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三輪山登拝してきました

そういえばゴールデンウィークにお伊勢さん参ろうかしらんとか嫁と話してたんだけど「伊勢神宮 ゴールデンウィーク」で検索したらこれ亀のコウラぶん投げたら何アップできんのみたいな人がごった返してる画像がhitしたのでやめとこうって話になって代わりに奈良は大神神社に出向いた。なんでも日本書紀古事記にもその名前が出てくる日本最古の神社らしくてそれゆえ日本有数のパワースポットでもあるらしい。我が家では嫁がスピリチュアル担当で僕はスピリチュアルじゃないもの担当みたいな区分がところどころあって、つまりはカップ麺にお湯を入れるのは嫁の担当で3分をちゃんと測るのは俺の役目だよね。儀式と観測はそれぞれ真逆の考え方に基づくものだけれども、その双方にそれなりの価値があり、どちらか一方を信用するだけじゃあ意外とうまくいかないものなので得意ジャンル苦手ジャンルを補い合う関係でいたいよね永遠っていう言葉なんて知らなかったよね。何が言いたいかというと僕はパワースポットってなんだよと思いつつ「そうなんだそれはパワーをもらいにいくしかないね」という調子で嫁のオススメスポットに出向くわけなんですけど、パワーってなんだよ。これがカロリースポットとかなら意味わかるけどね。カロリーがあるんでしょ? わかんないけどカロリースポットとして名高い霊験あらたかな山を登っていったら山頂付近でなんかゴウゴウと風がうずまいていてその風の流れには明らかに中心がある。その中心に立って目をつむってしばらくしているとなんか身体にホンノリ放っておくとワタアメになりそうな白い筋がまとわりついてきている。これは完全にカロリースポットですよ。その白い筋なんか触ったらベトベトするし嘗めたら完全に甘い。嘘偽りなく問答無用のカロリースポットです。意味がわかる。けど、パワーってなんだよ。パワーとか見えねぇし。何言ってんだよ、とか思いつつ出向くわけです。

 大阪から電車に揺られること一時間と少し、大神神社の最寄り駅についてとりあえず入り口のでかい鳥居に向かうと時間はまだ午前九時前くらいだったのに「満車」の看板が立っていて交通整理のおじさんが既に半ギレだった。あと8時間ずっと半ギレじゃんと思った。当時は気付かなくて今これ書いて気付いたんだけど、お仕事なんだから全ギレにはならないだろうというおじさんへの信頼が俺の中に知らず知らずのうちにあったんだな。年齢を重ねるにつけ、この面白くない割りに合わない世の中を俺より長く歯を食いしばりながらやってきてるんだからそれだけでおじさんは偉いんだと考えるようになった。ただし特定の世代のスポーツ選手を引退してからタレントに転向したおじさんは大体あいつら世の中舐めてやがると決め付けている。話は逸れたが、半ギレのおじさんを尻目に僕らは鳥居を潜り本殿へと赴いた。さすが日本最古! でかくて立派! って感じなんですけど、そうかぁ~?みたいなんが俺の中でちょっとあって、本当の日本最古だったら絶対もっとこじんまりしてるべきじゃねぇの? って思うじゃないですか。人間何事もステップバイステップじゃないですか。とりあえず最初に小さいの作って、それがうまくいったらじゃあもう一回りでかいやつ作っちゃおうか、みたいなそういうことじゃないの。ペヤングとかも、普通のやつと麺が二玉入ってるやつだったら絶対最初に作られたのは前者のはずじゃないですか。最初に発売したのが二玉入ってる大判の方だったらどう考えても創業者白目剥いてるでしょ。そういうわけで、まぁ立派でありがたみは全然感じないことはないんだけれども日本最古とでかくて立派の食い合わせが俺の中でなんかイマイチ合わなくて、いや日本最古が何を意味するとかこの規模で日本最古とか、現存する中で、とか色々総合したら別にある程度ツジツマ合うんだろうなとかは思うんですけど、なんかイマイチ合わなくてまぁこんなもんか~つってたんですけど、メインイベントはここじゃないところにありました。

