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イオンモールに見る、「男と女で見えてる世界が違う」の一事例

あのー、休みの日なんかにイオンモールなんかに行ったりするわけです。嫁さんと2歳半の息子なんかを連れて。

で、嫁さんと息子は平日に二人でイオンモール行ったりすることもあるのかな、あと、俺が土曜日ぐーすか一人で午前中寝倒しちゃったときに二人で行ったりとか。そういうわけで、だいたい主に息子には俺の知らないところで出来上がってる決まってるルーチンみたいなのがあって、家族3人でイオンモールに出向く時ってのは当然わざわざ出向く理由・目的とかがあって出向くわけなんですけど、そんなんお構いなしに彼には彼のルーチンがあるわけです。イオンモールに来たからにはこれをやらずにはおれない、みたいな。修学旅行では絶対木刀買うみたいな、修学旅行だからってもらったお小遣いを全部アイドルのブロマイド写真に注ぎ込まなくてはならないみたいな、彼なりのルールがいくつかあるんですね。

例えば、本屋さんの絵本コーナーで家にもあるはずの『はらぺこあおむし』を必ず読むだとか、ペットショップで陳列されてる子犬を見るだとかなんだったら店員さんがケージから出してくれて触らせてもらうだとか、あとは店頭販売をやってるウォーターサーバーのブースに立ち寄ってバルーンアートを店頭販売員さんに作ってもらうだとかね。そういうわけでちょっと買いたいものがあるから出向いただけのイオンモールなのに息子のルーチンをこなすだけで2時間コースとかに平気でなっちゃうわけです。

で、この時間が、まーだるい。いや、息子が楽しそうなのは何よりなんですけどね、だるいかだるくないかでいうとめちゃめちゃだるいわけです。

まずはらぺこあおむしを読みたがる下りな。いや、まーでもこれはいいや。許す。家にあるんですよ、はらぺこあおむし。もともと俺、はらぺこあおむしが大嫌いなんですけど、なぜならヴィレバンが推してたから。それだけでもう本当は虫酸が走るくらい個人的には嫌いなんですけど、なぜ俺がヴィレバンが嫌いなのかは過去エントリ*1を御覧ください。でもまぁ、俺がはらぺこあおむし嫌いな理由は俺のなかでの話であって、息子にとっては知ったこっちゃないしね、彼は彼なりになんか知らんけどめちゃめちゃ好きなわけだからそこに文句をつける必要はないよね。いやまぁ、家でいくらでも読めるんだからさ、わざわざイオンモールで読むことねえだろみたいなことは思わないでもないけどさ、わからんけどたぶん「キャンプ場で飲むビールうまい」みたいなそんな感じなんでしょう。じゃあわかる、わかるから全然いいよ。知らんけど。

で、問題は残るふたつだよね、

まずペットショップな。息子が「わんわん!わんわん!」つって楽しそうに血統書つきの子犬を眺めてるの。60万円とかすんのな。高っけ!フレンチブルドッグ高っけ!!顔の皺の隙間にカスが溜まってめっちゃ臭いくせに高っけ!しかもあいつら、子犬の方が価値あるからね、この60万がピークね、あとは加齢に伴って市場価値は下がる一方だから。今高く売りにかかって一生の家族を見つけないと、どんどん厳しい戦いになってくから、どんどん厳しい商戦になっていくから。もういわば逆ウイスキーだよね、逆ワインだよね、ウイスキーもワインも寝かせれば寝かせるほどプレミアがついて値段がつり上がっていくわけだけどフレンチブルドッグはそういうことないから、むしろ逆なわけだから。むしろワインが逆フレンチブルドッグとも言えるわけだよね、ワインを逆フレンチブルドッグって言ったのたぶん俺が人類史上初だと思うわ。

そのうえね、そうやって「わんわん!わんわん!」ってガキが喜んでるとね、店員があざとくそれを見つけて「ワンワン触ってみるー?」つってフレンチブルドッグという名の逆ワインを片手に逆ソムリエの顔で近づいてくるわけですよ。売る気まんまんの顔で。いや、実際に売る気まんまんなのかは知らないけど、店員には店員で売る使命があるから。で、「かわいいでしょー、男の子だけどおとなしいんですー、お子さんおいくつですかー?」って言ってくるわけですけど、俺が買ったマンション、そもそもペット禁止なんだよね!!ただ、それを言うのもなんだか気が引けて、なんかセールストークをなんやかんや聞きつつ、犬を抱っこなんかしたりして、息子のリアクションをみんなでうふふふーって眺めながら、セールストークされて、それでそそくさと退散するわけですよ。

バルーンアートを配ってるウォーターサーバー販売ブースも同様ですよね。息子が風船欲しさにフラフラと近寄ってなし崩し的に巻き込まれる。店頭販売員さんは、俺の息子にヘラヘラ声をかけつつ手ではバルーンアートを作りつつ、俺にウォーターサーバーがいかにQOLを高めるかをすげえ語ってくるわけ。人生におけるH2Oのクオリティの大事さをすげえ切々と語ってくるわけ、にこやかに。知らねえよ!!お前滋賀県民でもないのに水の重要さをそんなに語って恥ずかしくないのか?もっと自分は滋賀県民じゃないという誇りを持てよ??H2Oの素晴らしさを滔々と語っていいのは滋賀県民だけなんだよ、滋賀県民じゃないならば、もっと他に自信を持って売りたいものがあるんじゃないのか?

