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確定申告やりたくない俺たちはなんだってできる

みなさん、こんにちわ!今年も確定申告をやりたくない季節がやってきましたね!

実際に確定申告をやる季節が始まるのは春一番がそっと僕たちの頬を撫でた後なのでまあだいたい3月の頭とかかな?早くこないかな、春一番。だって確定申告早く終わらせたいから。

いや、わかってるんだよー、さっさと終わらせた方が本当はいいことくらい、俺だってわかってるんよ。ギリギリになるほど税務署は混むし、ギリギリに出すような奴らは書類不備も多いから列が進むのも遅い。

100%なるだけ早めに確定申告終わらせた方がいい!間違いない!

でもなー、確定申告なー、やりたくないんだよー。

最近の俺が休みの日にやったこと、すごいよ。まず、ずっと「めんどくさいから」って理由で調べもしなかったPayPayを始めた、あと、大掃除してからまだ2ヶ月も経ってないのに換気扇洗って床の拭き掃除もした。ベランダの掃き掃除もした。引越しの時にめんどくさいからちゃんと読んでなかった大型家電の説明書も熟読したし、スマホから操作できるものは全てアプリを設定して遠隔で操作できるようにして落語を一つ覚えた。あとは、再来年の大河のために鎌倉幕府成立にまつわるWikipediaのページも全部読んだ。アイロンがけをYouTubeでコツを見ながら丁寧にかけることですごく上達したように思う。

これ全部、確定申告やりたくないからできたことだからね。ほらあるじゃんあの、テスト期間中に夜勉強してたら急に部屋の掃除したくなるやつ、なんなら模様替えとかしたくなるやつ。あれと原理としては同じ、あれの上位互換。

あー、確定申告やりたくない確定申告やりたくない確定申告やりたくない。山よりも高く確定申告したくない。海よりも深く確定申告したくない。

逆にもう確定申告以外ならなんでもできるような気がしてきた。

あ!宅建取ろうかな?確定申告以外ならなんでもできるから宅建取れる気がしてきた。

あー、確定申告したくない!

近所の小学校の廊下のワックス掛けを無償でしたい!こんなに近所の小学校の廊下のワックス掛けしたくなったの人生で初めて!子供たちの笑顔が見たい!地域一帯の通学路がちゃんと車道と歩道のあいだにガードレールがついてる道になってるかどうかくまなくチェックしたい。俺は子供たちの笑顔を守りたい。

神様仏様ー!村の者どもの命はどうなってもいい、だからどうか確定申告だけは〜〜〜!!!

いや、だめだだめだだめだ確定申告しなくちゃ。あーでも確定申告のことを考えれば考えるほど雌雄同体の生物が深海にはたくさんいるんじゃないかってことが気になって気になって仕方ない。今すぐ図書館に行って調べたい。光の届かない深海で目の退化した雌雄同体の生物たちがどういう風に繁殖しているのかを調べてそれをみんなに教えたい。それが俺の生まれてきた使命なのではないだろうか。

寿限無寿限無ごこうのすりきれ確定申告したくない。

猿よ、貴様今なんと申した?ここに一夜にして城を建てるとな!?

ははっ、この秀吉めにお任せください、一夜で城を建てるなど確定申告に比べれば容易いことにございます!

おばさん、僕を仲間に入れてくれないか?シータを助けたいし確定申告したくないんだ。

あー、廃ビルを爆破したい!子供が勝手に中に入って遊んじゃうと危ないから廃ビルを爆破解体したい。すべての魔法少女を救いたい。確定申告したくない。

エジソンは確定申告をしたくない一心で寝る間を惜しんでフィラメントの開発を続けた。ナイチンゲールも確定申告したくない一心で戦場病院で負傷兵たちの看護を続けた。確定申告したくない。

確定申告?僕は嫌だ!

確定申告が最近話題ですが確定申告したくないので確定申告についてインターネットで調べてみました。

確定申告は会社員として支給される給与以外の所得がある人がしなくてはならないもののようですが、詳しいことはよくわかりませんでした。

いかがでしたか?確定申告したくない。

すべての人に墓を掘る。俺たち7人で穴を掘る。確定申告したくない。

おじいさん、おばあさん、僕、確定申告したくないから悪い鬼をこらしめる旅に出るよ!

