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妻の同僚の息子のシュウ君

女ってやつは、なんて枕をわざわざつける必要はないんだろうけど、世の中にはその日にあった出来事とかその時思ったことを何でも思い出した順番に話すタイプの人っていうのがありますね。例えばうちの嫁です。一日を終えて家に帰ると、その日に誰かとした会話とか思いついたことだとか何やかやと述べつ幕なく喋ってくれるもんで、もうこいつはほとんど幼女だなと思ってかわいいなぁと思いながら僕はうんうんと話を聞くわけです。たぶん職場でいちばんすきなのは誰でにばんめにすきなのは誰かとかも聞いたら全部教えてくれるんじゃねえかなと思うわけです。理由も聞いたらどんぐりをいっしょにあつめてくれたからとかちゃんと教えてくれるんじゃねえかなと思うわけです。だからそれ幼女じゃん。俺なんかは割りに「これはつまんねえから話すほどのこっちゃねえな」みたいなことを考えるタイプですから、いや、向こうだってそういうことは考えてるんでしょうけど、こっちはたぶん変なプライドが高い所為でその基準がイヤに厳しいのかもしれないみたいな話かもわからんよね。最近だと、俺がした話で言えば、どちらかというとワーカーホリックである上司がなんか夕方くらいに帰ったの。あんまり好きじゃない上司で、酒の席なんかでもあんまり近づかないようにしてる人だったんだけど。それで早く帰るなんてあんまり珍しいなと思って「なんで帰ったのあれ?」て聞いたら同僚が「猫死んだんだって」って教えてくれて、それを聞いて俺は初めて「あ、飼ってたんだ」って知るみたいな。「あ、そもそも猫派なんだ」みたいなのちょっと面白くないですか? 僕超面白かったんですけど。まあ、これくらいカッチリした話じゃないと、人にいちいち話さなくていいかなって思う方ですから僕は。対して嫁さんは、まあ本人なりに面白かったんだろうとは思うよ俺だっていつも大体笑って聞いてるしね。ただ、取捨選択ってところでいうと圧倒的に甘いんだ。本当に雑多な色んな話をしてくれる。そうなるとそもそものお互いがアウトプットしてる情報量に大きな差が出てきますから。結果として、例えば俺の同僚のことを嫁が知ってる度と、嫁の同僚のことを俺が知ってる度だと結構な格差が出てくるわけ。俺はあんまり喋らないから嫁は大して俺の同僚のこと知らないだろうけど、嫁さんはやたらに些細な話も教えてくれちゃうもんだから、俺は嫁さんの職場の同僚の性格とか人となりとかを顔も見たことないのに変に知った気になれちゃうの。それくらい、日頃聞いてるから、彼ら彼女らの話を。ただ厄介なのは、繰り返すに配偶者の同僚の顔なんてそうそうお目にかかる機会はないわけだから、嫁の話から想像して俺の頭の中に出来上がった彼ら彼女らの人物像が実際に現実に即しているかっていうのはこれもう全くの未知の領域であるわけね。

それで、見たことないんだけど嫁の同僚に井村さんって人がいるらしくてその人は既婚で子供が一人いて、息子さんらしいんですけどその息子は今小学四年生でシュウ君って言うらしいんですけど、実際に嫁の前でも井村さんは息子のことをシュウ君って呼ぶらしくって、「うちの息子が~」とかじゃなくて「シュウ君が~」って呼ぶんだ同僚の前で。と、俺は思って井村さんシュウ君のことめちゃごっつ甘やかしてそうだなぁと思いながらそんな話を聞いてる。単にうちの嫁さんと井村さんがすげえ仲いいだけの可能性もあるけど、その場にいない自分の息子を同僚に対して「シュウ君」って呼称する感じ、ちょっと変だぞみたいなのはあるから、そういう距離感の人は息子溺愛してんじゃねえかな~みたいな邪推をしながら、俺は嫁の話を聞いてるわけ。

