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五角形のおじさん

伊勢神宮行ってきましたー!

去年建て替えたんだって、伊勢神宮式年遷宮つってな、つってな!20年に一回まるっと全部建て替えるんだ。敷地が2つ分あって、20年するともう片方にまるっと建て替えて中に奉ってる神器も新しいほうに移し替えて、神様が引越ししちゃうんだ。伊勢神宮というか伊勢周辺の神社にはそういう文化があって、1000年以上そうしてるみたい。昔の日本人にとっては、その建て替えた真新しい神宮に二礼二拍手一礼かましたったって経験が90年代でいうエレクトリカルパレード最前列で見たったみたいな経験に相当するらしくて、現在で言えばそんなものもう無くない?って感じだけど、お伊勢さんはそういう場所らしくて。御蔭参り抜け参りつってな、60年周期ですごい伊勢神宮参りたくて仕方ないみたいなムーヴメントが来てたらしいよ。「もう何でもいいからどうでもいいから参りたい」ってムーヴメントが60年に一回来たらしい。当時は有給とかないから、あと電車がないから、ちょっと遠方だとなかなか伊勢参りとかできないわけ。でもやっぱ死ぬまでに一回は参りたいじゃない、仕事とか全部もう放り投げてでもいいから、俺は参る勝手に参る、みたいなそういうムーヴメントが起こって、夜逃げみたいにみんなで伊勢に詣でるわけ。「覚えてないけど、俺のおかあも俺を抱えて参ったらしいぜ」って言ってたジジイが死に絶えた60年後にまた、「いつ参るの今でしょ!」ってムーヴメントが起こるみたいなそういうノリが伊勢参りにはあるらしい。ほんで、去年この20年に一度の遷宮がありまして、数えてみるとこの60年周期に該当するらしい。そりゃあ行くしかないでしょ、いつ行くの今でしょってことで嫁と二人でマイムマイムのメロディで参る参る言いながら馳せ参じ候。

色んな神社に行ってめちゃめちゃ面白かったんですけど、普通に面白かっただけであんま喋ることがないんだよね、俺の語彙力が足りない。神社の素晴らしさを皆々様にお伝えする言語能力を俺は有しないもんで困ったので、或るおじさんの話をします。