それを聞いた確定申告したくないおじいさんはしなくてもいい夜なべをして、それはそれは立派な日本一ののぼりを作りました。確定申告をしたくないおばあさんは夜なべをして山ほどのきびだんごを作りました。

こうして確定申告をしたくない桃太郎は鬼退治に出かけ、確定申告をしたくないおじいさんとおばあさんは絶対に抜けないカブを探す旅に出ました。

常識とは年度末までに集めた確定申告したくない気持ちのコレクションである。

確定申告したくない。確定申告したくない。

今夜、君に届けたい歌があるんだ。確定申告したくない。

僕が僕であるために確定申告したくない。

ララバイララバイおやすみよ、確定申告したくない。

確定申告とは言うけれど何を確定するのだろ?

ウィアーザワールド、ウィアーザ確定申告したくない。

ティービーワンダーも確定申告したくない。

あの子を解き放て!あの子は人間だ!

黙れ小僧!確定申告したくない。

 

確定申告をしたくない気持ちがまずそこにあり、そしてそこに文明が生まれた。

人は火を操ることを覚え、やがて農耕が起こり、人類はこの星に栄え始めた。すべては確定申告をしたくないという人間の強い意志の賜物だ。人間は地球上のあらゆる生命の中でも唯一の確定申告をしたくない、社会的な動物だ。僕のお父さんもおじいちゃんもそのまたおじいちゃんもみんなみんな確定申告したくなかった。だから今僕はここにいる。ご先祖様、ありがとう、俺、やっぱり確定申告したくないよ。今はまだ、そうさせておくれよ。俺は確定申告したくない。いつかはするよ、いつかはするけどそれは今日じゃない。確定申告したくない。お父さんもおじいちゃんもきっとそうだったように、俺もギリギリまで確定申告したくない。その気持ちに気づかせてくれるために、深海魚の目はこんなに退化したんだね。

ありがとう、仙堂、まだ慌てるような時間じゃない。

人生に遅すぎることなんかないと教えてくれた黒柳徹子もありがとう、確定申告するのにも遅すぎることなんかない。だから今日はしない。ありがとう、黒柳徹子

 

そうして気づくと俺は、公園のベンチに一人、項垂れたまま座り込んでいた。空は青く澄み、晴れ渡っていた。太陽の暖かな日差しを一身に受けた俺の身体は思いの外に温かく、しかしやはり2月の冷たい風が俺の前髪を揺らすとどうにもくすぐったく、俺は照れ臭そうにニット帽を被り直し前髪を隠した。

公園ではさまざまな人たちが笑い合い駆け回り転がり回り、日曜の午後の時間を陽気に過ごしている。バドミントンをする親子、レトリバーにフリスビーを捕まえにやらせる若い夫婦、池の鴨を眺める老夫婦。この温かな風景もすべて私たちの税金によって賄われています。

納税は国民の義務です。それによって私たちの社会はこうして今日も守られているのです。ありがとう、この穏やかな瞬間を今日もありがとう。だから俺、納税するよ。義務を果たしたくないわけじゃない。だけどそれは今日じゃない。確定申告したくない。確定申告めんどくさい。確定申告のことを考えると、俺はそう、最近運動不足だしスイミングとか始めようかなと思うばかりなのだ。

以上です。

弱者へ提案、弱者から提案

あのー、例えばフェミニズムとかの昨今の話にはなるんですけど。

最近でもなんか色々あるねー、広告素材上等の胸の大きい女性が云々とか、医大点数操作が云々とか、AMっていうメディアが「女が2000万貯金しようと思ったらおっさんに奢ってもらえ」みたいなおっさんが書いた記事を公開して云々とか、まあいつも話題がてんこもりなので忙しそうだよね。

で、なんか僕もいい加減、いち消費者としては、そういう話題でツイッターで盛り上がってるやつらの床屋談義にはもううんざりだなーと思うところがあって、最近はあんまり見ないようにしてるんだけど。

それでもたまには見かけちゃうからさ、見ていて思うところがあったから筆をとったんだよねー。

言いたいことは大きく二つかな?二つくらいあってね。

まず、一つが、もっとみんな身の丈にあった範囲で差別に向き合いませんか?ってこと。

「身の丈」自体がまあまあNGワードなのは理解しててわざと言ってるんだけどさ。

たとえばSNSなんかではさ、あるジャンルの専門家の著名人がさ、自分の専門外の話題に言及してさ、馬鹿なことを言っちゃってさ、それで怒られがたくさん発生して、「やっぱ自分の専門外に出ると、どいつもこいつもダメだな、全然わかってないな」って現象が発生してる。