という一連の流れだって、井村さんと俺が直接話したわけでは勿論なくって嫁さんの話を又聞きした俺が更にそれを要約して今こうして書き記してるわけ。どこまで本当かなんて全然わかったもんじゃないですよ。本当は井村さんだって同僚の前でいつも「シュウ君」って言ってるわけじゃなくて、音が良いもんだからうちの嫁さんが井村さんの息子はイコール「シュウ君」って呼ぶもんなんだって認識しててその結果、「また今日、井村さんがシュウ君の話してたんだけどね」って言ってるだけかもしれない。その結果、そういう話を嫁伝いに聞いてる俺ももう俺の中では「ああ、シュウ君ね」ってなってるわけ。

それで、定期的に嫁経由でどこぞのガキことシュウ君の情報が俺のところに届くのね、ポケモンのスタンプラリーに行ってどうの~とか算数で分数をやるようになったんだけどどうの~とか、なんで俺がそんなこと知っておかなあかんねん的な情報がガンガン蓄積されていってるわけですけど、小学四年生って難しいお年ごろじゃないですか。この前聞いたシュウ君トピックなんだけどね、なんかお母さんが目を離した隙になんか俺も男の子だからわからんでもないんだけどさ、ハロゲンヒーターでエンピツを燃やしてたらしくて。幸いなことにボヤ騒ぎにもならなかったんだけどやっぱ「ちょっ、シュウ君!?」って話になって、いや、「ちょっ、シュウ君!?」って井村さんが言ったのかは知らないよ? それも俺の想像なんだけど。それで井村さんも、シュウ君そんなことするなんて何か悩みとか不安とかあるのかしら、みたいなことをうちの嫁さんに話したって話を俺は嫁から聞いて、まぁ子供も子供で色々あるし色んなものに興味あるわけだしねーつってその場は終わったんだけど、それからまた日が空いてしばらく経ったある日、嫁が

「シュウ君、またエンピツ燃やしちゃったらしいよ!」

なんて仕事から帰ってきてコートを脱いでるところの俺にイの一番に教えてくれてね、そしたら俺も

「シュウ君、またやったか!」

ってなるじゃないですか。俺はシュウ君のなんでもないんですけど。嫁もシュウ君のなんでもないんだけど、たぶん嫁の中でも「またか!」みたいなのがあってイの一番に教えてくれたんだと思うんですけど、そんな帰ってすぐに言われちゃうと俺もなんか自分に全然関係ない話だし「まあそういう時期あるかもね」ってだけの話でしかないはずなんだけど、なんかそれがすごく大事なトピックであるかのように受け止めちゃいますよね。で、こうなってくると、僕はシュウ君のこと大枠で見れば本当に何も知らないですから、なぜかシュウ君が登場する話自体は頻繁に耳にするわけですけどそれのどれもがうっすーいエピソードばっかだったわけですからその中でそういうインパクトのある話が一つ出てきちゃうと、俺の中でかなりシュウ君と言えばエンピツ燃やす、エンピツ燃やすと言えばシュウ君みたいな感じになってくるわけですね。

ここらへんから脳ってやつは本当いい加減な信用ならないやつだよなって話になってくるんですけど。

シュウ君はそりゃ確かにエンピツ燃やしたよ。2回も燃やした。けど、たった2回だからね。回数で言えばご飯は毎日3回食べてるはずだから、エンピツ燃やすシュウ君というよりかはご飯を食べるシュウ君の方が形容としては現実に即してるんだけど、もう俺の中では完全にエンピツ燃やすシュウ君になっちゃってるわけ。それで、別に井村さんだって嫁に「今日の燃やしシュウ君」みたいなコーナーみたいな感じで嫁に毎日報告してるわけじゃないですから、まずシュウ君そんな毎日燃やすわけじゃないし。2回しか燃やしてないし。ただ、それ以外のシュウ君情報はなぜか俺のところに定期的に届くから。無駄にシュウ君情報インフラが整っちゃってるもんですから、シュウ君のクラス学級閉鎖らしいよとかシュウ君と井村さんUSJ行ったらしいよみたいな情報は俺のところに定期的に届くのね。で、俺はそのたびに頭の中で「ああ、あのエンピツ燃やすシュウ君ね」って無意識に反芻してるわけ。エンピツ燃やしてようが燃やしてなかろうが俺の中でシュウ君と言えばエンピツ燃やすってイメージがどんどんどんどん強固に定着していくわけ。エンピツ2回しか燃やしてないはずのシュウ君が俺の頭の中ではエンピツ燃やしてなんぼのエンピツ燃やし狂いのシュウ君に完全に変貌してしまってるんだ。両手の全指の間にエンピツを挟んで腕をクロスさせてハロゲンヒーターに囲まれてニターって笑ってるシュウ君のイメージ映像が俺の中で完全に出来上がってるわけ。実際のシュウ君を見たことすらないのに。で、こうなってくると、もう嫁から聞くシュウ君のエピソードでシュウ君がエンピツ燃やしてないと物足りなくなってきちゃって。いや、物足りないも何も、シュウ君エンピツ燃やしたエピソードを俺はそんなに餌付けされてきたわけではないんだけどもう俺の中でそうなっちゃってるから。

