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あまり何も考えずに濫用される「持ち味を活かす」「長所を伸ばす」って言い回しが苦手

最初に言っておくと自分のごく個人的な狭い観測範囲で見かけた悪い例を軸に喋ってるんで、こういう言い回しを使いつつちゃんとうまいこと回してる人がなんぼでもいるのはわかりますし、結局は「気の持ちよう」「物は言いよう」に収束するような話であることもわかってるんですけど。

漠然と「持ち味を活かす」「長所を伸ばす」みたいな言い方で他人に問題解決を丸投げする態度が苦手だなって話なんですけど、こういう言い方って寛大でポジティブで前向きで建設的に思われることも少なくないと思うんですけど、中身がなくて後々キツいことってないですか。

一番わかりやすい極端な例で言えば、そういう発想で人を使う人間の解像度が究極的にアレだった時、そいつはたぶん「お前の持ち味はガッツだ」って言いますよね。だってそいつの人間性とか適性とかよくわかんないから「とりあえずせめてガッツくらいはあって欲しいな」という願いを込めて「お前の持ち味はガッツだ」って言いますよ。「優しい子に育って欲しいからこの子の名前は優太だ」と同じノリで「お前の持ち味はガッツだ」って言いますよ。そして優太くんのご両親は優太くんが優しい人間に育つようにその後も頑張って子育てするからいいんですけど、そうは扱ってもらえないガッツくんというのもいるわけですね。「お前もう今日からガッツだから。だからお前はガッツで頑張れ」つって。

それで「ガッツで頑張れ」って言われたガッツくんも「わかりました持ち前のガッツでこのドラム缶を水でいっぱいにします」つっておもっくそ底に穴が開いてるバケツ持って川の方に走ってくみたいなそういうシーンって見かけたことないですか。もう既にちょっとガッツって言いすぎて「ガッツ」が俺の中でおもろなってきてるんですけど、別にこれがガッツじゃなくて負けん気でも集中力でも真面目さでも社交性でも発想力でも何でもいいんですけど、形式上どこか褒めてるから口当たりは良いものの結局丸投げで「何とかしてくれ」って言ってるだけじゃんみたいなケースって割と普通によくある。

この論法のタチが悪いところは、「持ち味」の部分を褒めているように見えてそいつの他の部分についてはほぼほぼ否定的、或いは取るに足らない要素と考えているわけで、当然そこからついてくる結果の良し悪しの理由についても良ければ「持ち味のお蔭」で悪ければ「持ち味が足りない」と持ち味に要因を求めるような流れに収束しがちで、つまり結果が悪ければ形式上「自分の唯一の取り柄」とされている部分が否定されてしまい大変辛い。という相手を弱らせて従順にするテクニックとしても非常に効果的という機能が備わっています。「なんだてめえもうスッカリ日も暮れるっていうのにドラム缶空っぽじゃねぇか、てめぇのガッツは何色だ!」「すいません、明日はもっとすごいガッツで頑張ります!」「ようし頑張れ、てめぇからガッツ取ったら何も残らねえんだからな、わかってんのか!」

バケツの穴「穴だよ! 見て見て!! 俺、穴だよーーーーーーーーーーー!!」

そういう不毛なやりとりが今日も世界の各地で行われており、季節は巡り、また花が咲くのです。

結局別に仕事上の使う使われるに限らず誰かと人間関係を結ぶうえで相手が自分にとって分かりやすくて使いやすくてハマりやすい形のピースであったらそんなにラクなことはないなっていう願望って誰しもがあるわけで、そういう願望が他人にそういう言葉を使う動機になったりするんかなぁと思います。「人それぞれ」「みんな違ってみんないい」という口当たりの良い思想を踏襲してる感があるのであんまり嫌われてない言い回しだと思うんですけど、初期ステータスが攻撃力だけ10であと他ぜんぶ3の奴を捕まえて「ほかんところはわからないけどお前の攻撃力は100まで伸びるはずだ、そうすればたぶん何とかなるから攻撃力100目指して頑張れ」って言い放つのはどうなのって話で、それは結局ここから東にちょっといったところの洞窟に攻撃力低いけど防御力高いモンスターがいる洞窟があるけど今のお前の攻撃力なら余裕で倒せるはずだしそこでレベル上げするのが一番効率良いと思うけどその洞窟に行くまではちょっと大変かもしれないからやくそう買い込んで行ったほうがいいよとりあえず俺のやくそうも持っていけよっていうのがめんどくさいからサボってるだけじゃないのって話になってくるわけで。

もちろんこの手の話ってこういうぬるい考え方と厳しい考え方の両論を両輪にしてバランス見ながら真っ直ぐ進むように常に自分を疑いながら進めていくほかない話なのでこれが全てとは思ってもいないしそこまで人に構ってられねぇよ面倒みきれねぇよってケースも何ぼでもあるんでしょうけど、とにかく「持ち味を活かす」「長所を伸ばす」が使い勝手良過ぎるなぁと思ったので書きました。

そういえばこの話って下記の記事読んでてなーんか思いついたんですけど全然関係ない話なのになんでかなーって思ったら、「お前に適したやり方を探す」という名目でそいつの他の部分を「駄目だ」とひとつひとつ否定していって丸裸にしたところで最後に一箇所だけ「これがお前の持ち味だ」と褒めてやって自分のピースにハメこもうとするやり方って黒い人の常套手段だよねって流れが俺の中にあった気がしました。が、丸裸にすること自体は使いようの話で良く使うこともできれば悪く使うこともできるもんなので、一概にこの記事の内容を全否定したいとかそういう話ではありません。むしろ書いたり作ったりの領域においての話としてはとても同意できる。

チームワークで丸裸にされることの快感について | サイボウズ式

まぁ、ここらへんの話って結局「バランスだよね」っていう当たり前の話に戻って実践するほかなくて、話しても話してもそれ自体はキリがない話でもあって、なんか学生の頃やってたドレミファソラシドのメロディにあわせてゲロ吐くまで延々体育館を往復するやつ思い出してゲロ吐きそうになるんですけど。まぁ、バランスだよね。以上です。