その名も三輪山登拝。

ヤバいんですよこれが。俺の超好みで。なんでもこいつ、山全体が御神体らしいんですよ。神社の一角にその入山口があるんですけど、そこを勝手に通ってはいけなくて、神社に申請をしないと登れないんですよ。その申請を一通りこなすにおいてもその過程の端々から滲み出る「ナメんなよ遊びじゃないんだぞ」感がすごいんですよ。そもそも山だから、ただ山だけでキツいから遊びじゃねぇんだぞってノリがまず一つ、だって御神体だから木々に斧をサクッとかますのもアウトなんですよ。だから最低限の山道しかないんでまぁまぁキツいっすよっていう。それに加えて山を登って頂上でお参りして下山するまで全部ひっくるめてのご参拝ですから、ナメたことは一切禁止なんですね。火気厳禁、禁煙、ゴミのポイ捨てがあかんのはもちろんのこと草木や石コロや虫やら何やら山に宿る何もかもに手を触れるのも禁止、持ち帰るなんてもってのほか、最低限の水分補給を除く飲食も禁止、兎に角登って降りる以外は何もしてくれるな。いいですね、とても原始的で大変いいです。そのうえ本気っぽいなと思ったのは、地図くれるんですよね。登って降りてきた結論から言うと基本一本道でそう迷いそうもないルートではあったんですが1~9のチェックポイントみたいなのが地図に明記されているのですが、この地図はあくまで万が一の場合の所在確認のための地図になりますのでその他の用途での使用は絶対におやめくださいみたいな通達が神主さんのほうからありまして、たぶんそれはネットにアップとかすんじゃねぇぞみたいな意味合いも多分にあったと思うんですけど、そのうえで山に登るうえで必須となる鈴がついたタスキを受け取る必要があるんですけどそれと引き換えに渡す申込書には携帯電話の番号を記入する欄も当たり前のようにありまして、これは結構マジでナメてかかると神隠しに類似したエピソードが過去山のようにあるんだな感がハンパないわけですよ。登拝受付は14時までで16時までに下山しろ、っていうサリーちゃんの友達のヨシコちゃんじゃない方だってもうちょっと門限緩いだろみたいな時間設定もヤバさに拍車をかけてますよね。

まー、そうは言っても別にそんな肝試しにやってきたわけでもないので、それらのヤバさ設定にはしゃぐわけでもないんで粛々と登るわけなんですけど、これがまー良かった。僕は別に特定の宗教に強い信仰を持っているわけでもなく体系的な学もございませんので、あんま難しいことはよくわかんないですけど、宗教ってそれ自体がそもそもドMなところがありますよね。みんな好きにやっていいよと言われればみんな十人十色に好きなことをやるわけで、そこに共通の体験というのは発生しないわけです。それでは信仰としてのパワーを分かち合えませんので(パワーってなんだよ)、必要な手続きを細かく規定することで違う瞬間に様々な人々が、同じ場所で・同じ振る舞いをすることになり、その振る舞いを実践した人の間でのみ共有できる感覚というものが芽生え、それが信仰につながるのではないかみたいな、僕はそんな風に考えているんです。宗教ってあるある探検隊なんだなと思うわけです。西川くん!西川くん!横幅が3mも4mもある吊り橋を渡るなんてとてつもなく簡単なことで、ある者は端っこを渡りある者は真ん中を渡りある者はスキップで渡りある者は側転で渡り、みんな好きに渡ると思うんです。これでは信仰は生まれない。みんながそこでいつだって同じような所作でその橋を渡るから、その橋への敬意は時空を越えて受け継がれていくのです。じゃあどうすればいいか。横幅を30cmにすればいいんです。そうすれば恐らく大抵の人たちが同じようなポーズで渡るようになるでしょう。手をつくの禁止ね。はい!はい!はいはいはい!あるある探検隊あるある探検隊!みたいな、そういう圧とか負荷とか、大事なんだろうなと思うわけです。何せ山ですから、しんどいわけです。そのくせ険しい一本道なので、誰に強要されるでもなく、その道を行くしかないわけですよ。俺ならではのユニークな登り方とか皆無なんですよ。そして僕より以前にここを登った人とかもみんなそうするほかないからそうしたのだろう、っていうその感じね。この感じがいいんですね。一応石で組んだ階段とか丸太で組んだ階段とかあるわけですけど、これだって誰かがここまで石を担いで丸太を担いでここまで来て組んだんだなと思うじゃないですか。そういうのいいですね。そもそもその頂上のところに鳥居を組むこと自体ドM以外の何物でもないわけじゃないですか。苦しいと有り難味がある、と言ってしまうとやりがい搾取ブラック企業みたいな話になりますけど、やっぱそういうのって無くはない。確か標高は400mとかだったと思うんですけど、これまじでうろ覚えで全く自信ないですけど400mとかだったと思うんですけど、俺の身体をその高さまで引き上げるのに必要なエネルギーはざっくり言ってmgh、質量かける重力加速度かける高さなわけで、これは今も昔も変わらず平等なコストなわけで、時代を問わず誰もかれもがみんな僕と同じようにmghというエネルギーを消費して頂上を目指したのだな、みたいな。そういう感覚は大変良いなぁと思いました。あと、頂上で賽銭投げ込んでお参りしたけど、この賽銭を担いで持って帰る人もいるんだよなぁ、とも思いました。

そんなこんなでレポートとも言えないような感じでグダグダと喋りましたけど、僕は本当にこの三輪山登拝が面白かってですね、オススメです。みなさんも機会があれば是非。下山を終えて駅へ向かって歩く道すがら、これならまた是非今度も来たいもんだと思ってその旨を嫁にお伝えしたところ、「普通に頂上で気持ちよく弁当食べられるところがいいな」と言われたので僕はそこでハッとして、そういえば俺ドMなところあったんだったと確信し、その瞬間に噴き出た冷たい汗はやがて玉となり背中をゆっくりと伝い、俺の体に食い込む赤い荒縄にやがて染み込んでいった。なんでこんなオチになったのかはよくわからない。以上です。