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お前が一番面白く喋れてたその瞬間はいつでしたか?

これと言ったアンサーが返って来ることがごくごく稀だから滅多に聞かないのだけれども、出来ることなら四方八方にひしめく生きとし生けるホモサピエンスに粗品のタオルを片手に聞いて回りたい僕のクエスチョンは「お前が一番面白く喋れてたその瞬間はいつでしたか?」というものだ。俺の持つタオルには「BESHARI」と大きくプリントされている。

「一番楽しかった」でもなく「一番ウケた」でもなく、「お前が一番面白く喋れてた」のはいつなんだ。

こんな問いを発するラッパ我リヤこと俺こと僕が、これに対するアンサーを持ち合わせているのは当たり前のことなんだけれども、それは当時の僕は18歳、浪人生の頃合であった。その瞬間、俺がウケたかった相手は同じく18歳の恐ろしく頭が悪い女性であった。いわゆる水商売に肩までつかって80億数えていてあと20億数えたら死のうかなみたいな女性であった。僕と彼女との関係は偶然によるもので、音で言うと「ひょん」から始まるもので、肉体関係もなければ恋愛感情もなく、というかさして交流もなく、サウナでトリケラトプスと一緒になった時にきっと貴方は身構えると思うのだけれども僕もそれと同じように彼女の向かいで身構えていたように記憶する。最初で最後の顔を合わせたその記憶は、僕という人生ゲームにとって「2マス戻る」程度の些細な経験だ。

その時の僕と言えば、とりあえず彼女に口を利かせたくなかった。彼女が口を開けばそれはもう身も蓋もなく陰惨で救いようがない話が吐しゃ吐しゃと繰り広げられることは目に見えていたので、いやむしろ本当の入りの部分はそんなすっぱいゲロがチェッカーフラッグにピトピトと付着していたので、兎に角僕はもうそれを見たくなくて、いっぱい喋ることにした。彼女に喋らせるわけにはいかなかった。かと言って僕が自分の話をするわけにもいかなかった。なぜならば、僕だって当時色々思うことはあっただろうけど彼女の口から発せられる吐しゃ吐しゃに比べれば、僕がどう卑屈に僕の話にしようとも、僕の口から発せられるのは彼女にとってはDAKARAだった。チャージの対象だった。たぶん違うけど、記憶のモヤがすごいので便宜上僕と彼女はスタバにいたとして、彼女の人生はあまりにトールで、僕の人生はあまりにスモールだったわけである。雑なボケをしたらガムシロを一杯飲む、っていうルールどうでしょうか全国の大学生どもよ。

そんな中で、僕は彼女に彼女の話をさせないべく、兎に角喋ることにした。幸いにも、僕と彼女には共通点があって、二人とも「伊集院光深夜の馬鹿力」の視聴者であった。この番組はパーソナリティである伊集院光が一人で喋り続けるラジオ番組であり、一人で喋るうえでタルくないようにするべしゃりの技術がギッシリと詰まっておる。正確には、パーソナリティである伊集院光の前には構成作家のなんとかという人がいつも前に座っていて、笑い声で合いの手を入れたりするのだけれど、彼女がそれで、パーソナリティが僕だった。

4,5時間ほど喋っていたような気がするのだけれども、その時何を喋っていたのかは何一つ覚えていない。恐らく恐ろしく無意味なことしか喋っていなかったのだろうと思う。恐ろしく強引に自分を世界に引き付け、恐ろしく世界に自分を放り投げるような、そんな何の他愛もない話を延々目の前の彼女がウケるようにウケるようにを模索しながら喋っていたのだろうと思われる。こんな流れなので信じてもらえなくても仕方ないのかもしれないけれども、現に超ウケてたと思われる。どうあれ「ウケたい」という僕の希望に彼女が応えてくれただけなのだと言われれば、「まぁそうですよね」の顔を寄り目でするほかないのだけれども、僕は喋り続けた。あの時ほど面白く喋った覚えは無い。「かなぐり捨てて」ということをあの時ほど実践したことはない。一秒先にバナナが見えた。バナナを踏めばウケる、そんな状況が一秒向こうに存在し続けた。僕が、僕の靴紐が、そのままで居続ける限りにアレはずっと続いていたんだろうってくらい面白く喋れていたんじゃないかと今でも思う。僕や、僕や彼女の靴紐や、門限や、出勤時間や、眠気か、諦めか、なんか色々あって、それはどうもいくら喋っても逃げ切れないものが、いっぱいあった。当たり前だったので、別れて帰った。

ここでテキトーに「それではあなたの面白く喋れた経験はどんな時でしたか?意外となんでもない時ですか?思い返せば的なやつもあるでしょう、そういうのもスピリチュアルの1カテゴリにしましょう」みたいなんをテキトーに挟みたいんですけど、眠いので端折ります。

なんか最近書くのがラクチンになってるなと思って最近のを読み返すと面白くなかったので、今日もジャンプの感想でもテキトーにおっちら書くかと思ってたところをちょっと考え直しておっちら書いてみたんですけど。10分で書いたら人の10分にしか響かないよ、みたいな。あの4,5時間は4,5時間だったよ、みたいな。以上です。