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畳の広間でおちんちんちょん切られる夢を見ました

 掲題の通り、夢の話になります。夢の話なんて誰も興味ないことなぞ重々承知しておりますがあまりにインパクトのある夢だったのでシェアさせて頂きます。正確には僕はおちんちんをちょん切られる寸前で目を覚ましたのですが、どうも僕には昨夜同じ時間に同じ夢を見た人がたくさんいたのではないかという予感がしてならないのです。もし同じ夢を見たという人がいたらご連絡お待ちしております。

 

 気付くと僕は、列に並んでいた。

 そこは恐らく高くともせいぜいが三階建て程度であろう木造建築の階段の踊り場。僕の夢はそこからスタートしたので建物の外観は知る由もないが古い学校みたいなものを僕はイメージしたので貴方もそのような建物のそのような階段の踊り場をイメージしてくれれば良い。列に並んでいるのはすべて男で、この行列の進行方向はどうやら上の階へと向かっているらしい。その列の中に僕もいて、その時の僕はちょうど真ん中の踊り場あたりまで進んでいて、踊り場には窓があって外を覗き見ると、鬱蒼とした森が広がるばかりであったがどうやらここが一階と二階の間であることは窺い知れる。

 僕はここにおちんちんを切ってもらいに来た。夢とはそういうものだけれども、どうやら僕はその前提を当たり前に了解している。テレビでバナナナマンの日村が「おちんちんを切ってよかった」みたいな話をしていたのを見かけた記憶もある。これは、僕が覚醒しているこっち側まで持ち出せた夢の記憶がここからだっただけでこれより手前の夢のパートでおちんちんちょん切る素晴らしさについて語る日村を実際に夢で見ていたのか、単にそのような記憶を持った状態で夢がスタートしただけなのか僕には分かりかねる。

 おちんちんちょん切られるの怖いなぁヤダなぁ、でも切らなくちゃダメなんだから仕方ないよなぁと思いながら僕は遅々として進まない列の中でドギマギしている。列の進み方は、急にグッと進む時と全く進まない時が交互にやってきて、それはテイクアウトの飲食店の行列の進み方というよりはテーマパークのアトラクションの行列の進み方に近かった。

 それからしばらくしてやっと僕は階段を抜けて二階部分と思われるところに到達した。二階に立って最初に目にしたのはこじんまりとした廊下で、まだ行列は続いているようで僕はうんざりしたが、行列の行く先を目でなぞると終点と思しき引き戸が見えたので、既に終点が見えるところまで来ているのであればもうすぐだなと思い僕はほっとした。しかし、それはつまり僕はもうすぐおちんちんをちょん切られるということなのでほっとしている場合ではなかった。

 それからまた落ち着かない様子で列が進むのを僕は待っていると、クリップボードを抱えた白衣の老婆が行列の向こうからやってきた。もうお前干し柿のメタファーじゃなかったらなんなんだよというくらいシワクチャでヨボヨボの薄気味悪いババアだった。ババアは列に並ぶ男どもに順々に何かを質問している様子だった。やがて僕がババアに話しかけられる番になった。

「はい、じゃああなた名前は?」

 接客業のババア特有の、流れ作業に小慣れ過ぎて人間が人間であることを半分以上忘れかけてるババアのテンションで、ババアは僕に尋ねた。

「高橋です」

 僕は普通に答える。

「はい、高橋さんね、じゃあこれ」

 ババアは手元のクリップボードに挟んだ何らかの書類にペンを走らせた後、僕に名刺サイズの紙切れを一枚渡した。触感は子供がクレヨンでお絵かきする時なんかに使う画用紙のそれだった。というか画用紙だろう。そこにはマジックで大きく「E」とだけ書かれていた。

 それからまた僕はおちんちんをちょん切られる恐怖を漠然と感じながら待ちあえいでいた。おちんちんをちょん切られる恐怖は大変なものであったが、木造建築のこのボロボロの建物のどこかで今も誰かのおちんちんがちょん切られているわけで、それにしては僕の耳に入ってくるのは人が密集しているゆえにどこからともなく起こるガヤガヤとした喧騒ばかりで悲鳴ひとつも聞こえない。なので、おちんちんをちょん切られるにしても何かしら痛みを伴わない方法でちょん切られるには違いないのだということが推察され、それだけがわずかばかりの慰めであった。

 そうして僕は、遂に行列の終点、引き戸の前に辿り着いた。そこには白衣のババアがいて、それはさっき僕に「E」のカードを手渡したババアとは別のババアだったのだけれども、かなり似た属性のババアで、エルフ族、ドワーフ族、ババア族でいうところの同じババア族のババアなんだなと素直に思える程度にはさっきのババアと似通ったババアだった。

「はい、次の人カード見せて」

 ババアが言うので僕が「E」のカードを見せる。

「はい、Eね、じゃあEのところ行ってね」

 言うとババアは引き戸を開けて中に通してくれた。

 そこは、壁や天井こそは表の廊下と変わらずいかにもボロボロな木造建築であったが床には真新しい色の畳が敷き詰められた大きな広間だった。あの旅館の飯食うところみたいな。畳のへりも一方向に統一されていて、それが余計にだだっぴろい印象を与える。実際にもかなり広い。

 そして、そこには結構な間隔を空けながらぽつんぽつんと会議室にあるような長机が一台ずつ、鴨川のカップルのように配置されていた。それぞれの長机の横には点滴スタンドみたいなものが立てられていて、そこにA3くらいのサイズの画用紙に手書きでA、B、C、D、E、Fと順々に書かれている。なるほど、僕はEの長机のところに行けばいいのだなと察した。

