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三谷幸喜『清須会議』感想文

そんな何千字もうざ絡みするほどのこともないのでサクッと。あ、ネタバレは余裕でありますので自己責任で。

そこそこ面白かったー。前回の『ステキな金縛り』がハッキリ言って全然おもしろくなかったので大丈夫かなーと思ったけど普通に面白かった。けど舞台がそんなにせせこましくもないってのもあって、往来の名作三谷映画に比べると三谷脚本でやってたようなやつを三谷が撮りましたくらいの感じで薄味とも言えるし大味とも言える。

なんつったって大泉洋の三谷的豊臣秀吉へのハマりっぷりがすごい。こりゃ三谷さんも洋ちゃん大好きになるわっていうのも納得の感じ。信長様死んだばっかりで最近明智ぶっ殺したところで、そんな中でコミカルに跡目相続会議に向けて策略を練る面々ってのはやっぱり最初いまいちピンとこなくて「お前それサバンナでも同じこと言えんの?」的な、ゆるすぎるだろみたいな心の距離の置き方はやっぱり俺の中にもあったんだけれども。観てるうちに「あーでも秀吉ってこんな奴でも全然ありうるな。いうるな」と思えてきて、そうすると他のキャストもまたぞろと「あーでも案外こんなもんかもしれんよなー」なんて思えてくるんだからまんまとハメられている。いわゆる現代からすると御伽噺みたいな昔の歴史上の出来事とかって、そりゃあ登場人物みんな思い思いにすげえシリアスっちゃシリアスなんだろうけど、それはまたそれはそれでシリアスにしてなんぼみたいな自意識が作用してるだけで実のところ大学のサークルみたいなノリで天下狙い合って殺し合ってたんじゃねえかなみたいなことは思っちゃうのよね。

今日はたまたま俺が家にいて嫁が家にいない日なもんで、一人で鑑賞してたんだけれども、僕はキャラクターに感情移入しながら物語を観るのが苦手で、俯瞰というかメタを意識しすぎというか、それはそれで面白いんだけれどもそれがありつつキャラクターにフォーカスする観方をしてくれる人がいるともっと楽しいんだよね。嫁なんかは俺とは真逆のまさにそういうタイプで、この後どういう展開になるかとか予想することを一切放棄して、ただただ目の前のシーンのそれぞれのキャラクタの内心を慮ったりしながら観るタイプの人なんだけれども、一緒に観たかったなーとか思いながら観てた。たぶん嫁は、柴田勝家に肩入れしながら観るのかなー、俺の想像だからわからんけど。役所広司のあの馬鹿でチャーミングな柴田勝家を「お前はほんとにそんなんだからダメなんだよ馬鹿!」とか言いながら応援するんじゃねえかなと思う。叱咤激励の叱咤がすごい強いやつ。で、なんだかんだ最後は「柴田かわいそー」とか言いながら「豊臣死ね!そんなんやからあかんねん!そんなんやからこの後調子乗ってメチャメチャなるねん。ここでみんなが止めないから、もー!!」とか言ってそうな気がする。想像はできるんだけど、俺はそういう感情は起こらないから淡々と観てるんだけど。たぶんそういうこと言うやつと一緒に観た方が面白いなーこれ、と思ってたら。終盤、柴田にこんなようなことを言う登場人物がおりまして。

「お主は考えなしで動きすぎ。何か事を為す時は為す前にまず、それが本当に正しいかどうか、心の中のわしに問え。」

いや、全然違うんだけど、俺が観ながら考えてたことは大体同じようなことよね。俺はどうせどう頑張ってたって俺の思ったようにしか思えないんだから、だから俺だって「嫁ならどう観てたかな」なんて考えながら観ていたわけだ。人は一人じゃ生きられないし、一人じゃ何もできないし、一人じゃ諍いも起こらなければ転がりもしなければ面白くもならないし、つまりはそれが人間喜劇ってことなのよねーみたいなそんなことを思いました。以上です。