この感覚をもっと大事にしようよ、って思うんだよね。

医学部の点数操作の問題なんかはさ、まあ最悪だよね。

アレはハッキリと詐欺だよ。

せめてさ、男と女で定員数をこんな分配にしてますよって言っとけよ、と思う。女が医者になるための道を切り開く大変さは、男が医者になるための道を切り開くそれと比べると圧倒的に大変ですよ。とせめて言っとけよと思う。それ言わないのは受験費詐欺だから。ふざけんなよと思う。

そこは叩いていいと思うんだけど、それ以上のことはわからない。

実際に、医学部に受かった女性がどういうキャリア形成をするのかもわからないし、医学部に受かって男性の労働環境もわからない。

俺は専門家ではないからわからないんだよね。そこにある種の合理性があるのかないのかもわからない。

わからないことに、自分の視点で言及することがいいのかどうかもわからない。いや、あんまりよくないと思ってないとこんな文章書かないんだろうけど。

僕はそう考えるんだけど、世の中は、みなさんは、そういう話をするのに躍起だな、とは思う。男も、女も。

 

もう一つの話は、もう少しみんな、自分の強さを信じませんか?って話です。

多様性の話は、多い昨今です。

ただそこにあるのが、弱者としての多様性であることばかりなのが、僕には気になるところです。

世の中は非情にくそったれで、どうしようもない。それ自体は僕も感じているところです。

しかし、そんなことに絶望はしつつも、僕は希望を信じたいと考える人間です。

人間はこんなにくそったれじゃないはずだ、もっとまともな、隣人を愛せる生き物のはずだ、そう考える人間です。

そりゃあ僕の理想と、現実社会の乖離は、遠くに小さく見える山のように大きい。僕は、あの遠くに小さく見える山を登りたい。あの山の頂上に登ることを考えながら、生きていきたい。

そこに登るのは僕じゃなくてもいい。誰か一人がそこに到達してしまえさえすれば、なんだ登れるじゃんとどんどん登ることを僕は知っている。歴史が証明している。端的にいえば僕はその礎になりたいのだろう。

同じように皆が考えているだろうかと考えると、そうではなさそうなことは僕はとうに知っている。

誰も、自分の強さを信じてはいない。自分が礎になるとは思っていない。礎に立たせてもらう人以外には自分はなれないし、誰かに礎になってほしいとしか思っていない。

そう確信する僕は、この点において僕ははっきりと絶望している。

 

弱者としての多様性ばかりじゃなくてさ、強者としての多様性をみんなもっと信じられないかなと絶望しています。

お前らみんな俺含め、みんな虫けら並みに生きてるじゃねえか。てめえの領分をてめえで守ってなんだかんだ生きながらえてるじゃねえか。そこを卑下するなよ、て思う。

生きながらえてるその強さをかなぐり捨ててまで、ただの弱者であり続けるのかよ。

その強さこそがプロフェッショナルで、自分の持ち場を自分の言葉で語ることこそが、お前のやることじゃないのかよ、と思う。

僕はー、大学はー、文学部でー、ぬるぬると勉強をさせていただいたのでー、社会の役には立ちません。が、俺には俺の役目がある。そう思ってやっている。お前にも役目がある。誰にでもある。

医学部なんて知ったこっちゃねえ。知ったこっちゃねえことねえが、俺はその領域において門外漢だ。弁えたい。門外漢の医学部のことに怒るよりかは、文学部の俺が怒るべき俺の身の丈にあった範囲で怒りたい。

それは、俺と同じ心持ちを持った医学部の奴らが怒る、ほんの一助になるはずだ。

そういう風に、どうかひとつ考えることにはならないもんか。隣人のことを我が事のように怒るよりも、隣人も怒りやすいように我が事を我が事として怒るようになれないものか。

俺は、社会は変わらなくてはならないと考える人間がこれほど増えているにも関わらず、遅々として変わらない社会に着々と絶望している。

以上です。

他人のゲイ風俗デビュー見届けてたらおしっこ漏らした話

あのー、そんなもともと面識や交流があるわけでもないTwitterでなんとなく相互フォローになってた人がタイムラインで風俗に一緒についてきてくれる人を募集してますって言ってるのを見かけて直ちに「ふーん、オモシレーやつ」って乙女ゲーの攻略対象キャラみたいな感想を持ったのでピンポン越後製菓!の速さでリプライして名乗りを上げた。組み合わせるとあなたの頭には俺様キャラの高橋英樹が壁ドンしてくる映像が想起されることでしょう。