 Eの長机のところに近づくと、受付っぽい配置でまたババア族の白衣がパイプ椅子に掛けていた。手元の書類に目を落としていたババアは下からねめつける様に僕を見て言う。

「はい、エザキさんですね?」

「いえ、高橋です」

「あれ、タカハシさん? ちょっと待ってくださいね」

 ババアは首を傾げながら再び書類に目を落とす。

 受付みたいなババアが陣取る長机の向こうに目をやると、同じくババア族であろうと思われるシワクチャのクソジジイがパイプ椅子に座って、高枝切り鋏のハサミの方を上にして写真に撮られる軍曹の軍刀みたいに胸の前に抱えて待機している。更にその少し奥には同じようにパイプ椅子が一脚ぽつんと置かれていて、そこには今は誰も座っていないが、そのパイプ椅子の足元の畳には血だまりができている。

 ああ、やだなぁ。俺は今からあそこでおちんちんをちょん切られるのか。僕は憂鬱な気分になった。

「あ、えーと、タカハシさんですね? そうですね、タカハシさん」

 ババアが僕に言った。

 ババアの手元にあった書類を僕は視界の端で捉えた。そして目を剥いた。

 その書類は、ファミレスの待合席にある予約したい人が名前を書き込むシートみたいな簡素なもので、左端のマスに通し番号が書かれていて、その横の長い行に名前が書き込まれているだけだった。びっしりと書き込まれたシートの真ん中あたりに「24/タカハシ」と書かれているのが見えて、その上には「23/エザキ」と書かれていて、ババアはその「23/エザキ」の上に二重線を引いて取り消した風にした。

 おいおい、管理ずさんすぎるだろ。フルネームですらなくてカタカナ名字だけで管理してるのかよ。24っていう数字も若すぎるだろ。それ絶対ちゃんと管理できないだろ。ちゃんと俺のおちんちん返ってくるんだろうな? そもそも切り取ったおちんちんを返却してくれるシステムなのかも僕にはわからないのだけど、仮にそうだとするならばお前らそんな雑な管理方法でちゃんと俺のちょん切ったおちんちんを俺に返すことできるのか? 赤子の取り違えみたいなそういうミス絶対起こるだろ。わかるんだからなこっちは、俺のおちんちんじゃなかったらすぐ気付くんだから絶対そういうクレームになるぞ。

 僕は急に不安になってくる。いや、それまでも大層不安ではあったのだけれども。どうもこの施設、色々ずさんすぎる。こんなことを木造建築の建物でやるのがそもそもおかしいし、畳は新品かもしれないけれども、おちんちんを切る際に必要となる清潔感っていうのはそういうことじゃねえ。高枝切り鋏もおかしい。そもそも俺はなんでおちんちんをちょん切りに来たのかわからなくなってきた。でも、俺はここにおちんちんをちょん切りに来たのだからおちんちんをちょん切らなくてはならない。おちんちんちょん切りたい気持ちはあるのだけれども、ここの設備ではどうしても不安が拭えない。このババア族らには設備という言葉すらももったいない。

 そんな僕の内心をよそにババアは淡々とした調子で「じゃあ、タカハシさん、向こうに掛けてズボン降ろしてくださいね」などと言う。なぜかその言葉に抵抗できない僕は長机を回り込んで血だまりの中のパイプ椅子に腰を下ろす。おかしい。これは絶対におかしい。思いながら僕はベルトに手をかける。靴下が血に染みていくのを足の裏で感じる。靴をいつ脱いだのかは覚えていない。もしかしたら板張りの廊下や階段の時点で僕は既に靴を履いていなかったのかもしれない。一度立ち上がり、ズボンとパンツを同時に降ろして再度着席する。パイプ椅子の革張りの冷たさをお尻で感じる。高枝切り鋏のジジイがゆっくりと立ち上がる。なんか喋れジジイ。ジジイは何も喋らずゆっくりと近づいてくる。柄の一番端のとこを持ってジャキジャキと鋏を鳴らしながら近づいてくる。せめて、柄の端じゃなくて鋏に近いところを持ってくれ。手元が狂う的なそういうのあるだろ。鋏から離れていれば離れているほど手元の微細なブレが大きなブレになるんだ。学校で習ったぞ力のモーメントっていうんだろ。だから頼むジジイ、鋏に近いところを持ってくれ。そんな俺の願いも空しく、ジジイは高枝切り鋏を逆手に持ちかえ、依然として柄の一番端を持った状態で両腕を目一杯に高々と掲げ、下を向いた刃が開いた鋏を僕のおちんちんにそっとあてがう。ジジイ、なぜそんなに頑ななんだ。頑なに力のモーメントを最大化するのはなぜなんだ。パイプ椅子の革張りは僕のお尻で幾分温まってきた。だからより一層の刃の冷たさを僕はおちんちんで感じている。

 

 そこでアラームが鳴って目が覚めた。僕はおちんちんをちょん切られなくて良かったと思った。

 色々考えたんですが、僕が僕の脳でこんな夢を見るのはおかしいと思うんです。この夢は僕の意思で見た夢ではないように思えるのです。誰かが何かが僕に見させた夢だと思うのです。そして、あの行列に並んでいた他の男たちも、この世のどこかにいる誰かであったように僕には感じられるのです。2015年12月30日未明、あの畳の広間でおちんおちんをちょん切られる夢を見た人、もしこの文章を読んだら絶対に僕にメールしてください。特にエザキさん。よろしくお願いします。以上です。