「で、それで、井村さんとシュウ君の二人でインフルエンザの検査に行ったらしくて、先に井村さんが問診を受けていてシュウ君はその間待合室で待ってたんだけど」

「それは燃やすでしょ!そこはシュウ君絶対エンピツ燃やすでしょ!」

「いや、燃やさないから!シュウ君燃やさないから!」

みたいな感じになっちゃってるのね。もう一回こうなっちゃったら人間の脳っていうのは全然言うこと聞かないよね。嫁にも「シュウ君もうエンピツ燃やしてないから」って説き伏せられちゃって、なんでもシュウ君、2回目のエンピツ燃やした時にお父さんとしっかり話し合って次エンピツ燃やしたら家族兼用でみんなで使ってるiPad触るの禁止するって約束したから、だからもうシュウ君はエンピツ燃やさないんだって説明されても、もう手遅れだから。いや、シュウ君は全然手遅れじゃないけど、俺の脳が手遅れだから。そんな風に言われてももう、エンピツ燃やしてるシュウ君しか俺には見えないんだよ。

「お母さん、もう安心だよ。シュウ君もう燃やさないってちゃんとお父さんに言ったから」

「よかったわ、ありがとう、あなた。それで、シュウ君は?」

「ああ、ほら、向こうの部屋で……って、シュウ君!?」

っていう映像しか俺には見えないわけ。もうこうなってくると、ほとんどシュウ君は俺の中で「燃やせ!シュウ君!」っていう4コマ漫画のキャラになっちゃっててシュウ君絶対4コマ目でエンピツ燃やすみたいな感じになっちゃってるから。海水浴回とかでも、1コマ目で井村さんが「いやー、気持ちいいわねー」つって浮き輪でぷかぷかーってしてるんだけど結局4コマ目ではシュウ君が焼きそばの屋台の鉄板でエンピツ燃やしてて「って、シュウ君!?」で終わるに決まってるじゃないですか。もうシュウ君はそれ以外ありえないから。パズドラズイショコラボやる時は言うまでもなくシュウ君は炎属性ですから、シュウ君イコール水に弱いみたいなイメージすら定着しつつある。

だから、これ何の話なんだっていうと自分でももうよくわかんねえんですけど、リアリティが乏しいまんまにその存在だけを認識し続ける、意識し続ける、っていう遠いようで近い、遠いんだけどまるで他人ではいられない関係性で、脳はこういう風にバグ起こすんだーみたいな。たまにしか会わない親戚のおっちゃんが、「もう高校生か。お前、幼稚園の時、車の中でうんこ漏らしてな、あれは大変だったな」みたいな、いつまで言うんだよみたいなのあったじゃないですか。だからアレも結局同じ現象なんだよね、会う機会は少なくてもたぶん親同士の電話の会話なんかで「あいつも小3になってな」みたいな、俺の名前が出てくる機会っていうのはそれなりにあるわけじゃないですか。そのたびにおっさん「ああ、あのうんこ漏らしてたあいつも小3か」みたいな反芻を繰り返してそのおっさんの中では「ちょ、ズイショ君!?」つって4コマ目で必ずうんこ漏らすキャラになってたんだな俺は、みたいな。だから、そのおじさんにシュウ君の話を繰り返したらたぶん4コマ目でシュウ君が俺のうんこを燃やすか、俺のうんこがシュウ君の炎を鎮火するか、たぶんどっちかのそういうコンビなんだろうなみたいな感じで、おじさんは俺とシュウ君のことを記憶すると思うんだよね。以上です。

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