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アンパンマンのスーツは撥水性なのか

このエントリではアンパンマンについて言及をしますが僕がアンパンマンをまともに見た最後が二十年近く前とかそんなレベルになってきますので単純な記憶違いや知識不足、最近では勝手が変わっているなど、間違った情報がたくさん出てくる可能性が多分に予想されます。そちらを了解のうえ、霞みがかった記憶と戯れるズイショさんをお楽しみ下さい。なお、アンパンマンは大人になってもある条件が揃えばイヤでも死ぬほど視聴しなくてはならない機会が再びやってくる性質のアニメと認識しておりますので、その時が来ない限りはあえて自分から積極的に知識の更新をすることは一切しないでおこうとなぜか僕は頑なです。なぜならその方が面白そうだからです。あと、この年齢まで『風の谷のナウシカ』観たことない人間もけっこう珍しいみたいなので、せっかくだしこちらは還暦まで粘ろうと思ってます。三十年後、観たら感想書くと思うので楽しみにしていてくださいね。

それで僕がアンパンマンのことをふと考え始めたのは『思い出のマーニー』を観ていたのがきっかけで、浴衣の女の子が池の浅瀬からボートに乗り込むシーンがあって、浴衣の裾が濡れていなくて変だなと思った。これがクレヨンしんちゃんだったら別に何とも思わないけどジブリで濡れないと気になるなぁと思っていたのですが、クレヨンしんちゃんだって衣類が濡れた描写くらいちゃんと描きそうなもんだとも思った。それで、衣服が濡れないアニメが何かあっただろうかと考え始め、思い至ったのがアンパンマンです。

アンパンマンは顔が濡れると力が出なくなることで有名ですが、着ている衣服が濡れているイメージは僕にはとんとありません。いつも水鉄砲なんかを喰らって泣き言を繰っているイメージのアンパンマンですが、なぜ衣服は濡れないのでしょうか。そもそもこれが記憶違いの可能性はあります。

一つ目の可能性として考えられるのはバイキンマンがめちゃめちゃピンポイントで常に顔だけを狙っているという説です。世の中ではここ十数年のあいだで人々の思想の多様さを許容しようという考えが広まり、それに伴って最近では「いつもあんなに頑張っているバイキンマンがやられるのでアンパンマンが好きじゃなかった」という声もちらほらと見かけることができるようになりました。十数年前であればきっとそんなことを言った途端に座敷牢に閉じ込められていたと思うので本当にいい時代になりました。そういう意見を聴いて僕が思っていたのは、バイキンマンは顔が代替可能と知りながら執拗に顔を汚しにかかることで戦闘のイニシアチブを握ろうとするのはなぜなのかということです。いくら顔を痛めつけてアドバンテージを作ったところでどうせあのバターの女が来ればチャラにされてしまうことは目に見えているのですから、バイキンマンはボディを痛めつける方向で戦略を練るべきです。スケバンの優しさ的なやつではなくガチゆえに、です。今、スケバンの優しさと書きましたがよくよく記憶を思い返すとスケバンが「ボデーにしなボデー」と言うのは、教師に暴行の痕跡を見つからないようにするためであり特にいくらなんでも女性の顔に傷をつけるわけにはいかない的な優しさではなかった気がしてきたので訂正します。スケバンは特に優しくありません。むしろ悪いやつです。でも思春期って色々あるので一概に悪いと言い切るのは良くないのかもしれませんが、悪いと言い切ってやる大人が一人もいない状態も不健全だと思うので僕は悪いやつだと言うことにします。なんて悪いやつだ!

そういうわけで、バイキンマンがピンポイントで顔を狙っているのであれば戦略を改めるべきなので負け続けてしまうのも自業自得なのではないかと僕は考えてしまいます。まず顔にダメージを与えて、そのうえでとどめを刺したいというバイキンマンの自分の中で決めた順序やルールに従って物事を達成したいという気持ちはわからんではありません。僕もそういう性格を多分に持っており、たとえば洗濯物を取り込んで畳むまでの一連の順序・畳み方のルールなどを忠実に守りたいので嫁に手伝ってくれるなと思ったりもするタイプなのでバイキンマンの気持ちは我が事のようにわかります。それでも物事の達成をまず第一に目指すのであれば曲げなくてはならない時というのが男にはあるのではないかと思うのです。

