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文章が語りかける相手と想定読者はしばしば一致しない


このブログ記事を見かけて「この話をするのにこのタイトルつける感覚がイクメンっぽいなと思った」とツイッターでコメントした。で、なぜそんな風に思ったのかがぼんやりわかったのでぼんやりだけでも頭に残ってるうちにメモ。

文章が語りかける相手と想定読者はしばしば一致しない。このほう太パパさんという人は主に育児を題材にしたブログを書いている人なんだけど、冒頭に挙げたエントリなんかはタイトルからして顕著ですが、この方の文章って「育児をしていない人向け」という設定で書かれてる印象が強い(ように俺には見えた)。しかしコメントやはてなブックマークを覗いた感じ実際に読んでいる層は育児経験者ばかりだったりする。なんか、ここのギャップが気になる。

いや、実際には書いてる人も「僕が書いた文章を読むのは育児をしているお母さんお父さんだ」とは思っているのかもしれない。けどなんか文章の要所に「知らない人に教える」みたいな話法が用いられるのだ(これ自体は別に悪いことではない)。これは実際に誰に向けて書くかという意識の問題ではなく、単に文章の癖なのかもしれない。そういえば昔、奥歯がどうにも痛んで駆け込んだ歯医者の先生が僕があんまり痛くてうめくものだから「痛いよな、もうすこし辛抱してくれよ」とか呟きながら治療してくれて「わしゃ鉄砲で撃たれた人間への警戒心が強い野犬か」と思ったものだが、あれも別に先生は本当に俺のことを野犬だと思っていたわけではなく、そういう先生の癖だったのだろうと思う。

癖であるのと同時にテクニックとして普通に有用って側面ももちろんあるだろうと思う。よくよく考えると芸人のあるあるネタでも「お客さんに知らない世界のあるあるを紹介するよ」的な設定であるあるネタを言うみたいなパターンって多い。共感を狙ったあるあるネタはマイノリティの連帯感とか、共犯意識とか、選民意識みたいなものを伴うと効果が増幅しやすいみたいな仕組みがある。であれば、実際にそれを聞いて「あるあるw」と笑うのはマイノリティの側であったとしても「マジョリティのみんなに語りかける」設定の方が笑いが起こりやすいということは言えるかもしれない。なるほど、そう考えると内容をもっとも効果的に見せるにあたっては「実際にそれを読む相手」と「その文章が語りかけている相手」は必ずしも一致させなくてはならないというわけでもなさそうだ。そういえば重松清の『疾走』の文体ってビビるよね。あれも形式としては読者に語りかけてるわけではないもんね。黒人に語りかけるでもなく白人に語りかけるでもなく「アイハブアドリーム」と独白するからかっこいいみたいなそんな話もできそうだ。

そういうわけで、実際の読者と違うペルソナに語りかける形式というのはやるべきではないという話でもなさそうなんだけど、効果が期待できる以上まぁセットでリスクもついて回るよねって話になりそうだ。例えばこのテクニックは卵と壁で言えば卵の側であることを明確に宣言しているに等しい。ならば正しく卵の側として振る舞わなくてはならない。卵の側ですよって顔で論をぶちあげたら「お前壁の側じゃねえかふざけろ」つってお母さんがたにボコボコにされてるイクメンブロガーなんかは、定期的に視界に入る(あ、冒頭の記事は別に全然燃えてないです)。あとは、大した知識もないくせに小学4年生を集めてクイズを出して良い気になっている小学6年生は他の小学6年生にケツを蹴り上げられる可能性は十分に考慮すべきでしょう、みたいな言い方もできるかもしれない。

まぁ、入りが冒頭の記事だったのでこんな感じになりましたが、別にイクメンの話に限らず、ここらへんのテクニックを無意識に使ってすっ転んでる人はわりに見かけるよねって話でした。「何も知らない人に1から教えるような書き方」は5とか6くらいは普通に知ってる人を納得させる文章を書くのにも勿論有効ではあるのだけれども、このテクニックさえ導入していなければ同じ内容のことを書いていたとしても別に誰も怒らなかっただろうに、みたいなそういうことは起こりうる。もちろんご利益もあるので一概に使うなという話ではないけれど、自分が今そういうテクニックを使っているという自覚はあっても良いかもしれない。

さて、貴方が書いている文章は、誰に語りかける設定で書かれていますか?

ちなみに俺はずっとお前に語りかけてるんだもんなちゃんとおとなしく最後まで聴けてエラいからこの後ビーフジャーキーもらえるんだもんな良かったな、犬!

犬「わん!」

よーしよしよしよし!よーしよしよしよし!

犬「わん!わん!」

よーしょしょしょしょ、しょしょしょしょ!

犬「わん!わんわん!」

わしゃわしゃわしゃはーえらいえらいえらい!

犬「わん!」

こちょこちょこちょこちょこちょ

犬「わん!わんわんわん!」

しゃーしゃしゃしゃしゃ!

犬「わん!わんわん!」

ふにゃーんめんこめんこめんこめんこよしよしよし!

犬「わんわん!」

しゃぁおっ!しゃぁおっ!

犬「わんわんわんわんわん!」

わんわんわんわんわんわんわん!

犬「わおわおーん!」

にゃー!

犬「わんわん!」

犬め!この、かわいらしい犬め!

犬「わおおーん!」

ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!

犬「わーん!」

以上です。