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究極俺要らんのかい

常日頃思うのは俺にとって貴様ら平等に全然かけがえなくないし他人にとっての俺もそうなんだろうってことなんですよね。全然かけがえあるよ。誰かと一緒に映画を見て、映画観終わったら感想とか映画観てたらなんか思い出した全然関係ない話とかしたいじゃん。一人で映画観たい派?知らん!そんな奴は知らんぞ!帰っとくれ、二度とこの村にゃ近づかんでおくれ! でもその一緒に映画を観る相手って別に貴様じゃなくてもいいんですよね、別に貴様じゃあ駄目だとは言わないんですけれども、そこまで貴様じゃないとこっちとしては都合が悪いってほどでもない。だって世界には60億の人がいるんですよ?他にも話せるやつはなんぼでもいますから。どうしても松たか子と神田沙也加じゃないと観たくないとしたって選択肢12億人いるわけですよ?そんないたっけ。多くね?発注ミスっぽくね?まぁいいや。そしてこの事実は俺自身にもそっくりそのまま突き返される。究極俺要らんのかい。

もちろん貴様にとって貴様自身がめちゃめちゃかけがえなくてかけがえなさが服着て歩いてると言っても過言ではないのは知っている。それは俺だってそうだ。ただ貴様にとっての俺はそうじゃないでしょう、俺がなんかヘマをこいたらどうせ俺を捨てて逃げるでしょう? 例えばお化け屋敷に二人で一緒に入って俺があまりの恐怖に動転してしまって、この俺を驚かそうとする女の幽霊はスタッフさんなのだでも今こうして眼前に立たれると頭ではスタッフさんだと分かっていても特殊メイク怖すぎる耐えられない耐えられない耐えられない何とか取り戻さなくては、実感を、この目の前にいる女性はただの生身の女性なのだその真実を俺は実感と共に取り戻さなければこのままでは恐怖でどうにかなってしまいそうだ、掴み取らなくては、リアルを、リアルを取り戻せって考えた結果、幽霊の女の人に向かって「なぁ姉ちゃん、最後にスケベしたのはいつなんや?」とか普通に最悪な質問し始めたらたぶん「あ、こいつ一緒にいちゃいけない人だ」つって置いてくでしょ。俺は俺と一緒にいることを決してやめられないのに! 別にそれを咎めるつもりはない。僕が言いたいのは、貴様にとっての俺がその程度の存在であるということはきっと、同様に、貴様の周りにいる誰かにとっても貴様はきっとそうなのです。ということです。みたいなことをラーメン屋の親父がずっと言ってくるのね。俺がラーメン食ってる間中カウンター越しにずっと言ってくるラーメン屋の親父がこの前いたんですけど絶対二度と行かねぇ。お前がラーメンを振る舞い、俺はお前のラーメンを食う、そういう関係を築ける存在がこちとらお前以外にゴマンといるんだよ釣りはいらねーよばーかつってカウンターに千円札叩きつけてそのラーメン屋を後にしたんですけど。その親父が追ってきやがるんですよ、つっかけ片方脱げながら必死に走って追ってきて「ちょ待てよ!待てよ!」つって追ってきて、あーそれ言う時けっこうホリに顔似るよねー自ずから似るよねーわかるわーと思ってたら親父が言うわけ。「別に、あれだよ、俺はあの、お釣り渡さないのはこっちも据わりが悪いからよ、それだけなんだけどよ。あんたみたいな啖呵切るやつは今時なかなかいないぜ。俺はあんたのこと買ってるんだぜ。だから……」あーもういい、もういいからいいから、その俺に「だから?」て聞き返してほしい感じがもうめんどくせえわ、絶っ対ぇーに俺はお前のところでラーメンは食わねぇ、ズェッテーにだ。上地雄介みたいな顔で俺は言うのであった。

じゃあさ、じゃあさ、このラーメン屋の親父のキャスティング考えてどっちの方が面白いかで勝負しよ、芸能人で誰がこのラーメン屋の親父演じてたら面白いか、考えた?考えた?大丈夫?俺もう考えた。考えた?じゃあ、せーので言おうか、せーので、せーので同時に言って面白かった方が優勝ね、じゃーいくよ、大丈夫?大丈夫?せーの、桑田佳祐

自分は自分にとってかけがえのない存在だから、何とか他人にとってもかけがえのない存在でありたい、もちろんその分お前のことだってかけがえなく思うからそれぞれ各々と唯一無二のピッカピカの関係性を築きたいって思っちゃうラーメン屋の親父の気持ちはそりゃあわからんでもない、上っ面の愛想笑いでなぁなぁの会話なんか繰り返したって何にもならないじゃないか、そういうお前の気持ちはわかる、一日中ラーメン作ってりゃそんな考えが頭をグルグルグルグルと巡る日だってあるだろう。だけどこっちはラーメンくらいゆっくり食いてえんだよ、ラーメンさえ食えりゃそれでいいんだよ、そこのみに重きを置いて考えた場合お前の店のラーメナビリティ最悪なんだよこの野郎。もしこれが明日の仕込みを終えてちょっと寝る前に一杯なんつって立ち寄ったバーなんかで俺とおっさんが出会っていれば少しは違ったのかもな。一緒にキャンプに行くような間柄になったかもしれない。そうする中で「ラーメン食ってる時は黙っててくれないかな」とフランクに言えるようになったかもしれない。いや、でもラーメン屋でそんな話するおっさんなんだからやっぱどっちみち途中でめんどくさくなって疎遠になるかな。なるな。ともあれ、あのラーメン屋のおっさんはお前がラーメンを振る舞い、俺はお前のラーメンを食う、そんな関係性を演じるにはあまりに近すぎてあまりにも鬱陶しかったゆえの悲劇である。

そういえば全然話変わるんですけど先々月くらいかな、財布買い換えたんすけど。最近やっとツンツルテンだった革が馴染んできたっつーか、俺が使った結果の汚れとか傷とか、そういうのが見えるようになってきてて、愛着が湧いてきたっつーのかな。できる限り長く使いたいなーって気分になってきた。普通に使えて、普通に長い時間使ってれば人間なんていい加減な生き物だからそういう風になっていく。多少使いにくいなと思うところが出てきても全然気にならないし、長く使えるように大事にしようと思うし、あんまりくたびれた時には手入れの一つもしてやろうかなという気にもなってくる。そういうもんだと思う。なので僕もあのラーメン屋のおっさんと同じように、誰かにとっての俺は別に俺じゃ無くてもいい程度の存在で、一先ずはめんどくさく思われない程度に黙々とラーメンを作らなくちゃならないんだろうなとは思うんだけど、別にそういう財布みたいなことって往々にしてあるから、僕はそういう究極俺要らんのかいってことについて、ちっとも悲観的じゃないんだよね。

みたいなこと考えながらインスタントラーメン作ったらいつもに比べてめっちゃうめえのな。あーこういうこと考えながら作るのがあの味の秘訣だったのかーつって。めんどくさかったら絶対すぐ帰るって誓って、ちゃんと後の予定詰まってない休みの日を選んで、もっかいだけ行ってみようかなーあのラーメン屋。以上です。