それで、二つ目の可能性として考えられるのが別に顔に限らず全身ビシャビシャにしてやろうとバイキンマンは躍起だが顔以外は濡れないという説です。アンパンマンのスーツ撥水性やばい説です。これはじゅうぶんに考えられる説で、というのも僕の遠い記憶を遡るに、アンパンマンってたまに透明なヘルメットのようなものを被って天候が雨の時に屋外で闘ったりとかしていたような気もするのです。「マントが濡れて空が飛べない!」というセリフは聴いたことがないような気がします。マントをどっかにやったので飛べないみたいなことはあったような気もします。そもそもアンパンマンのスーツってそんな襟元がザックリ開いてるようなデザインではなく首がないのをいいことに顔と胴との付け根までピッチリとしていた気がしますのでスーツが濡れてしまってはヘルメットで頭を守っていたとしても染みてきて結局またいつものように顔が濡れて力が出ないとかのたまい始めるのではないかと思います。以上のことから考えて、アンパンマンのスーツは撥水性がかなりやばいのではないかと私は考えます。ところで、透明ヘルメットについて僕は子どもの頃「じゃあいっつも被っておけば無敵じゃん」と安易に考えていましたが、大人になって独り立ちして社会人として自分の責任を負いながら生きていくなかで色々なリスクを想定しながら物事を考えられるようになった今になってわかったことは、ずっと透明ヘルメットを被っているとパンの水分が一度気化したものがヘルメットで水滴となり結局顔が濡れてしまうので透明ヘルメットはあくまで緊急時にやむをえず使うに留めるべきで常時装備は好ましくないという結論です。ただ、この結論を導き出すヒントになったのは、学校の給食で食べずに机の中にしまっておいたパンが翌日真っ白に曇った袋の中でクタクタにふやけている現象なので、別に当時の俺でもこの結論に辿り着けたはずだろと思います。特にクリームパンの時が見た目に不快でした。

ところで、顔が濡れると力が出ないでお馴染みのアンパンマンですが、他のキャラクターはそのような欠点を持ち合わせていないというのがよくよく考えると僕には不思議でなりません。カレーパンマンはカレーが無くなると力が出なくなるのでカレーのレトルトパックをそのまま食べてパックだけ吐き出すという馬鹿のハイチュウの食べ方みたいなことをしていたように記憶していますが、カレーパンマンの顔が濡れるとどうなるでしょう? 食パンマンは? 僕は水浸しになったハンバーガーやおにぎりを想像するだけで悲しい気持ちになり気分が沈みますが、ハンバーガーキッドやおむすびマンは水に濡れてもへっちゃらなのでしょうか。へっちゃらということもないのかもしれませんが、顔を交換することが可能でありまたその必要があるという極端なキャラクターはアンパンマン以外にはなかったように記憶しています。一つ考えられるのは顔がガチの食品という狂気の沙汰みたいな星の下に生まれついたのはアンパンマンただ一人であり、その他の食品をモチーフにしたキャラクターたちは厳密には全員広義の食品サンプルマンにすぎないのではないかという可能性です。それであれば様々なキャラクターが登場するなかでよりにもよって牛乳が無いと飲み下すのもしんどいアンパンこそがあの世界において唯一無二のヒーローであることにも説明がつくように思われます。アンパンマンは顔が濡れても力が出なくなるだけで顔を替えれば完全復活するので不死のように感じられますが、よくよく考えると他のアンパンマン以外のキャラクターの方がよほど不死に近い存在であるように思われます。例えばアンパンマン世界のキャラクターたちがトラックとかに撥ねられたとしても多少の怪我はするかもしれませんが翌週には治っていそうだし後遺症が残るようにはとても思えない。それは毎週ギプスで松葉杖のお世話になっている気がするバイキンマンを見ても明らかなことです。そのように考えた時、顔にダメージを受けた際に作品世界内のキャラクターがみな持っている驚異的な自然治癒力を発揮することができず「顔を交換しない限り永遠に力が出ない」という非常にフィジカルで具体的な治療が必要となるアンパンマンこそがアンパンマン世界において最も死に近い存在であると言うことができます。つまりアンパンマン世界とはその住人たちが不死であるゆえに腕力による強固なヒエラルキーが形成されやすい環境であり、ひとたび暴力による支配が罷り通れば被支配階層も不死であるがゆえにそれこそ永遠の搾取を強いられるであろうことが想像されます。そのようなディストピアにおいて死のリスクを負うことで強大な力を獲得し、独り自意識が消滅するかもしれないという死の恐怖を抱えながら、権力構造が発生しようとするたびに解体を試みる哀しきヒーロー、それがアンパンマンなのかもしれません。

あと、アンパンマン以外食品サンプルマン説が正しいとするならばバイキンマンが町を火の海にしないのはほんまにあかんやつだからかもしれません。僕が知らないだけで火の海にけっこうなってたらすいません。以上です。