雑文です。入院中なので単行本が手元にないのですげえテキトーです。テキトーに認識不足を指摘しまくるなり叩き台にしてよりそれっぽい論理を組み立てるなり何かしらのお役に立ててください。
みんな大好きハンターハンター、発端はこんなツイートをさっき見かけた。
今ふと思ったんですけど、キメラアント編、女王蟻に食べられた人間が女王蟻から産み直されることで生まれ変わる設定じゃないすか。
— 城伊景季 (@white_cake) 2017年7月22日
カイトってなんで生まれ変わってるの? カイトの体はネフェルピトーが使ってるから、女王蟻食べてないやん……?
これ見てね、僕すげえ普通に「え?」って思ったんですよ。
というのもね、僕、なんとなく漠然となんですけど「キメラアントの女王に捕食された人間は、前世の記憶を引き継いだままキメラアントの兵隊として生まれ変わる」って設定を全然受け入れてなかったんですよ。結果として、そういう感じになってるように見えるけど、それは「たまたま」そうなってるだけで、それが「キメラアントの生態」だとは思ってなかったんですよね。
で、じゃあ自分はどういうつもりでいたんだと考えてみたんですが、どうやら僕はキメラアントがキメラアントに捕食された人間の記憶を持っているのは単に「輪廻転生」という概念がハンターハンターという世界観に適用されているからじゃないかと思ってるようでした。なぜそう思うのかをなんとなく書きます。
まず、「キメラアントの能力ではないのではないか」って思う理由の一つがやっぱカイトですよね。カイトは恐らくですが、女王蟻には捕食されてません。苦しい案として「レア物なので実は一部献上してたのでは?」みたいなのがありますが、一部でも記憶が継承されるの?と考えると若干苦しい。
あとこれはすごい推測なんですが、みんなが「記憶の継承がなされるのはキメラアントの特性」とすごい無邪気に信じている潜在的な理由として「キメラアントたちは脳をおいしいおいしい言うて食べる」ってのがあると思います。僕がキメラアントの孫でキメラアントのおばあちゃんと二人でキメラアント用のフードコートで人間をそれぞれ一人ずつ食べていたとしたらキメラアントのおばあちゃんはきっと僕に脳の部分を分けてくれるだろうことは間違いないくらいキメラアントは人間の中では特に脳が美味い、と言いまくっています。「脳=記憶」という連想は自然なので、脳をありがたがるキメラアントに「脳を食べることで次の世代に非捕食者の記憶を継承させる」という性質があるのでは、と思うのは自然なことです。
しかしそうなると、カイトの転生が余計に不思議です。ピトーの能力に操られていたカイトのサラサラヘアーは栗山千明に負けない勢いで健在だったので頭部は無傷であったと思われます。つまり少なくとも脳は女王蟻に捕食されてないっぽいです。それなのに転生できているというのはどうなんでしょう。
めんどくさいのでURL拾ってきたりしませんが、ここをクリアするのにポピュラーな説として「他の人間の転生はキメラアントの能力である、ただしカイトの転生はカイトの念能力による別の事象である」という説です。ジン曰くカイトのスロットの出目によって色々な武器を具現化する能力「クレイジースロット」には「ぜってー死んでたまるか!」と思ったときにだけ発動する能力があるとのことでそれが「転生する能力」だとすれば矛盾は生じない、みたいな話だった気がします。しかしそれも、転生という概念がキメラアント編で突然現れて、そこで死んだカイトが以前からたまたま持っていた能力が「転生する」というのはどうにも座りが悪い気がします。
とか色々考えれば考えるほど、記憶の継承ないし魂の継承が「キメラアントの能力ないし性質」とするとあんまり辻褄的に具合が良くない気がしてくるんですよね。
そこで僕が漠然と考えてた説が「キメラアントがどうとか関係なく、輪廻転生という現象はハンターハンターの世界内においては普通に起こっている」というものです。
これはあんまり整理せずとも漠然と思ってたので上のツイートに対してそのまま言ってみたところ、こんな反論が出てきました。
その解釈考えたことなかった……! ただ、ヨークシンシティ編でネオンが「死後の世界は信じない」などと言っていたので、あの世界だと特に輪廻転生概念があるわけでもないんじゃないでしょうか。やはりキメラアント特有の現象の気がします。
— 城伊景季 (@white_cake) 2017年7月22日
なるほど、ネオンの言葉を踏まえるとハンターハンターという世界においても「死後の世界」とか「死者の魂」みたいな概念については懐疑的な意見もあるようで、当たり前のように誰もが「死後の世界」や「死者の魂」を信じているわけではない。それはつまりそれらの存在が根底にあって初めて成立するような事象が当たり前に日常的に起こっているわけではないということにもなるでしょう。輪廻転生についても、例えばとてもめずらしい与太話としてはあっても「前世の記憶を持った人間が生まれる」という事象が頻繁に日常的に起こっているわけではない。それがキメラアントの場合に頻繁に起こったのならそれはキメラアント特有の現象であろう、城伊さんの言うことは一件もっともです。
キメラアントは「食べることによって捕食対象の性質を取り込んだ次世代を産む」設定だったので、その取り込まれた性質の中に食べられた人間の記憶もたまに含まれる、なんだと思うんです。これまで人間が摂食交配の対象になったことがなかったから、記憶も取り込まれるかどうかが判明してなかった的な。
