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『カリギュラ「オレオレ詐欺選手権」』が笑って泣けて最高に面白い

いいですか皆さん、「面白い」とは何か。まぁ人それぞれでいいんですけど、僕はこの問いに対してざっくりかつカッチリとしてそれでいてビビッドなひとつの回答を用意しています。

それは「たくさん入ってて、入ってるその全部が本物」であるということです。

インド演劇なんかでもよく言いまさあな、全部入ってなあかん言うてね。ラブがあってコメディがあって人情モノでかつサスペンスで敵がいて敵を倒すべき復讐の動機があって、平たく言えばあれもそういうことなのかなと思うんですけど僕のイメージはちょっと違うくて、インドの人らのこの掟はラブのシーンがあってコメディのシーンもあってアクションのシーンもあってとかそういうことだと思うんですけど僕がどうしようもなく「面白れー、最高だー」と思うのはそういう色んな要素が一瞬に同時にいっぺんに入ってるのを見た時です。ひとつのシーンに色んな要素が全部入ってて、そしてその全てがただ要素を増やすためにねじ込まれたんじゃなしに全部本物って瞬間、そういうのに俺はどうしようもなくグッとくる。

みなさん生きててご存知でしょう。この世界ってやつは、人間ってやつは、相反するようで表裏一体のさまざまなエモーションと共に一瞬一秒を駆け抜けてさらば気づけば老いて死ぬだけ高潔はときに愚直で、誠実は一歩間違えば狂気で、哀愁は少し角度を変えれば滑稽で、愛情は刹那の先には憎悪になるかもしれず、笑顔は諦めを意味するかもしれない。様々なエモを携えて生きるエルモだよ。人間だよ。全員狂っている前提では世の中回らないので、誰も狂ってないていで誰もがマトモを演じて生きる社会とエルモだよ。でもやっぱ俺は時々思うんだ、俺たちがこの複雑怪奇な社会の片隅であるいは真ん中で、こんなにもたくさんの感情を同時に抱きしめて生きてるだなんてまるっきり狂気なんじゃないかと俺は時々思うんだ。そのことをまざまざと見せつけてくれる瞬間、数多の感情が同時に沸き起こるコンテンツに触れたその瞬間、俺はどうしようもなく「面白れー」と思ってなんだか何もかもが愛おしい気持ちになったりするもんだ。

でね、それでいうと最近見たなかでね、そういう俺の琴線にバキバキにベタベタと爪痕と手垢を残していったのがカリギュラの「オレオレ詐欺選手権」です。Amazonプライムビデオに加入しているのなら誰でも見れます。今すぐ見れます。見ろ。加入者は全員見ろ。すごいんだってホント。

概要としては至極シンプルでね、実際のオレオレ詐欺の対策研究をしている専門家監修のガチオレオレ詐欺セオリーに則って芸人の実の母親にオレオレ詐欺ドッキリを仕掛けようって内容なんですけど。いや、これだけ聞いて「何も知らないいたいけなババアをいじめて笑いものにして相変わらずテレビバラエティっていうのは低俗極まりねえな」って思う人もいるとは思いますよ。これについてはもう何も反論できないからね。それを言われたら俺だってぐうの音も出ない。ただ、面白いんだよー。うん、最低だ、最低だけど面白いっていう、『駈込み訴え』のユダがあいつは酷いやつだと愛してるを繰り返す感じにならざるをえないよね。でもなんつーのかな、掃き溜めに鶴でもないんだよね。鶴は掃き溜めにいなくたって美しい鶴は鶴だから。ただ掃き溜めでしか見られないような、なんかオリーブオイルまみれの鶴。「お前めちゃめちゃなんかゴミとか弾くじゃん、よく見たらテカっててかっこいいじゃん!」みたいな、掃き溜めでしかわからない鶴の美しさみたいなものがあるのかな、わっかんねえけど。

とにかくそういう最低の企画なんですけどね。単純に「騙すテレビ」と「騙されるババア」に二分しちゃうとそんなに面白くないんですよ。ではまずこの企画を受ける芸人ひいては芸人と母親の関係について思いを馳せてみましょう。こんな企画、まぁ駄目じゃないですか。それでも企画を受ける芸人ってどういう人なんでしょう?まぁ少なくとも芸人の側で企画として成立するなと思える母親だってことなんですよ。だってそりゃそうでしょ、番組だとか番組じゃないだとかじゃなくてやってることオレオレ詐欺ですから、息子の仕事に理解もなくて息子のことがかわいくも何ともない母親だったら何がどうなるかわかったもんじゃないから、そうじゃない母親を持つ芸人が出て来るわけですよ。そこにあるのは一定の信頼関係ですよね。母は子への愛情があって、子もそんな母からの愛情を知っている。僕はそこには子から母への愛情もあると考えるのですが、本当に愛情があったらそもそもドッキリに仕掛けないだろうという考えもあるだろうでここは一旦保留しましょう。

そんな風に名乗りを挙げた芸人のおかんがね、名乗りを挙げたのは芸人であっておかんじゃないけどね、電話でオレオレ詐欺を喰らうわけなんですけどね、詳細は伏せますがまーこれがえげつない。ババアって基本的に優しい生き物なんです。かつそれは愚かとも直結してしまうのかもしれない。子をかわいく思えばこそ、電話越しに語られる息子の状況を聞くにつけ不安は増すし、冷静ではいられなくなってきて、子を助けたいと思えばこそ相手の言うことに従ってしまう。そんなババアの優しい健気な心に漬け込んで金を騙し取ろうなんてね、オレオレ詐欺は本当にひどい犯罪ですよ。シンプルにこの番組を見た後だとオレオレ詐欺への憎悪の気持ちが増すのでそれだけでも広く多くの人に見られて欲しいなと思う