それで詳しくはDMでってことで、初めてその人とDMして日程と時間と集合場所を恙無く決めてじゃあ明日その時間で予約とるんでまた連絡しますねって感じで話はまとまって、報酬も出せる範囲で出しますと言ってくれたんだけど「いや、僕が面白いと思って好きでやってるんで報酬はいいです、事前検閲もちろんお願いするのでブログのネタにしたい時だけ相談させてね」って報酬を固辞して、じゃあそんな感じでとなったんだけど、さすがに気になったので「初めての風俗で不安なのはわかるけど、ここまでするなんてえらい警戒してますね?そんなやばいプレイのお店なんですか?」みたいなことを聞いたら「ゲイ風俗なんです」と教えてくれたので、僕は「なるほど、じゃあやっぱ缶ビール一本奢ってください」と伝えた。ただで引き受けるとは本質には責任を持つ気はないということだ。対価を受け取るということは「俺は自分に与えられた責務を全うするよ」ということだ。ふつうの男性向けに女性がサービスする風俗のデビューの見届けなら冷やかしで十分だと考えていたが、ゲイ風俗となれば、なるほど不安もあるだろう、俺は彼が安心してデビューでいるようしっかりせねばいかんなという意味での「じゃあ缶ビール一本」なのだが、途中の文脈全部すっ飛ばしてるので依頼人はさぞ「何がじゃあなんだよクソが」と思ったことだろう。

当日の朝に依頼人に今日はじゃあよろしくみたいなDMをすると「じゃあまた約束の時間になったら連絡ください」って言われたので、僕的にはわりと余裕を持って1時間前には集合場所に着いちゃうなーみたいな感じだったので向こうが誘ってくれたら一杯お酒でも引っ掛けたいなーでも向こうからしたら大事なイベントの直前だしそんなのめんどくさいかーとかは思っていたので、少し残念だけどやっぱりそうだよなーと思い了解ちゃんですと伝えたのだった。

そして結局他に寄りたい用事もないので1時間ほど前に現地に到着したらそこそこの飲み屋街だったもんだからとりあえずふらっと小粋な居酒屋に飛び込んでビールを三杯ほど飲んで刺身をつまみ時間を潰して、集合時間と相成った。依頼人にDMで今どこどこにいますと連絡すると、すぐに依頼人がやってきて「どうも、ズイショです」と自己紹介。15分後から1時間半のコースを予約していますというので、もし連絡がなかった場合どうするのか警察に連絡するのか場所はどこなのか、GPSで依頼者の位置が僕にもわかるようにしてた諸々段取りをつけて「わかりました、じゃあそのあいだどっかで時間を潰しときゃいいんですね、無事に終わりましたって連絡が来たらそのまま各自解散でいいですかね?」って言うと「報酬はどうすれば?」と律儀に依頼者は言ってくれるので「今買ってもらいましょうか?事が終わった後にもっかい僕と会うのもだるいでしょ?」とそこらへんのコンビニに入ってそそくさとプレミアムモルツのロング缶を買ってもらって、じゃあ楽しんできて下さい!ここまでわずか5分。我ながらスムーズな無駄のない段取りだ。後は彼のゲイ風俗デビューの成功を願うばかりである。

さて、ここから僕は1時間半時間を潰さなくてはならない。さっそくゴチになったプレモルの栓をぷしゅっと開けてそれを飲み飲み心地よい酔いの中を僕は歩く。プレモルを飲み干したあたりでちょうどいい感じのラーメン屋を見つけたのでふらっと入店。焦がしにんにくの風味が利いた黒醤油ラーメンと生ビールを一杯頼み、舌鼓を打つ。すぐに完食。美味しかったですーとお礼を言いながら会計を済ませ退店。まだ1時間近く待たなくちゃならないなー、三軒目はどこで飲もうかなーとふらふら歩いていたその時である!

お待ちかね!尿意である!みんなお待ちかねの猛烈な尿意である!このテキストにおいては忠臣蔵でいう討ち入りシーンくらいクライマックスに突入するその幕開けを告げる螺貝のごとき尿意が俺を襲う!!

やっと来たな!!この時を待ってここまで読み進めたんだもんな、なあ、犬!!!!

 

犬「わん!!!!!!!!!」

 

お気づきだろうか、みなさん、既にこの時私はビールを五本も飲んでいる。そのうえ世の中的にはこれは叙述トリックと呼ぶらしいんですけど、そのあいだトイレに行った描写が一切ない。つまり僕の膀胱はすでにパンパンだったのです!!