— 城伊景季 (@white_cake) 2017年7月22日
ただ、キメラアントが「食べることによって捕食対象の性質を取り込んだ次世代を産む」という性質を持っていたとしても、キメラアント以外に前世の記憶を持った人間の存在が確認されていなかったとしても、「キメラアントが生前の人間の記憶を有しているのはキメラアントの性質によるものだ」と考えるのは早計であるように自分には思われます。
「輪廻転生、魂の継承というのは常に行われている」「ただしその事実が外部より確認できるケースはキメラアントのケース以前にはなかなか観測されなかった」と考えることは十分に可能ではないかと思います。
さて、世間話でたまに見かけますけど、「幼少時の子供は母親の胎内にいた頃の記憶を持っている」みたいなやつ知ってます?なんか、そうらしいっすよ。成長するに伴って忘れてしまうけど、実はそういう記憶を人間は幼い頃はしっかり持ってるんです。ただ、言語を獲得した年齢になるとすでにかなりうろ覚えになっていたりするうえに、親がその頃の記憶を知りたがっているのを察するとサービス精神を発揮してテキトーな嘘を盛り始めるので注意が必要、とのこと。
このような「胎内にいた記憶」と「生前の記憶」を類似したものとして考えると、輪廻転生という現象があったとしてもなかなかそれっぽい事象が観測されないこと、キメラアントの場合はめちゃめちゃ観測されまくること、が説明しやすい気がするんすよね。
もし輪廻転生がハンターハンターの世界にあって生命が発生してすぐの状態に魂と記憶が宿ったとします。
その宿った対象が何かしらの動物だった場合、記憶があったとしてもそのことを外部に伝える言語能力を有していませんので「前世の記憶を持った動物」の存在は可視化されません。
その宿った対象がふつうの人間だった場合、言語能力を獲得するまでに数年の年月を要し、その間にさまざまな外部刺激を受けたりなどもあって前世の記憶は忘却されてしまい「前世の記憶を持った人間」の存在は可視化されません。
では、これがキメラアントであった場合はどうでしょう。
ここらへんごめん細かい公式設定は曖昧なんですが「生まれた直後からほぼほぼ成体で(あるいはすごい速度で成体になる)、女王が捕食した生物の性質を十二分に獲得していて発揮することができる」キメラアントという種であれば、輪廻転生によって得た前世の記憶を保持したまま生き続けることが可能になるのではないでしょうか*1。
こんな感じで僕は「輪廻転生はキメラアントの性質ないし能力によって引き起こされたものである」説よりかは、「キメラアントという生き物の性質は、他の生き物には困難な輪廻転生による前世の記憶の保持を可能にする」説の方がしっくり来るのです。
そして、この説を採用すればカイトの切り札となる能力も「転生」なんていかにも限定した辻褄合わせの能力と仮定しなくてもすんなり説明がつきます。カイトが「ぜってー死んでたまるか!」と思った時に出る目の能力、それは「ラッキーで何かしらの方法でなんとかどうにか死なずに生き延びる能力」です。「そんなざっくりな」と思うかもしれませんが、ざっくりとした運任せの念能力というのはグリードアイランド編のリスキーダイスなどでも存在が確認されています。どのようにして生き延びるかはわからないけど何かしら生き延びる。その方法は能力者であるカイトにも技を授けたジンにもわからない。けれど何かしら生き延びる。という能力であったのであれば「人を食ったキメラアントによりカイトという自我を残したまま転生できるのであればそれは生き延びたことになる」という念能力の解釈によって転生したと考えることもそれほど不自然ではないのではないでしょうか。まぁこのクレイジーピエロの能力の話はめちゃめちゃ仮説です。
そしてもうひとつ、これは更にメタなずるっこい推理になるんですが輪廻転生・前世の記憶というものの存在がキメラアントに限らず広くハンターハンターの世界観に適用されれば物語を転がすうえで非常に都合が良い点というのが今の時点でひとつ存在します。
それは今まさに連載されている暗黒大陸・王位争奪戦編においてクラピカが護衛を担当している王子・ワプルの存在です。カキンの王子たちは壺中卵の儀によって自身のオーラをもとに守護念獣を生み出しています。まだそのすべては明らかになっていませんが作中ですでに登場している守護念獣を見るとそれを生み出した王子の自我や性格を色濃く受け継いでいることは間違いないでしょう。では、まだ乳飲み子で満足な自我を持っているかも怪しいワプルの守護念獣はいったいどんな姿になるのでしょうか?自我が育っていないならなんの役にも立たないフラットな無害な念獣になるのでしょうか?実質今は主役のクラピカが護衛している王子の念獣がそれってどうなの?しかしここで輪廻転生の概念を持ち出せばすべて解決、ワプルがどんな強力な念獣を従えようが、どんなに邪悪な念獣を従えようが、「前世の記憶」「前世を生きた魂」の概念さえあればすべて合理的な説明が可能です。
そんな感じで僕はハンターハンターの世界においては、前世の記憶を保持して生き続ける人間がポピュラーかどうかはさておき誰しもが誰かの魂を受け継いでこの世に生を受けている輪廻転生の世界観が採用されているのではないかと思っています*2。以上です。