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オシャレコンプレックスこじらせ野郎、散髪に行く!の巻

何の因果か何を殺しすぎるとこうなるのか、それはよくわからないんですが、前世で触覚をちぎり過ぎるとオシャレコンプレックスというカルマを背負ってこの世に産まれ落ちてしまいます(完全に昆虫やないか)。オシャレコンプレックスとはブサイクとかコミュ障とは明らかに一線を画すカルマでして(まぁ大体重複してるけど)、筆頭としてはズイショさんを見物してそこそこ長い人からすると何回言うんだって話だけど中学生の頃にヘアワックス万引きして捕まってた天パの川崎君だよね。まぁ一応念のため気を使って毎回苗字変えてるけど、川崎君別にヘアワックス買えないことはなかったはずなんですよ、あいつ親の財布から金抜いたりとかしてたし。それでもヘアワックス万引きしようとして捕まってたのはどう考えてもレジに持っていきたくなかったんだろうな。レジの人に「お前その頭でヘアワックス買うの?」って思われるのが嫌で彼は凶行に走ったのでしょう。オシャレコンプレックスは一事が万事でそんな感じで、俺みたいなもんが見てくれに気を遣おうとすること自体がおこがましいと思いながら生きています。初めてピアス穴を開ける時の緊張感がどう、とかその程度で「あ~その気持ち分かる」とか言うやつは今から俺が今から一発キリモミでぶん殴るんで俺の右手をドリルに改造する手術が終わるまでの間、正座で待機していてください。「見てくれを気にする時点で馬鹿にされるのではないか」という感覚の汎用性は凄まじく、裾上げをお願いするだけでも多大なストレスを伴い、誰に見られるでもないパジャマ等の部屋着を買うだけでも手汗出すぎて塩を舐めたくなり、そして過ごしやすい長さになると自動的に髪が伸びなくなるサイヤ人を羨みながら今日も散髪に向かうのです。

そういうわけで今回は別に書いてるこっちはそんな気ないのに不定期連載と言って差し支えない頻度で出てくるオシャレコンプレックスエントリです。

髪が長くなったら切るのは当たり前の話なので、何をそんなに身構える必要があるのだと言うのが一般的な見解なのは重々承知ですが俺には「そうか、お前は見てくれには興味がないんだな?じゃあ坊主でいいじゃん?シャンプーもいらないし、最高じゃん?そうしないっていうことは、お前は見てくれに興味があるってことだよね?お前みたいなもんが見てくれなんか意識しちゃってるんだよね?」という内なる声が主に左心房からエイトビートで聞こえてきます。いや、そりゃ別にそんな見てくれ気にしてるわけじゃないんだけどさ~あんまり思い切ると、それはそれでそういう坊主キャラみたいな豪快な人に思われちゃうかもしれないけど俺そんなんじゃないし、だからあくまで、あくまで無難に仕上げて欲しいわけだから俺はこうやって足を運んでるわけなんだけどもね~、と口角に泡を溜めながら独りブツブツと美容院に向かう俺こと僕なのです。ともすれば自分だけがこんなドツボにはまってるのはご免なので道を行き交う人に中指立てて「俺はまだ自覚があるからマシだけど、そんなブサイクな顔の癖に着飾って見てくれ数値を稼がんとするお前らはいったいどれだけ馬鹿なんだ?」と神輿なきねじり鉢巻を以ってべらんめぇ口調で断罪しし兼ね始めない俺をグッと堪えて足早に美容院に向かう貴方が見た彼こそが僕なのです。

大学通い始めて下宿を始めて一年くらいでその後結婚するまでの六年間くらいは行きつけの美容院があって、披露宴の前の日曜なんかにも「いや~いよいよだけど実感ないですわ~」とか言いながら髪切ってもらうくらい話せる行きつけがあったので何よりではあったのですが、下宿のあった土地を離れて新居に移って早一年半、それに相当するような行きつけが無いのがまずキツい。オシャレコンプレックスは髪を切るとかそういう自分の外見を意識するイベントではさながらヘッジホッグにコンマ3秒で仕上がりますので、「休みの日、何してるんですか?」と髪切ってくれてる兄ちゃんに聞かれて「それ髪切るのに関係ないですよね?」と返してその後無言とかザラなわけです。違うんだ!俺はそんなつもりじゃないんだ!俺とお前がボーリングの隣同士のレーンだったらもっと親しげな関係を作れるはずだったのに、髪を切る切られるの関係だったばっかりにこんなことになってしまって本当にすまねぇ、と思いながら無言で後ろに鏡当てられて襟足についてのエクスキューズを求められるわけなんですけれども。「あ、だいじょぶです」って言って金を払って帰るんですけど。