 これはさすがに滋賀県民を流れ弾でdisりすぎましたので謝りますけども、とにかく水はいいぞ水はいいぞって言いまくってくるわけ。で、こっちもバルーンアート作ってもらってる手前、邪険にはできないわけ。いや、内心は「こいつめっちゃH2O本気で売るやん笑 H2Oて」とは思ってるけど、ふむふむと熱心に聞くしかないわけ。で、結局「検討しまーす」とか言って退散するのは同じなんだけど。さんざんふむふむ聞いといて逃げるのはなんだか申し訳ないよね、そもそも買う気もなかったし。

で、俺はもうこれにいい加減うんざりしてさ、嫁に言うわけですよ、買う気もないのにあっち行ってこっち行って、向こうには向こうで見込み客でもない人を相手して時間の無駄だろうし、俺は俺でそういうセールスの相手するのめんどくさいし時間の無駄だし、買う気もないのに接客してもらって少しは心苦しい気持ちはあるしでもう嫌なんだけど、と。

それでまぁちょっと喧嘩なり議論なりが始まるわけですけど、そこから見えてきたのがちょっとびっくりな話で。嫁が言うにはね、「言われてみればたしかに営業かけられてて大変そうだった」みたいなことを言うんです、僕に対して。

どういうことかと言うとね、僕がいないときに嫁さんと息子の二人でイオンモールに行きます、と。ただ、そんなときにペットショップ行っても「触ってみますー?」なんて言われないし、息子がバルーンアートに惹かれてウォーターサーバー販売ブースに近づいても特にセールストークもされずに「買わなくて全然いいんで風船どうぞー」って軽い調子らしい。なんだったら、僕がいることで、そこらへんの販売員の態度というかセールスモードのギアがめちゃめちゃ上がってることについて嫁さんも「すごい対応の違いだな」と思ってたらしい。

つまり、整理するとこういうことだな。

現状の世の中一般で考えて、家庭の何かしら大きな買い物を判断する最終決裁者は、男である、つまり僕である。しかしそういう最終決裁者はショッピングモールにそんなに頻繁には足を運ばない。だから、まずはその外堀を埋める。まずは、鯛を釣るためのエビを釣る。女子供に「売る気はないから安心していつでも来てね」とやっておいて、その女子供が最終決裁者たる男を連れてきた時には猛セールスをかける。男は男で、女も子供もその場を楽しんでるのであまり無下には扱えないし、そうしてヘラヘラとセールストークに相槌を打っていると今度は相手の営業員にも親近感が湧いてきて、今度は買わないのが申し訳ないような気持ちになってくる。「長々話聞かされましたけど、すいませんが買いません」と断るのにもそれなりのパワーを使う。そこでパワーを出しきれないやつが根負けして買っちゃう。契約しちゃう。つまりはそういう営業戦略なのだなと理解した。

恥ずかしながら僕もちょっと、「この状況を受け入れている」嫁さんに少しイラッとしてしまったところがあった。「買わない」という結論は出ている。なのに、向こうに営業をさせている。こっちも時間の無駄だし、向こうも時間の無駄だ。それなのに、なぜにあなたはそんなことも気に掛けずにいられるんだ、って思ってたところはあったの。でも実態は違うんだよね、僕のいう「こっち」の中に、女である嫁さんはいない。「この状況」に置かれているのはシンプルに男である俺だけだったんだよね。営業をかけられているのは俺だけで、嫁さんは特に営業かけられてなかったんだよね。ただ、決裁者たる男を釣るために彼女はぬるくコミュニケーションされてたんだろうね。

だから、俺には俺の要らん営業を受けなくちゃならないストレスがあったし、そのことについてどう家族で対処するかの要らんディスカッションも発生して喧嘩もしたし「こっち」としては本当に良いことが一つもなかったわけ。明日からも息子は風船も犬見物も欲しがるだろうしね。頭が痛いよね。

こうして、俺は掲題の、男と女で見えてる世界が違うということの一端を知った。

例えば、決裁者たる女性が夫婦で車を買いに行ったのに、セールスマンは男の方の機嫌を取るに終始したとか、物件探しをしているなかでキッチンの話になった時だけ奥様にセールストークをするとかみたいな話はたくさん聞くけども、今回の僕の経験を踏まえると、そこらへんはもっとなんか狡猾で、入り組んでいて、男性と女性、もっと言えば僕とあなたを対等にすることを阻む資本主義的運動法則は、本当になかなか手ごわいぞと思ったのであった。個人や法人やその他、組織やコミュニティの利害を追求しようとする気概が、我々男女をスナック感覚で分断しようとしてるんだな、我々が変えなくてはならない奴らの正体がほんの少しわかったな、と思ったのだった。

後半、まじめに話しすぎてギャグ要素0だったな。えーと、『パラサイト ハンカチの家族』、M-1優勝おめでとうございます。CGかつAIの高倉健主演で邦画化リメイクしましょう。

以上です。