せやかて工藤?ここは大阪の繁華街やで?トイレなんてそこらへんどこにでもあるんちゃうか?その証拠にズイショは、ふらっと見つけたコンビニでビールを買っとるやないか?そこで用を足したら終いやないか?33歳のおっさんがこの流れでおしっこを漏らすなんて展開はさすがに無理があるで、なあ?せやかて工藤?

山を越え谷を越え僕らの町にやってきた方ではない服部くんはそう考えますが、そうが問屋は卸さない。時間は既に21時を回っている。繁華街のコンビニはトイレを貸してくれないしイートインコーナーも閉鎖しているのであった!!

迫りくる尿意に怯えながらそそくさとコンビニからコンビニへともじもじと点々と足早な僕、片手にスマホを握りしめながらトイレが開放されていないことを確認しては次の最寄りのコンビニをGoogleマップで確認し内股で歩みを進める僕、しかし何軒コンビニを巡れども巡れどもトイレは一切開放されていないのである!!

とうに最初に尿意を感じてから15分以上が経過している。まずい、これは非常にまずい。と、その時である、大阪地下鉄の入り口であることを示すあのマークが爛々と輝くのを僕は遠巻きに発見した。しめた!地下鉄のトイレなら封鎖されているはずがない!俺の脳にかすかに安堵の燈が灯った。そしてその安堵の電気信号が刹那に膀胱にも飛んだ。

ダメダメダメダメだって!膀胱!お前はまだ安堵しちゃダメだって!家に帰るまでが遠足だから!お前が安堵していい瞬間は、トイレで用を足したその後だから!今このタイミングで安堵するのは絶対早いから!

間違った電気信号により更にアゲアゲにアガってくる尿意と戦いながら僕は出来る限りのすばやさで地下鉄の入り口を目指す。腹筋鍛えときゃよかった〜、もっと腹筋鍛えときゃよかった〜、腹筋で尿意を抑え込めるのかどうかはよくわからんが、僕はもう今の自分をこの状況に追い詰めている過去の自分の敗因を探すことしかできなくなってる。目指してるけど間に合わない予感をびんびんに感じながら、せめて前のめりに死のうと地下鉄を目指しているにすぎない。

着いた!地下鉄だ!もう無理だけど!ここがトイレの入り口ならいいけどそうじゃないからもう無理!着いたことで膀胱がもう一段階間違った安堵をしてるし!ちょっと待って!ちょっと待って!今この感じ、BUMP OF CHICKENの『K』っぽくない!?

 

犬「わん!!!!!」

 

満身創痍の身体を引きずりながら僕は改札中のトイレを目指す、階段長っげ!長っげ階段!長い長い階段を抜けて、改札をICカードで潜る!よっしゃ、もう目前だ、トイレの入り口が見えたぞ!!もうこの時点でドモホルンリンクルだったら丁寧じゃないって怒られる勢いで漏れ始めてるけど!!じゃあなんのよっしゃなんだよ!!

まあ、ゲームのルール変わってるからねこの時点で。おしっこを漏らさずにトイレに辿り着くってゲームは終わったけど、まだ終わってないから。「できるだけトイレに出す」ってルールに変わってるから。花を任意の場所に咲かせるゲームは終わって、花はもう咲いちゃったからここからはいかに晴れた空に種を撒けるかのゲームにルール変わってるから。まだ俺負けてねえから。たしかにね、ドモホルンリンクルとしては勢いありすぎるよ、でもまだ俺心折れてないから。たまに温泉旅館で出くわす信じられないくらい水圧の弱いシャワーくらいの勢いで漏らすに留めてるから、「留めてる」の定義には諸説ある。

歩く歩くそれでも僕は歩く。たどり着いた!トイレだ!ハレルヤ、チャックを開けたなら、残りの(のーこーりーの)用を足そ。はい、勝った!勝った!俺の勝ち!

