むかしむかしあるところにおばあさんしか抱いたことがないおじいさんとおじいさん以外に抱かれたことがないおばあさんが毎年しっかりと青色申告をしながら暮らしておりました。
ある日おじいさんは自身が所有権をもつ私有地へ芝刈に、おばあさんは同じく所有権をもつ私有地の川へ洗濯に行きました。
おばあさんが松とココヤシをブレンドした天然由来の洗剤で洗濯をしておりますと、大きな無農薬の桃がドンブラコとも言わず無音で流れてきたのでおばあさん以外の近隣住民は何一つ不快な思いをしませんでした。
「おやおや、これはいいお土産になるわ」
洗濯を終えたおばあさんは大きな桃を持って帰ることにしました。
もちろん洗濯排水は分解して自然へと帰って行きました。
フルータリアンのおじいさんとおばあさんが念のため分娩室で産婦人科医らの見守る中桃を割るとなんと出生体重1800グラムの未熟児の男の子がそれでも僕は生きたいという強い意志を感じさせる大きな泣き声と共に飛び出したではありませんか。
その泣き声を聞いたお医者さんたちが絶対に助けてやるぞと思ったのはもちろんのこと、
村中のみんながなんとかして助かって欲しいと聖夜に祈りました。
医師らの懸命な治療と村人たちの祈りの甲斐あってか男の子は無事に峠を越えました。
おじいさんとおばあさんは小さいながらもこうして生まれてきたのはきっとこの子なら乗り越えられると神様は知っておられたからなのよ、これからたくさんの試練があなたの人生で待ち受けているかもしれないけれどもそのすべては神様がきっとあなたには越えられるからお与えなさった試練なのよ、それにつけても桃から生まれたという理由でその男の子を桃太郎と名付けました。
言い忘れてましたがおじいさんとおばあさんの名字は中野です。
やがて中野桃太郎はスクスクと育ちやがて強い男の子になりました。
そしてある日桃太郎はおじいさんとおばあさんに言いました
「ぼく、鬼が島へ行って悪逆非道と巷でもっぱら話題の鬼を退治します。」
それを聞いたおじいさんとおばあさんはさっそく出立の準備を一昼夜かけて行いなぜならそれくらいした方が桃太郎の力になれるような感じがしたので鬼がいついつまでにこれこれこんな悪さをするというリミットがあるでもないのに不眠不休で準備をすすめ、
翌日さっそく桃太郎は背中に「平和」と書かれた旗を立てきび団子を腰からぶら下げて鬼が島へと出発することとなりました。
旅の途中桃太郎はイヌに出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼が島へ、略奪の限りを尽くして女子供まで皆殺しにすると風の噂に聞く鬼を退治しに行くんだ。」
「それでは、お腰につけたきび団子をひとつくださいな。お供します。」
イヌはきび団子をもらい、桃太郎のおともになりました。
今度はサルに出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼が島へ、子供のいる女を手籠めにする際にはまず子供を女の前で嬲り殺しにして気力を奪ってから事に及ぶということで大変高い知能をもつクケケケケケと鳴く哺乳類だということでお馴染みの鬼を退治しに行くんだ。」
「それでは、お腰につけたきび団子をひとつくださいな。お供します。」
こうしてサルもきび団子をもらい、桃太郎のおともになりました。
これは後にサル自身によって語られるところですがサルはかつて自分の属する群れを鬼に殺された過去を持っているとのことでした。
ただしそのような話をサルが語り始めるのはすべての鬼を滅ぼした後のことで、この時点では誰しもがサルはきび団子欲しさにお供したのだと信じて疑いませんでした。
最後に桃太郎たちはキジに出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「俺こと桃太郎はこの世の諸悪の根源であるところの鬼を退治するために鬼が島に向かっているが、その道中で出会ったイヌとサルはきび団子を渡すことで憎っくき鬼を退治するためお供をすることを自らの意思で選択した。そこでいったいお前はどうするんだ?」
こうしてイヌとサルとキジを引き連れた桃太郎は遂に鬼が島へと到着しました。
正史によるとそこで桃太郎たちが目にしたのはか弱き人間一人に対し六~十人前後で嬲り遊ぶ鬼たちの姿であったと記されている。
「しめたこれで裏どりはばっちりだ、みんなかかれ!」
桃太郎一行は数でこそ劣るものの昼夜を問わぬ一撃離脱戦法を繰り返すことで局地局地で有利を作り何より桃太郎たちが思想的にも正しかったのでやがて鬼を皆殺しにすることができました。
桃太郎とイヌとサルとキジは、鬼が貯蔵していた宝物をくるまにつんで、元気よく家に帰りました(鬼社会で流通している通貨については既にただの紙屑同然の価値しかありませんでしたので持ち帰りませんでした)。
無事に帰った桃太郎を見たおじいさんとおばあさんは大喜び、桃太郎の口から語られる噂以上の鬼の悪行とそれに果敢に挑む桃太郎の英雄譚をすべて鵜呑みにして村中の人に吹聴して回りました。
こうして桃太郎はおじいさんとおばあさんと宝を分け合い幸せに暮らし、やがて諸事情ありましてこの話はだいぶマイルドになるどころか場合によっては鬼を殺してはいないとまで言われるようになりながらいつまでもいつまでも語り継がれましたとさ。めでたしめでたし。
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参考:
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