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上司はお客さんじゃないと思います

全然関係ない話をするんですけど、ラーメン屋に行って「ラーメン700円で作れると思います」って言われたらそれは困りますよね。

それで食い終わった後に「すいません、やっぱ諸々仕入れだけで700円かかったんで1000円くらい貰いたいです」って言われたらちょっと待ってくれよってなりますから。そこは「思います」じゃなくて「700円です」って言い切ってもらわないとこっちも注文できないよ。そこ言い切ってくれないなら他の店行くわ。

でも、究極言えば、俺が雪山から命からがらほうぼうの体で逃げ下りてきてさ、寝たら死ぬなーと思いながらとぼとぼ歩いてたらラーメン屋がぽつんとあって、ズボンのポケットに手ぇ突っ込んだら700円しか入ってなくて。どれだけ遠くを眺めても他には灯りひとつ見えやしないしまたちょっと吹雪いてきたしって状況で「ラーメン700円で作れると思います」って言われたらそれは俺、交渉というかうまい落としどころ考えるよね。客だとしても。他の選択肢がないから。

え、700円でイケるかイケないかわからないんだ? 具は何が入ってんの? はいはい、あー、んじゃキクラゲ要らないから! うん、キクラゲなかったら700円で絶対大丈夫? 絶対大丈夫? オーケー、大丈夫ならじゃあキクラゲ抜きで700円ね、700円しか持ってないから。うん、キクラゲ抜きで大丈夫、あの、キクラゲのこと想像しながら頬の裏側を噛むから。たぶん大体同じ食感だから。うん、大丈夫大丈夫、心配しないで。俺、今、雪山から下りてきたところで感覚あんまないから、頬の裏側噛んでも全然痛くないから。気にしないで。じゃあキクラゲ抜きで700円で。

そういう交渉はするかもしれない。

って考えると、こっちも切羽詰まってる状況で最低限の金しか持ってないうちは本当に純粋な意味での圧倒的な客にはなれないんだろうね。本来はきっとそういうことだと思うんだ。他の選択肢が死ぬほどあってかつ唸るほどの金を持ってない限り、どんな状況であれ交渉は必要になるし、それはつまり俺は客じゃなくて相手さんと対等同士として取引をしてるにすぎないってことなんだろうな。追加料金もなしにこっちが本来担うべきその交渉のコストを向こうが考えて勝手に肩代わりしてくれるお店がいっぱいある世の中ですけど、本来的にはそれは向こうが頑張った結果そうなってて便利だねって話で求め過ぎちゃいけないんだろうね。交渉するのが当たり前で。

いわんや、上司と部下ならねぇ、別に会社がその部下に唸るほど給料やってねえのは上司の方だって大体知ってるはずじゃん。だからたぶんラーメン屋と交渉するシェルパみたいなもんなんだよ、部下を持つ立場っていうのは。唸るほどの給料も貰えてねえ奴を相手にして、何言ってんのかわかんねえところも頑張って理解してやって時には頬の裏側噛んだり意味があるんだかねえんだかわかんねえ気の持ちようみたいな裏ワザも駆使して、うまいことなんとかするのが仕事だったりするわけで、人を顎で使えるほどの金もねえから脳みそに汗かいて人を気持よく安く使う工夫をしてそれでやっとこさ金がもらえるわけで、「ラーメン!ラーメン!」ってただ騒いで出てきたラーメンにケチつけて駄々こねていざとなったら「悪いのはラーメン屋です」で済まして、それでお賃金もらおうなんて残念ながらそんな甘い話はないわけですよ。上司はお客さんじゃないと思います。

あと単純に、そんなような心構えで普段から頑張って面倒見てやるくらいのつもりで人とコミュニケーションを取っていて初めて「あいつはちょっと俺も色々頑張ってみたけど話が通じないわちょっとダメな奴かもわからんね」と言った時に「ああ、そうか、あいつダメなんだ」と受け取ってもらえるわけで、ここらへんすっ飛ばして「あいつダメだ」なんて言ってても「ダメなのお前だろ」と他の人は内心思ってるかもしれないわけで、そういう生の声を誰も自分に言ってくれないのもまた普段コミュニケーションをサボってたツケだったりするわけだよなぁと思うし、そうなってくるとできる時でも「できます!」とも言ってくれなくなるだろうし、「正直者が馬鹿を見る」ってのはそういうことなんじゃねえのと思うんだよね。

俺だって本当は人の気持ちなんて糞どうでもいいけど俺のそういうどうでもいいわって気持ちに正直でいると俺が馬鹿を見るのは明白なので俺は自分が得するために人の気持ちをなるべく考えたいなと思うし、正直なところ人の気持ちを大事にしてない奴を見ると「勝手にババ引いてくれてありがとう」とか思ってる。以上です。