数あるエピソードの中からすごく普通の或るおじさんの話のみピンポイントでします。

20年に一度の遷宮を覚えたばかりなので色んなものがピッカピカ。色んなものがピッカピカ。ドリームハウスで見かけるすごい狭い坪数の3階建ての家の柱みたいな色をした真っ白な鳥居が色んなところで建っている、そんな神社が1000年以上の歴史を謳ってるという異常事態に興奮しながらウロウロしていたら、20年前に建てた神宮が取り壊されずに新品の神宮と並立しているアトラクションにぶちあたった。新品に新品だと驚き、20年そこに在ってボロボロになった神宮に驚き、すげぇなと目を白黒させていると、その横に電話ボックスくらいの大きさの、警備員のおじさんが入ってる詰め所があったの。その詰め所が新品だったの。僕それ見て、え~って思って、っていうことはおじさん、去年までこのボロボロの神宮同様のボロボロの詰め所で警備してたのかよって思って。もうマジで尋常じゃないくらい20年前の神宮はボロボロなんですよ。あの、たまに「死後さばきをうける」とか書いてる看板見かけるじゃないですか、あれを壁に掲げてる家か廃屋か何かわからないくらいボロボロのドス黒い木の色をしてるわけですよ、寄りかかりたくない黒さをしてるわけです、そんな詰め所で警備してたんだとしたら警備員のおっちゃん偉すぎると思って、確認したくなるわけです。こういう時は聞くんです。想像で面白がっても仕方ないので、警備員のおっちゃんに聞くんです。聞いてみたら、本当にそうなんですって。この前まで20年使い倒された詰め所にいたんですって、まじっすか~すげ~な~って驚いてたら今度は全然知らんおじさんが話しかけてきた。なんで話しかけてくるねん。このおじさん、この詰め所の何やねん。結論から言うと何でもありませんでした、おじさんが僕らに言ったのはこんな話です、「伊勢の鳥居はなぁ、五角形やねん」。おじさんが指したところを見てみると、鳥居の一番上の一本の断面、見てみると確かに五角形だった。鳥居を横に貫く2本、普通は円柱か四角柱か、なんしかそういう形のものが横に2本ズババーンと貫いていた気がする、しかし見てみるとその鳥居は五角柱になっていた、横から見ると五角形が見える。なるほどな~つって、このなるほどな~ってのは、この五角形へのなるほどな~でもあるし、おじさんについてのなるほどな~でもある。このおじさん、俺が警備員さんに質問してるのを見て、知りたがりだと思ったんか思って。教えたがりのおじさんなんだ、と思って。フランクに人に話しかけるってことは、フランクに人に話しかけるってことだと思うので、この点において俺はこのおじさんを悪い人だとは思わないんだ。俺は知りたがりで知りたかったことがあったから、そこにいる警備員さんに話しかけてたわけで、そのせいでこいつはそういうフランクな絡みOKの人なんだと思われて、話し相手が欲しいおじさんに話しかけられるのは仕方の無いことだし邪険にしてはいけないなと思う。なので俺はこのおじさん、伊勢神宮トリビアを聞かせられる相手が見つかってさぞ嬉しかろうなと思いつつ「そうなんですね~」とか言ってた、おじさんは「そうなんだ、この伊勢の鳥居は五角形なんだ、ほかにはない、ここだけだ」って言って、俺は「へ~、そうなんですね~」と言っていた。おじさんは言う「五角形とか見たことないだろ、伊勢はな、五角形なんだ」、俺「あ~~~~ほんまですね~~~」、おじさん「………………。」、俺「あ~~ほんとだ、向こうも五角形だ、すごいな。」、おじさん「………………。」

おじさんどっか行くっていう。

ちょっと待ってよ。おじさん、この神宮にいる神様に纏わる古事記のエピソードとか俺に教えてもいいんだよ、心構えできてたのに。そりゃ俺だって生返事だったよ、そりゃ認めるけどさ、だっておじさんここで俺がグイグイ的確に次の言葉を紡がせようとそれはもうグイグイとQ&Aをやってしまったら、おじさん赤福まで付いてきかねないじゃないですか、それは流石に吝かだよ。そこまで来られると吝かだけど何らか応答してた時点で、こっちは聴く態度は示してたじゃん、そこまで吝かではないんだよ、それで十分なんだからもっと頑張れよ、警備員さんと話してた俺に話しかけたのはおじさんの方じゃないの、それにこんだけ応えたんだから、もっとそういう「ここはアリアハンの村だよ」的なおじさんをやっても全然おじさんそれでよかったんだよ、なんで諦めちゃうのよ。そこでやめちゃったら単純におじさん、鳥居の断面が五角形なのに今日たまたま気付いてテンション上がっちゃってたおじさんみたいな感じになっちゃうじゃん。もっと喋れよ。諦めて歩みを進めるなよ。俺ももっと食いつけばよかったかなっていう後悔の念はあるよ、あるけどあんま食いつくと赤福まで付いてくるかもしれないじゃん、それは御免だから話しかけられた身分としてはアレくらいが最大の譲歩だよ、あの譲歩じゃあ足りないよとばかりにそっと遠ざかられるとこっちとしては、もう五角形のおじさんとしか解釈できないわけですよ。

そういうわけで五角形のおじさんはフェードアウトで僕らから去っていき、僕らはその後、他のいくつかの神社を参るに至ったわけですが、僕は心のどこかでずっとあのおじさんのことを覚えていて、どっかでもう一回だけ、僕らのような人の良さそうなカップルに「この鳥居、五角形やねん。どや。伊勢だけやねん」と話しかけてるところを目撃できさえすればすべらない話風に飲み会で使える超面白いやつにできるのにと願いながら伊勢神宮内をウロウロしていましたが、ついぞあの五角形のおじさんとの再会を果たすことはできず、僕は伊勢神宮を後にし、このおじさんの話はこのエントリを最後に二度とすることはないでしょう。以上です。

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