るほどノってきてどんどんハイになる。傍から見たらラリってんのかレベルですよ。何年か前に初めて嫁に会わせた時もそんな調子で嫁は大変疲れていたように見えた。そりゃそうだと思った。

これは別に「結局、純粋な楽しさで言うと女より男友達と喋ってる方が楽しい」とかそんな単純な話ではなくて、嫁とは嫁とで築き上げた二人が面白がれる別の文脈があって馬鹿話してけらけら笑うってのは毎度やってるんですけど(これもたぶん俺と嫁二人以外は全然面白くないと思う)、つまるところ嫁とやるジャズと男友達とやるジャズは全然別物でそのうえ別腹だよねって話で。三つ子の魂百までじゃないですけど子供の頃の影響として備わってる笑いのツボってたぶん死ぬまで笑えちゃうし直撃してるジャンプ漫画の話が一番面白いし、そこらへんのツボが最初から同じ女性と一緒になれればそれが一番なんだけどそううまくいくとは限らないしそこで一緒になるんだからこっちのツボを面白がれと強要できるはずもなく、これは別に男の側に限った話じゃなくて嫁さんと嫁さんの親友が喋ってるの横で見てても「あ、そこウケるの!?」みたいなことはしょっちゅうだしそういう時の嫁さんは本当に楽しそうだからいいんだけど、友達と遊びに行って帰ってきた嫁さんは友達とジャズやる用のコンディションを引きずってるから俺とボケ合うには若干のチューニングやインターバルが必要となる。また、俺22歳の時に初めてエヴァの一話見たけどその時点でエヴァを踏まえて作られた漫画アニメたくさん知ってるしそのタイミングで見せられても変に概要だけネタバレ見聞きしてるしで、直撃世代の嫁さんの興奮をそのまま共有することなんて出来るわけないので「つまらん」て言ったら泣かれた。あの頃俺は若かったのでポケットにオブラートを持ち歩いていなかったんだ。反省はまぁちょっとはしてる。

つまるところどれだけ良い異性で一生一緒にいたいという気持ちがあったとしても決してその人は押してくれないけれど定期的に俺が刺激されたいそういうツボってのはどうしても一つや二つある、って話ですよね。そして結婚ってそういう配偶者が押してくれないツボを刺激する機会も軒並み奪われてしまうんじゃないかというような予感が多分に含まれてる制度なんですよね。実際はうまいことやりゃどうとでもなるんでしょうけど独身の時も一日24時間で結婚しても一日24時間というのは単純に足し算引き算で考えてしまうとこれ結構シビアな問題なわけです。

僕なんてただのお喋り糞野郎なんで男友達と酒飲みに行きたい欲くらいしかないわけでそれもブログ書き散らすことである程度代替できてる感あるのでお手軽感がすごいわけですが、テッドという親友を通して「配偶者が決して押してくれないツボ」があるということに思いを馳せてかつよく考えたらテッドってただのぬいぐるみじゃんと立ち止まり思い直すとこの問題は「一人の時間を大事にしたい」みたいな趣味と結婚みたいな話にも発展してくるんじゃねぇかなとも思うわけです。僕は時間と金さんざぶっこみたいみたいな趣味を持ちあわせていないのでこの話はそんな立ち入らなくていいのかなと思うので切り上げるんですが。

「結婚すると何かを諦めなくちゃならない」というのは当然一部事実ではありますがいささかあまりに脅迫めいた調子で使われるシーンが多いよね現代とも思うのですが、結局それってテッドで全編通して描いてたような「配偶者ではどうしても満たしてあげられない欲求ってのは誰にでもある」っていう美しくもなんともない事実に目を背けがちというか「配偶者さえいればもう何もいらない家庭人」が理想とされがちというか、そういうのを相手に求める人もいるし勝手にそうならなくてはならないと思って結婚をめんどくさがる人もいるしで、そういうのってリソースの分配という込み入った問題を検討するのがめんどくさいから0か1かでしか考えないようにしてるところあるよなぁとか、そういう「まだ結婚したくない気分」の源泉をうまく見せてくれてるいい映画だったなぁと思いました。

ただ、いざ実際に観てみると一つも面白くないシモネタとか日本人にはわからない外人マイナーサブカルネタのオンパレードで全然笑えないんで注意してくださいね。俺からすると全然おもんないことでテッドとジョンが笑ってるっていうのも、こんなようなこと考えながら見てる俺にとっては悪くなかったけど。テーマ考えると面白いけど本編すっげ観づらいみたいな、生クリームをふんだんに使ったおふくろの味、みたいな。そんな映画です。配偶者か長い恋人がいる男性の感想とか結構普通に読んでみたい。なので観て。みんな観て。あくまで作品としては生クリームをふんだんに使ったおふくろの味ですけど、観て観て。以上です。