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映画『母と暮せば』感想

感想文というほどではない、感想のメモ。

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とりあえず、『父と暮せば』に触れたことが過去にあって悪くない気分になった人は一応押さえておきましょう。イズムは、継承されていると言って差し支えなかったと思います。

井上ひさしの戯曲及びそこから派生する舞台とか映画とか『父と暮せば』は広島の原爆で死んだ父が遺された娘のもとに幽霊だかイマジナリーフレンドだかとして現れるって筋書きでした。今回の『母と暮せば』では、長崎の原爆で息子に死なれ、息子の婚約者と共に慰めあい生きてきた母のもとに息子が現れるという筋書きです。

山田洋次というジジイが作った映画なので「ああ、ジジイが作った映画だなぁ~」という印象を受けます。まぁ、だがそれでいい。しちやかましいうるさいところは何もなく、淡々とは言い過ぎですが、進むべき道に進んでいきます。

思った以上にいわゆる井上ひさしイズムみたいなものをちゃんとやってるなと思ったのは、徹底して会話劇だった。ぶっちゃけ、この話って、あらすじだけ書いて起こしてみたら超つまんない。何一つ面白くない。だのにしかし、見てみると面白い。それが会話劇ってもんだ、と思う。この観点から言ってもこの映画は完全に『父と暮せば』を踏襲しているとも言える。

ニノの演技は最高、吉永小百合も最高、黒木華も最高、前作にも出てたしくらいのノリで起用されたのか知らんが浅野忠信は見ていてちょっと複雑だった。あきらかにちょい役だったし。他なんか誰かおらんかったんか、という気はする。

めんどくさいところを端折れば、すごく普遍的な物語だと思った。

悼むとは?弔うとは?遺されるとは?愛するとは?忘れるとは?生きるとは?死ぬとは?

言葉にすると陳腐だがその全てに対する、正解ではないにしろ誠実な一つのアンサーが、画面上にある。すばらしいことだと思う。そして、そこらへんを語ろうとすると、どうしても原爆は便利というか、つまりは必要なのだ。それが日本というに国とっての普遍なのだな、とすら思った。

これは戦争についての映画なのかと考えるとどうもそんなきしない。もっと漠然とした人間の悩みについての物語だ。そこに原爆を組み込んだにすぎないんだという気もする。

欲を言えばラストに向けての流れは物語構造などに頼らず『父と暮せば』同様に言葉のちからで乗り切って欲しかった。とおもうけど、それはあんまり酷でアンフェアなので、置いておく。

まぁとりあえず興味ある人は見てください。良い映画でした。以上です。