んー、7割くらいかな。

7割くらいは漏れたかな。

ビールを2.5リットルくらい飲んで限界まで溜め込んだ尿意の7割だから、んーわかんないけどまー、人間が一晩寝てるあいだにかく汗の量がコップ一杯分って言うから、それの5倍か6倍くらいかなー?中学生が5,6人くらい雑魚寝した時に一晩でかく汗の量って考えたら、まーそんな大したことじゃないかなー?いや、無理あるなー。

幸いにもジーパンだったからさ、結構吸ってくれて公共の施設を汚さずにジーパン越しに伝ってくれたしさ。いや、頑張ったよ俺。公共の施設汚してないもん。人に迷惑かけてないもん。パンツからジーパンからぐしょぐしょだし、今かかと弾ませこの指止まれってやったら靴ががっぽがっぽ言うけど、うん、頑張った頑張った。

諦めなかったのが偉いよ俺は、まあ確かに今はジーパンからパンツから靴からぐしょぐしょだけどさ、立ちションはしなかったもん。だからアレだよね、メロスは最終的には全裸だったけど約束は守ったもんね。あれあれ、あんな感じ。セリヌンティウスに頬を張ってもらってもいいけど、約束は守ったから。確かにまあ飲み放題ドリンクサーバーの身体に悪そうな原液が出るターンくらいの勢いでずっとお漏らししながら改札からトイレまでの間を歩いてそのあいだずーっとお漏らししてたのは認めるよ、それは認めるよ。けど、辿り着いたもん。俺、立派だよ立派。よくやったよ、俺。はい。

 

ところで皆さんお気づきですか?

この話、ゲイ風俗の要素、一っっっっ切関係ねえの!!!!

この話、ただ俺がお漏らししただけの話であって、この話に他人のゲイ風俗デビューに立ち会うって要素、一切必要ないんですよ。仗助が子供の頃高熱出した時に助けてくれたリーゼントの不良くらい、別になくてもいいわけ。

どうしてこうなったのよ?どうしてこうなっちゃったのよ!?

ごめんな〜、ごめんな、犬〜〜!!釣りタイトルだったよな〜〜、期待したよな〜〜??ゲイ風俗に行く人がどういう人なのか、そういう普段は聞けない面白い話が聞かれると思ったよな〜〜??でもないんだよ、俺にはそんな話はないんだよ。

わかるだろ、俺はそうやって他人に踏み込まないんだ。他人を不用意にネタにしてはいけないから、その人の人生の大事な1ページを、俺の節操のないペンで汚してはいけないから、俺はそういうことしない。そりゃ本音を言えば取材だってしたかったよ?今から風俗行くけど、どんな感じですか?とか聞いたら面白そうじゃん。聞いた方が俺はもっと面白くこの話を書けるよ。でも俺は、しないんだ。俺が面白く喋るために他人を利用したくはないから。それが出来てりゃもっとブロガー出発の一角の人間、ライターとして仕事がたくさん来たりとかさ、単著を出したりとかさ、そういうことができてたんじゃないかと思うよ。でも俺はそれが出来なかったから、結局おしっこを漏らした話しか書けない、そういうわけですよ。

ブロガーとしての俺に足りなかったのは、他人の人生に踏み込み、世に他人の人生を伝えようとするジャーナリズムだよ。ジャーナリズムがないから、俺はおしっこを漏らした。違うか?工藤?

 

幸いにも(お前漏らした後に幸いにも言うの2回目やな)丈の長いコートを着てたので、普通に歩いている分には、おしっこの漏れたジーパンはあまり目立たなかった。改札を出て、ぐっしょりと濡れたジーパンを引きずり、再び繁華街に身を投げ出した俺がそこにいた。冬の冷たい空気は俺のジーパンに染みた尿と相まって、俺の内腿からぐんぐんと体温を奪っていく。それでも俺には使命がある。ゲイ風俗に行った依頼者の無事を見届けるという使命である。

走馬灯のように、同時期にブログを書いていて、そしてライターとして、はたまた単著作家として売れていった奴らのツイッターアイコンが頭を過ぎる。どうして俺は彼らみたいになれなかったのだろう。それは俺にジャーナリズムがなかったからだ、だから俺はおしっこを漏らした話くらいしか書くことがなく、だから俺は売れないのだ。重いジーパンを引きずりながら、最早居酒屋に入店など許されないステータスになった体を少しでも温めようと身を縮み上がらせながら、新月の夜を歩く。ああ、月すらない。月すらない空の下に俺がある。血管を縮み上がらせながら、俺は歩くのであった。

 

やがて、依頼人からDMで連絡があった。無事に退店したそうだ。

僕は、それを嬉しく思い、言葉少なにじゃあ帰りますとだけ伝え、それへの相手の返答には👍の絵文字を返し、絶対に座ってはいけない大阪メトロへと一人吸い込まれていった。

ジャーナリズムとは何か?おしっこを漏らすとは何か?ブログとは何か?あらゆる難題を抱えたまま、今年も僕は生きていくのであった。

以上です。