そんなんを毎度毎度繰り返しているわけなので今回も一度遅刻してしまった歯医者と同じテンションで違う美容院に髪を切りに行くわけなんですけれども、出てきたのが金髪の兄ちゃん。どんな感じに切って欲しいかとかのヒアリングを一通り終えて(ここが一番苦痛なんだけど苦痛すぎて詳細書かない)、いざ髪を切り始めると、これは全く以って俺の底意地が悪いだけなんですけどいつもの会話です。髪しっかりしてますね~みたいな。僕はすごく髪のボリュームが多い真っ黒髪の剛毛なので、そんなん言われ飽きてるわけです。意外性のあること言えよとかそんな明石家さんまみたいなこと言うつもりはないけれど、そんなこと言われるともう僕からすると逆ジンクスなわけです。これまでずっと同じこと言われてきて行きつけの美容院に巡り合えず流浪のザンギリ頭として娑婆を徘徊する俺からするとそんな毎度毎度「こういう髪質だとサイドが盛り上がっちゃってセット大変ですもんね~」とか言われると、端的にもうだめだ、俺はまた失敗するんだという気持ちが室内で雲になるわけじゃないですか。「ああ、ここもダメだった」と砂漠に忽然と佇む水が出ない穴を見る目つきで鏡に映る自分を見つめる僕じゃないですか。そんな僕に、美容師さんが言うよね。「あ、お客さん、頭皮の乾燥アレじゃないですか?」て。あーそうなんですよ、僕はなんか冬場乾燥がひどくて、フケが悩みなんですよ、とか言って。なんとか持ち直しました。理論を説明するのはめんどくさいんですけど、オシャレコンプレックスにとっては若干ネガティブな話題の方がむしろラクなのです。よくよく考えると切ってくれてるお兄さんも金髪でハイブリーチとかガンガンつけるタイプなのでもともとの頭皮の質もあって実はフケに悩んでるんですよみたいな話が始まって、こうすると予防になるらしいですよみたいな、あれは試したんですけどダメでしたね~みたいな話をしてる間にカットも終了。その日は年末も年末の真っ只中で担当してくれていた美容師さんもてんやわんやだったようで、その日に一見さんでぶらっと入った僕以外にも相手しなくちゃならん人がたくさんいた模様。ほかの店員さんに軽くシャンプー流してもらって席に戻ってみたら、俺のまさに横の席でさっきまでカットしてくれてたお兄さんが妙齢の女性にカラーの何とか液を塗りこんでいる真っ最中だった。まー年末で忙しいしね、そんなことで気を悪くする僕ではないです、キリが良いところまで待つわけですがもう鏡面台の前に置かれてる表紙に腕時計とかが載ってる雑誌を見るだけでオエッてなるオシャレコンプレックスの僕なのでただただポツネンと待つ僕なんですけれども、横でお兄さんがカラー入れながらお客さんと会話してるわけです。「あー今年も乾燥すごいですねー、僕も今朝から喉痛くなっちゃって」とかそんなんを横で見物しながらオシャレ雑誌とか読んだら「お前みたいなもんがオシャレ雑誌って?」って呻く右心房に殺されちゃうんでじっと待つんですけど、やっと一区切りついた兄ちゃん戻ってきたら兄ちゃん第一声に「すいませんお待たせしました~。しかしフケ大変ですよね~僕も」って言ってその瞬間に俺「うわ、俺図らずもフケの人じゃん、お前さっきフケ以外の話してたじゃん、つまりそれは俺はフケの人ってことじゃん」って思ってもう二度と来ないとその時決めたので僕の旅は続きます。以上です。