ほんで、電話で騙されようとするおかんをね、詐欺師集団が電話してるすぐ横で息子である芸人がそれを見守るんですけどね、これがまたすごいいいんですよ。愛する母親がね、この世に唯一無二の母親が、いつの間にか自分よりうんとちっちゃくなってる母親が、騙されて脅かされてなだめすかされて、動転して悩み苦しみながら右往左往してるわけです。見ていて辛くないわけがない。その悲痛な表情。しかし一方でこれはバラエティ番組であって彼らの職業は芸人ですから、おかんにツッコミも入れなくてはならんのですね。詐欺師の常套句にほいほい良いように引っかかるおかんに対して「いや、あかんやん」「めっちゃすんなり聞いてるやん」「騙されてるやん」とおかんにツッコミを入れる≒おかんを責めるようなことを言うんですね。ただ言いつつも顔は騙されておろおろしてるお母さんを見ていて悔しいやらなんやらなんですよ。ここがまたね、フィクションじゃない実際のオレオレ詐欺の構図を再現してるようで俺なんか泣けてきゃうんですよ。実際のオレオレ詐欺被害の話題なんかでもよく見かけるんですよね、「これだけオレオレ詐欺が流行ってるのにどうして引っかかってしまうんだ」って被害者である老人を家族が責めてしまうケースが少なくないんです、みたいな話。お母さんが騙されて苦しんでいるのを見るのは辛い、できることなら騙されてなんか欲しくない、だからお母さんについつい「騙されるなよ」と言ってしまう、でも悪いのはお母さんなんかではなく詐欺集団なんだ、1から10まで全部詐欺集団が悪いんだ、どれだけえげつない手段で騙してくるのかも今眼前で見えている、騙されるのはお母さんが子供を心配するがゆえなのだから本当は絶対に責めちゃいけないんだ、でも人は時として責めてしまう、自分がその場にいなくって何もできない無力感からついつい責めるべきじゃない愛する人を責めてしまうこともある、みたいなのがね、全部入ってるように見えたんです、少なくとも俺には。俺にはね!

ちょっとだけネタバレになるけどね、母親が騙される一部始終を見届けた芸人に対してカメラ回してるスタッフが「これがオレオレ詐欺なんです」って言ったら芸人がそれに対して「絶対あかん!」って言うんですけど、これがもう俺には笑うのと同時にちょっと涙が出るんですよ。「絶対あかん」と心の底から思いながら「絶対あかん」って言う人って普段なかなか見れるもんじゃないですから、ほんでなんで「絶対あかん」って思ったかについても、本当に色んなもんが一つも混じりけなしに入ってるから、ちょっとこの企画は、すっげえなと思って。

いやーだからこれはちょっと、ほんとたくさんの人に見てもらってその感想を聞きたいし読みたいんですよね、僕。たださすがにね、ちょっとこの俺のテンションのあがりようはおかしいだろってのは自分でもわかってるんですよ。僕の持論で男はみんなしょせんロリコンかマザコンのどっちかっていうのがあるんですけど、僕それでいうと絶対マザコン側の人間でババアがもともと大好物なんですよ。抱く抱かないじゃなくてね、コンテンツとしてのババアが大好き。ディズニーリゾートには興味ないんでね、僕の視聴率を取ろうと思ったら犬・ラーメン・ババアってくらいババアには目がないですから。僕が大学に入ってからはすっかり両親の実家に帰省する機会も減ってね、数年ぶりに会いに行った祖母と一緒にスーパーを回ってるとね、ババアが言うんだ、「なんか欲しいものあるか、買ってやるぞ」って。「いや、特に大丈夫だよ、ありがとう」って言っても「そうかい?遠慮しないで言いなさい」って言って最終的に「靴下あるか?靴下買おうか?」って言い出すんですよ、大都会大阪で生きる大学生がね、ど田舎の町から一歩出たら誰も名前を知らないようなスーパーでわざわざ靴下欲しがると思うかって話なんですけどね、婆ちゃんは孫になんか買ってやりたかったんだよ。何かしてやりたかったけど、靴下買ってやるくらいしかできない距離に俺がもう行っちゃったからさ、だから婆ちゃんあの時に靴下買ってやりたいなって思ったんだと思うんだよな。俺のなかでのババアの象徴っていうのがだいたいそんな感じ。聖母のように愛したい意思だけが残って、けど身体は枯れて、十全に愛して包み込む能力は失ったのにまだ愛そうとするババアって存在がすげえ愛おしいんだよね、俺の中で。だからすげえ色眼鏡は入ってるんだ、ババアがすげえ輝いて見えるメガネ。なのでそうじゃない人、ババアに関しては完全に裸眼の人の感想とかも聞きたいんだけど。でもやっぱ俺と同年代、30から40くらいの、おかんがもうすっかりババアだなみたいな年代の男?女と母親の関係は俺ちょっとわかんねえんだけど、そこらへんの年代の男性は、やっぱただのバラエティとしてじゃなくて色々「来る」ものがあるんじゃねえかなと思うんだけどどうなんだろう。「老い」について考えさせられるっていうとそれはまた違うんだ、俺の身長は伸びなくなったけど母親の背中は曲がる一方だなみたいなそういう「年月」みたいなこととかもすごい考えて、なんだろう、すごかったな。すごかった。見て。これは見れる環境の人とりあえず一回、騙されたと思って見てみて。以上です。

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